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【板谷由夏:インタビュー】ファミリーのような存在である自身の番組と、映画への愛を語ってもらった。

WOWOWオリジナルの映画情報番組「映画工房」。毎回、俳優の斎藤工と板谷由夏、そして映画解説者の中井圭が、WOWOWで放送される映画の見どころについて熱く語り合っている。斎藤工のインタビューに続き、いつも観客としての視点を忘れない率直なコメントが好評を得ている板谷由夏のスペシャル・インタビューをお届けする。
※本コラムは、WOWOWプログラムガイド1月号掲載のインタビュー「あなたにつなぐ、シネマ」の完全版となります。

取材・文=小田慶子

「もはや『映画工房』は私のライフワーク」

 放送開始から12年目に突入した「映画工房」。番組内では、斎藤工と板谷由夏という第一線で活躍する俳優2人と、映画解説者の中井圭が古今東西、ジャンルを問わず幅広い作品を取り上げて、愛する映画についてフランクに語り合っている。

板谷「12年も続けてきたなんてすごいことですよね。もはや私にとって『映画工房』はライフワークで、みんなファミリーのような存在。番組が存在する限りは出演していきたいし、毎回、この番組が続きますようにと願っています。工くん、中井さん、番組スタッフさんとも最初の頃からずっと良い関係のまま長く続けられていて、こんなに恵まれている番組はなかなかない。収録のときはそんなリラックスした雰囲気の中ということもあり、思ったことが顔にも言葉にも素直に出ちゃうんですが、嘘をつかないというか、ごまかしをしないようにしていますね。自分に響く作品でなければおすすめという表現はしませんし、逆に広く一般受けはしない作品かなと思っても、推すときはマジで推します。だからこそ、視聴者の皆さんとも信頼関係を築けている実感がありますね」

 2022年も連続ドラマに出演し、主演映画『夜明けまでバス停で』が公開されるなど、俳優として多忙な日々を送る板谷。そんな中で毎月、「映画工房」で紹介する映画だけでも8~10作品をチェックしている。

板谷「正直、他の仕事が忙しいときは『見なきゃいけない』という気持ちになっちゃうので、大変なときもあります。でも、映画って、自分の心に響くか響かないかは別として、身の周りの現実とは違う世界に連れていってくれるので、リフレッシュになりますね。それを12年続けてきたというのは、確実に自分の糧になっていると思います。さらに、劇場公開中の新作も見に行くので、年間150本くらいですかね。映画を見る目だけは肥えているかも(笑)」

 そんな板谷がWOWOWで1月に放送される作品の中で注目するのは、フランスのドキュメンタリー『音のない世界で』だという。1992年にフランスで制作された作品で、WOWOWでは第94回アカデミー賞作品賞を受賞した『コーダ あいのうた』(’21)の初放送に際し、その関連作として放送。ろう学校の生徒たちと手話教師、聴覚障がい者同士のカップルの日常が綴られる。

板谷「もともと監督のニコラ・フィリベールの作品が大好きで、『ぼくの好きな先生』(’02)を見たときに、ビビビっときたんです。監督の過去作品『かつて、ノルマンディーで』('07)ももちろん見ました。『音のない世界で』は未見なので、この機会にぜひ見たいです。子どもが登場するドキュメンタリーは難しいといわれるのに、寄り添い方や密着するのがとても上手。一回ハマった監督は追い掛けたいタイプなんです」

「世界が激動している今、社会的なメッセージのある映画がもっと見られるべき」

 豚の母子や鶏などが織り成す神秘の世界を鮮烈なモノクロの映像美で綴る『GUNDA/グンダ』('20)など、ジャンルとしてドキュメンタリー映画が近年好きになっているという。だが、優れた作品を見るたびに思うことがあるとか。

板谷「例えば私が出演した『夜明けまでバス停で』は、実際の出来事にヒントを得ていますが、あくまでフィクションですし、私はホームレスの女性を“演じた”わけです。それに対して、ドキュメンタリーに脚本はないし、登場する人たちはもちろんお芝居しているわけでもなく、そこにあるのは真実。人々が抱えるノンフィクションのリアリティーというのは本当にすごい。役者にとっては、バス停になんとなく立っている人や街をただ歩く人を演じるのが一番難しいんです。素晴らしいドキュメンタリーはそういう普通の人たちを映し出しているので、俳優として『かなわないなぁ』と思っちゃうんです」

 1月には『音のない世界で』を含めドキュメンタリーの秀作がいくつか放送される。映画館での鑑賞だけでなく、放送・配信でじっくりと見ることにメリットを感じることもあるという。

板谷「映画館に行くって、やっぱりパワーがいるじゃないですか。それに、誰かと一緒に楽しめるものなどを優先したときに、どうしても社会的なテーマの作品は二番手以降になりがちだったりするんですよね。その点、WOWOWに入っていると、移動の手間とかチケット代を気にせず、たくさん見られるところがいいですよね。
 これはフィクションですが、『アイダよ、何処へ?』('20/WOWOWオンデマンドで配信中)もすごい作品です。1995年のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争で虐殺事件が起こったことを国連保護軍の通訳の女性の視点から描いていて、遠くない過去にヨーロッパでこんな悲劇が起きたことを知りました。ロシアによるウクライナ侵攻が続く今、考えさせられる作品です。そしてこの作品の女性監督ヤスミラ・ジュバニッチのように、映画製作を通してき然と闘っている人がいるという事実が救いになります。世界が激動している今、社会的なメッセージのある映画がもっと見られるべきだと思っています」

 いつか自分でもドキュメンタリー映画を撮ってみたいという願望もあるという。番組のパートナー、斎藤工にも「監督をやってみたら」と激励されたとか。

板谷「工くんは自分の監督作をどんどん撮っているので、すごいですよね。私もいつかは…という思いはあります。番組の収録でなくても、お互いの出演作を見たときは、連絡し合うことも。工くんは『夜明けまでバス停で』を見たと教えてくれましたし、私も工くんの主演作『シン・ウルトラマン』('22)を家族全員で見に行って、『もう最高!』って速攻、伝えました(笑)」

 今回のインタビューからも終始、素敵な関係性・チームワークが窺えた「映画工房」。2023年、新しい年を迎えるに当たって「映画工房」の抱負とは?

板谷「まだ実際には何も決まっていないのですが、個人的には、若い世代の人たちと何か一緒にできたらいいなと思っています。大学生ぐらいの年代のイメージですね。新しい企画も含め、いろんな人と交流するのはとても大事なこと。番組の歴史も長くなりましたが、常にフレッシュな番組であり続けたいなと思っています」

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