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生きる上でのヒントがたくさんちりばめられている―。「Bling-Bang-Bang-Born」に合わせて踊る奇妙なダンスが気になるアニメ【#エンタメ視聴体験記/ぼる塾・酒寄希望】

 お笑い芸人・ぼる塾の酒寄希望さんが、WOWOWの多岐にわたるジャンルの中から、今見たい作品を見て“視聴体験”を綴る、読んで楽しい新感覚のコラム連載企画「#エンタメ視聴体験記 ~酒寄希望 meets WOWOW~」。 
 今回は、『マッシュル-MASHLE-』(※配信は終了しました)を見た体験を酒寄さんならではの視点で綴ります。

 文=酒寄希望

 私には気になるあの子がいます。初めてあの子を見た時、Creepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」に合わせて奇妙なダンスを踊っていました。ユニークなダンスの振り付けとは裏腹にあの子はとても無表情で、

 私「君は一体どういう感情?」

 私は目が離せなくなりました。それはアニメのOPムービーであの子が恐らく主人公でした。一緒に見ていた 私の息子はあの子のダンスに大ハマりし、

 息子「あれ見たい」

 と言い、親子で1日に何度も見るようになりました。しかも何日も連続で。そんな生活を続けていると、見過ぎたのか、見ていないときでも私の頭の中で常にあの子が踊っている状態に陥りました。

 私「あの子は一体何者?」

 私はあの子の踊る姿以外、あの子の名前すら知りませんでした。なぜなら私はアニメは見ずにCreepy Nutsの公式チャンネルでOPムービーだけを永遠と見ていたのです。私の中でのあの子はダンサーでした。

 息子「あれ見たい」

 私はその日も息子と一緒に踊るあの子を見ていました。そこに夫が通りかかりました。

 夫「またOP見ている。これアニメ本編も面白いよね」

 私「え! 視聴済みなんですか!?」
 
 夫「うん」
 
 私「それならもっと早く言ってくださいよ!」
 
 夫「なんで!?」

 このときの私の気持ちは、通勤電車で毎日見かける気になっていた人と自分の親友が実は幼なじみだったのを知った感情に近いかもしれません。

 夫「このアニメすごく話題になってたじゃん」
 
 私「私はなんでもいつも周りより遅いのです!」
 
 夫「見なよ。きっと好きだよ」

 私「見ます。実はちょっともう、好きなんです!」

 私はあの子が知りたい。それってもう、ちょっと好きってことでした。

 「マッシュル-MASHLE-」は週刊少年ジャンプで甲本一先生が連載し、2023年7月に完結した漫画のアニメ化作品です。

 私「あの子の名前をやっと知れた! マッシュ・バーンデッド! 良い名前だ!」

 魔法界が舞台の「マッシュル-MASHLE-」は、誰もが魔法を使えることが当たり前の世界です。すべてが魔法で決まり、魔法の能力が高ければ身分も高く、低ければ落ちこぼれ扱いを受けます。魔法が使えない者は殺処分されてしまうという、魔法至上主義のかなり厳しい世界です。

 主人公のマッシュ・バーンデッドは、そんな世界の中で一切魔法が使えない少年です。マッシュは生まれつき魔法が使えないのです。

 私「マッシュの人生ってすごいハードモードなのでは…」

 しかし、育ての親であるおじいさんが、「魔法が使えないならせめて自衛のために」と始めさせた筋トレのおかげでマッシュは常人離れした筋肉を所有するムキムキ少年に成長し、またおじいさんの深い愛情のおかげでまったく劣等感を持たない素直な少年に育っています。マッシュは常に無表情ですが、それが彼の通常運転です。マッシュは素直で良い子で無表情なのです。

Ⓒ甲本 一/集英社・マッシュル製作委員会

 おじいさんは魔法が使えないマッシュの存在がバレぬように、森の奥の家で2人でひっそりと暮らし、「決して町に出てはいけない」と教えていました。

 しかし、マッシュは町にひとりで出かけてしまい存在が魔法警察にバレてしまいます。そして彼は追いかけてきた魔法警察の魔法を筋肉の力で倒します。

 私「え? 魔法を素手でたたき落とした?」

 なんやかんやあって、マッシュはおじいさんと平和に暮らすために魔法が使えないことを隠して魔法学校へ行くことが決まります。

 私「素手で魔法を破壊したこととかまだのみ込めてないんだけど、このまま先に進むなら、こっちも魔法が一切使えないのに魔法学校行って大丈夫なのかってことを心配するよ」

 「マッシュル-MASHLE-」は物語がとても重めの設定になっていますが、ファンタジーギャグアニメです。ここまでの話もほとんどがギャグで展開されています。

 私「こんなギャグアニメだって知らなかった! マッシュがおじいさんの言い付けを破って町に行った理由も限定シュークリームを買いに行くためだし。ぼる塾の田辺さんかよ!」

