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海外ドラマがスキ。今月の1本!

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WOWOWで放送・配信する多彩な海外ドラマの中から必見の1本をご紹介。さまざまな視点から作品を深掘りするコラム。これを読めば海外ドラマがもっとスキになる!
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スウェーデンの美しい植物に注目。北欧ドラマ『ビーチホテル』を別の視点から見ると、風土が見えてくる

テキスト:飯嶋藍子(sou) 編集:川浦慧  スウェーデンの田舎町を舞台にしたソープオペラ風サスペンスドラマ『ビーチホテル』。海岸に面した「サルトシューヴィク・ビーチホテル」で開かれた経営者の誕生日パーティーで、ライバルのホテル「ミストラル」の経営者が急に倒れ、搬送先の病院で亡くなるところから物語が始まる。  異なるホテルをそれぞれ経営するふたつの家族の複雑な人間模様とともに、隠された謎が明かされていくこのドラマ、海沿いの田舎町ならではの四季折々の美しいフラワーデザインや

主人公はヒーローか、それとも異常な殺人鬼なのか?英国サスペンス『容疑者~ねじれた犯罪心理~』

テキスト:ISO 編集:川浦慧  原作は2004年に発表されたマイケル・ロボサムの推理小説『容疑者』(集英社文庫)。のちに10数か国語に翻訳、30か国以上で刊行され100万部以上売り上げた国際的ベストセラーである。  著者であるロボサムはオーストラリア出身の推理小説作家だが、その経歴がまた独特だ。彼はシドニーでジャーナリストや法廷・警察関連の記者を経た後に渡英。新聞記者の後にゴーストライターとして著名人(スパイス・ガールズのジェリ・ハリウェルなど)の自叙伝を15冊執筆し、

【早川書房×WOWOW note特別コラボ企画】世界的ベストセラーSF小説「三体」のドラマ版をWOWOWで日本初放送! 原作翻訳者・大森望がその魅力を語る

「SF界のノーベル文学賞」といわれるヒューゴー賞の長編部門をアジア圏作品として初受賞。世界累計発行部数2,900万部超え、20カ国以上の言語で翻訳された世界的大ベストセラーである「三体」(早川書房刊)。そのドラマ化作品(テンセント版)が10月7日(土)より、WOWOWで日本初放送される。その放送に先駆け、今回【早川書房×WOWOW note特別コラボ企画】として原作の翻訳者である大森望さんにインタビューを実施!  コラボ第一弾として、大森さんに原作の翻訳者という視点からドラマ

【早川書房×WOWOW note特別コラボ企画】早川書房の担当編集者が選ぶ!「三体」の沼に入るつもりなら必読のnote記事4本!

 早川書房×WOWOW!noteコラボ企画も第三弾に突入!  今回はいよいよ原作本の「三体」(早川書房刊)について知りたくなったアナタのためのnoteです。 ▼翻訳者の大森望さんが熱く語るnoteコラボ企画第一弾、第二弾はこちら! 早川書房note×WOWOWnoteコラボ企画第一弾 はこちら 早川書房note×WOWOWnoteコラボ企画第二弾 はこちら  原作小説「三体」を出版した早川書房さんのnote「Hayakawa Books & Magazines(β)」では

【早川書房×WOWOW note特別コラボ企画】WOWOWにて日本初放送! 中国SFドラマ「三体」原作翻訳者・大森望さんに聞く

「SF界のノーベル文学賞」といわれるヒューゴー賞の長編部門をアジア圏作品として初受賞。世界累計発行部数2,900万部超え、20カ国以上の言語で翻訳された世界的大ベストセラーである「三体」(早川書房刊)。そのドラマ化作品の日本初放送に先駆け、【早川書房×WOWOW note特別コラボ企画】として原作の翻訳者である大森望さんにインタビューを実施!  今回はコラボ第二弾として、大森さんに小説「三体」との出合いや、SF小説としての魅力を聞いた。 大森望(おおもり のぞみ) 翻訳家

英国推理ドラマ『刑事モース』がついに最終章へ。ミステリー作家・阿津川辰海が見どころを総ざらい

テキスト:阿津川辰海 編集:川浦慧 コリン・デクスター原作の3つのドラマシリーズ。『主任警部モース』『ルイス警部』『刑事モース』 モース。この世でもっとも名探偵に近い警察官。閃きと論理の力を武器に、悪と戦う。女性を愛し、また愛されるが、独身を貫く。オックスフォード大学を中退し、警察官になった異色の経歴を持ち、クロスワードパズルとクラシック音楽を愛する。車もレトロなものを好み、赤のジャガーがトレードマーク。  彼が私たちの前に最初に姿を見せたのは、1975年のことだった。イ

