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安田菜津紀「観て、学ぶ。映画の中にあるSDGs」

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SDGs(Sustainable Development Goals)とは、2015年9月の国連サミットにて全会一致で採択された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す1… もっと読む
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#アカデミー賞

圧倒的に低い日本の難民認定率――アカデミー賞候補となったドキュメンタリー・アニメから考える

文=安田菜津紀 @NatsukiYasuda  今回取り上げるのは、第94回アカデミー賞で3部門にノミネートされるなど高い評価を受けたヨナス・ポヘール・ラスムセン監督作『FLEE フリー』('21)。 (※4/9(日)後10:45、ほかリピート放送あり)  アフガニスタンから脱出した青年アミン(声:アミン・ナワビ)が自らの経験を語るドキュメンタリーだ。主人公や周囲の人々の安全を守るため、実写ではなくアニメーションを用いて制作された。この映画と今の日本社会を重ね、SDGsの

暴力には毅然と「NO」と言える輪を――映画から考えるロシアによるウクライナへの軍事侵攻

文=安田菜津紀 @NatsukiYasuda  今回取り上げるのは、第79回アカデミー賞で国際長編映画賞の前身となる外国語映画賞を受賞したドイツ映画『善き人のためのソナタ』('06)。  東西冷戦末期の東ドイツを生きる表現者たちには、常に権力者たちの監視の目がつきまとう。言論の自由が奪われる危機感は、現在のウクライナとロシアを巡る動きにも重なるものがある。SDGsの「目標16:平和と公正をすべての人に」「目標5:ジェンダー平等を実現しよう」を切り口に、この映画から今、世界

経済成長だけが進むべき道なのか――「現代のノマド」から考える

文=安田菜津紀 @NatsukiYasuda  今回取り上げるのは、2017年にジェシカ・ブルーダーが発表したノンフィクション『ノマド ――漂流する高齢労働者たち』が原作となった『ノマドランド』('20)。  第93回アカデミー賞で作品賞、監督賞(クロエ・ジャオ)、主演女優賞(フランシス・マクドーマンド)の最多3部門を受賞。第77回ヴェネチア国際映画祭でも金獅子賞を受賞した。人々が「現代のノマド=遊牧民」になるまでの背景から、SDGsの「目標10:人や国の不平等をなくそう

米国内の差別の構造――そして日本国内の人権問題について約20分の短編から考える

文=安田菜津紀 @NatsukiYasuda  今回取り上げるのは、レイシズムの問題を子どもたちの視点を軸に描いた、ガイ・ナティーヴ監督による第91回アカデミー賞短編実写映画賞受賞作『SKIN 短編』(’18)です。  白人至上主義、黒人差別を構造的な問題として捉えながら、不平等の是正を掲げるSDGsの「目標10:人や国の不平等をなくそう」について考えます。 (SDGsが掲げる17の目標の中からピックアップ) 衝撃のラストシーンが突き付ける米国の根深い人種差別の問題

この映画の大切な問いは、「あなたは何をしてきたのか」――『スポットライト 世紀のスクープ』から考える

文=安田菜津紀 @NatsukiYasuda 今回取り上げるのは、第88回アカデミー賞で作品賞と脚本賞を受賞した『スポットライト 世紀のスクープ』(’15)。  実際に起きた神父たちによる性虐待と、長年それを組織的に隠蔽(いんぺい)してきたカトリック教会の問題を報じ、世に知らしめたボストン・グローブ紙の調査報道チーム「スポットライト」を描いた作品を、SDGsの「目標16:平和と公正をすべての人に」の観点から紐解いていきたい。 (SDGsが掲げる17の目標の中からピックア