Ⓒ甲本 一/集英社・マッシュル製作委員会

 しかし、「マッシュル-MASHLE-」は決してすべてを茶化しているわけではありません。とても大切なシーンは真剣に丁寧に描かれています。

 マッシュは一切魔法が使えないというハンディを背負いながら、筋肉という別の能力を最大限に強化してあらゆることを突破していきます。みんなが当たり前にできることが自分だけできないという恐怖は私も何度も味わったことがあります。幼い頃は、逆上がりができなかった。リコーダーのタンギングができなかった。算数の速さの問題がまったく理解できなかった。大人になった現在もそうです。私だけができないことがいろいろあります。

 マッシュの置かれた状況に比べたらどれもこれもでもないことばかりですが、きっとマッシュなら、

 マッシュ「あんたがつらいと思ったんならつらいでいいんじゃないの」

 そう言ってくれると思います。

 マッシュは、【魔法が使えないなら筋肉でなんとかする】という発想で立ち向かい、魔法が使える側を圧倒します。魔法のほうきで空を飛んで戦うドゥエロというスポーツでは、魔法が使えないならと、ものすごい勢いで両足をバタバタすることでマッシュは空を飛ぶのです。

Ⓒ甲本 一/集英社・マッシュル製作委員会

 さすがにこんなことはできないけれど、マッシュが実践している、「どう頑張ってもできないならば自分のできることを最強レベルに持っていき、それを武器にして戦う」ことや「決して諦めない気持ち」は私にだってできるのです。

 マッシュは魔法が使えない自分が魔法を使える魔法使いに負けるとはまったく思っていません。マッシュは、「自分は最強で、自分は恵まれている」と、確固たる意志を持っています。

 私「マッシュ本人の並々ならぬ努力とおじいさんの深い愛情が合わさってできた最強…。努力って本人だけで完成させてはいけないものなのかもしれないとこの作品を見ていると強く思う…。頑張ったら、『頑張ったね』って近くで何度も言ってくれる人がいるって大事…」

 マッシュは自分の力を人を守るために使います。そんなマッシュと関わった人は変わります。敵も味方も関係なく、自分の中にある本当の勇気を見つけ出します。

 私「『マッシュル-MASHLE-』はギャグアニメだけど生きる上でのヒントがたくさんちりばめられている。諦めない気持ち、人との接し方、さらに子育てまでカバーしている。とりあえず今から筋トレ始めよう!」

 なぜこの設定をギャグでやっているのだろうと最初は思いましたが、それこそがこの作品の最高なところなのだと思います。真剣だからこそ、その分笑いが必要なのです。

 私「ずいぶん周りから遅れちゃったけどここから追いかけるよ! アニメ第2期も見るよ! マッシュ!」

 私が知っているのはまだ「マッシュル-MASHLE-」の入り口に過ぎず、気になるあの子はもっと気になるあの子になりました。


おわりに・・・

 今回取り上げることはありませんでしたが、酒寄さんが気になった作品を酒寄さんならではの視点でご紹介します。

「マッシュル-MASHLE-神覚者候補選抜試験編」
 
今回取り上げたマッシュルの第2期です! 私が興味を持つきっかけになったのはこの第2期のOPです。マッシュルの本編を見た後だとこのOPがどれだけこの作品にぴったりなものであるのかが分かりました。マッシュルは、本編はもちろん、音楽がどれもかっこいいです! こちらも見てマッシュを追いかけたいと思います!

▼「マッシュル-MASHLE-神覚者候補選抜試験編」を今すぐ視聴するならコチラ!

「Railway Story 美しき、地球の箱庭 ニュージーランド大走破」
 私はずっと昔からニュージーランドに行きたいと思っています。ですが、なかなか気軽に行けるものではありません。ですから、私はこの番組でニュージーランドに旅行した気分を味わっています。しかし、見ているとますます行きたくなります。いつかこの番組で見た手長エビのクラムチャウダーを実際に食べたいです。

「Railway Story 美しき、地球の箱庭 ニュージーランド大走破」を今すぐ視聴するならコチラ!

『アガサ・クリスティー ねじれた家』
 
私が初めて読んだアガサ・クリスティーの作品が「ねじれた家」でした。この作品からドハマりして、彼女の小説を大学時代は読みあさりました。今でも初めて読んだ時の衝撃と恐怖を忘れることができません。アガサ・クリスティー自身もこの作品を【最高傑作】だとしているそうです。その作品の映画化と知り、ぜひ見てみたいです!

『アガサ・クリスティー ねじれた家』を今すぐ視聴するならコチラ!

合わせて読みたい! お笑い芸人の中山功太さんによる「#エンタメ視聴体験記 ~中山功太 meets WOWOW~」のコラムはこちら

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トップ画像(クレジット)/「マッシュル-MASHLE-」:Ⓒ甲本 一/集英社・マッシュル製作委員会