英国史上最悪のスパイ事件に関わった実在の男を描く。『亡国のスパイ~かくも親密な裏切り~』

 テキスト:牛津厚信 編集:川浦慧 第二次世界大戦から冷戦期にかけて、英国史上最悪のスパイ事件に関わった男たち あなたがもし、キム・フィルビー、ガイ・バージェス、アントニー・ブラント、ドナルド・マクレイン、ジョン・ケアンクロスといった人名に聞き覚えがあるとしたら、かなりの「リアル・スパイ通」と言えるだろう。  この5人は、第二次世界大戦から冷戦期にかけて英国史上最悪のスパイ事件に関わった男たちである。「ケンブリッジ・ファイブ」とも呼ばれる彼らは、1930年代、英国の名門ケ

それぞれの正義を貫き、善悪のあいだを揺れ動く。生身の人間のリアルを描く北欧サスペンス『ザ・ハンター』

テキスト:麦倉正樹 編集:川浦慧 絵画のような湾口、孤高の中年男性、不穏な気配、殺人事件――「北欧サスペンス」の滋味を凝縮した一作 2023年の春に日本公開されたトム・ハンクス主演の映画『オットーという男』(2022年)をご存知だろうか? ではそれが、2016年に日本公開されたスウェーデン映画『幸せなひとりぼっち』(2015年)のハリウッドリメイク版だったことはご存知だろうか?  近所で疎んじられている口うるさい偏屈な男性が、向かいに引っ越してきた移民家族との交流を通じて

等身大の「おばさん」の物語。日本にない寛容さで日常や恋愛を描く北欧ドラマ『私はペルニ』

テキスト:西森路代 編集:川浦慧 阿佐ヶ谷姉妹の作品など、日本でも増えてきた「おばさん」世代を描くドラマ ドラマについて、同業のライターをはじめ、脚本家やプロデューサーなどと話すときにかなりの確率で出てくるのが、「人間の理想や輝かしい一面を描いたドラマもいいけれど、もっと生活に根ざした、リアルに生きているおばさんの物語が見たい」という話題である。  最近の日本のドラマにもそんな作品はいくつかある。『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』(NHK)は阿佐ヶ谷姉妹のエッセイをド

詐欺師たちの物語でもあり、庶民派ファミリードラマでもある。北欧ドラマ『ヨーアンスン一家~彼らの正体~』

テキスト:辰巳JUNK 編集:川浦慧 闇の大企業を相手どる詐欺師たちの物語。笑いながら共感できる「庶民派」ファミリードラマでもある 「北欧ドラマ」のイメージで『ヨーアンスン一家~彼らの正体~』を見ると、すこし驚くかもしれない。このデンマークの人気ドラマは、闇の大企業を相手どる詐欺師たちの物語だ。手に汗にぎるクライムドラマなわけだが、一般的に「北欧ドラマ」と言われて想起される、凍てつくようなダークさ、重厚さとはかけ離れている。じつはこの作品、笑いながら共感できる「庶民派」ファ

ノルウェーに蔓延る、オオカミへの偏見と恐怖。神話から着想を得た北欧サスペンス『オオカミの棲む森』

テキスト:常川拓也 編集:川浦慧 オオカミの仕業なのか? オオカミの聖域とされるノルウェーの町で起こった、謎めいた殺人事件  凍てつくような気温、長く暗い日、そして一見穏やかで巨大な自然のなかで、派手なアクションを排して、政治的腐敗や陰謀が絡んだ謎の殺人事件がゆっくりと展開されるノルディック・ノワール。北欧の配信サービス「Viaplay」が提供する6話完結のノルウェー産ドラマ『オオカミの棲む森』もこのジャンルに当てはまる。荒涼とした辺鄙な森を舞台に映し出しながら、かげりを

スウェーデン警官のリアルを、複雑な「社会/人間」情況のもとに描き出す『捜査官カタリーナ・フス』

テキスト:麦倉正樹 編集:川浦慧 連帯や団結は、つねに「善きもの」であると言えるのか?  「いちばん大事なのは、お互いに助け合うことさ」――これほど、文脈や状況によって、ニュアンスが変わる言葉はないだろう。もちろん、それを発する人間が、どんな立場で、誰に向かって言っているのかも重要だ。それは、言われた者の耳に「甘美」に響くときもあれば、ときに「共犯」への誘いを意味することもある。  2023年の1月1日(日)午後1:00よりWOWOWで一挙放送・配信する北欧サスペンス『

本格ミステリー『8人の容疑者~誰がオット・ミュラーを撃ったのか~』が映す、エストニアの社会像

テキスト:村尾泰郎 編集:川浦慧 舞台となるのはエストニア。歴史的な街並みとIT先進国、対照的な2つの顔を持つ国  濃密な人間ドラマとダークな雰囲気で注目を集める北欧のミステリードラマ。そんななかで、北欧作品を配信・放送するViaplayが贈る新作『8人の容疑者~誰がオット・ミュラーを撃ったのか~』(以下、『8人の容疑者』)は一味違う。このドラマの面白さは、本格派ミステリーのエッセンスが取り入れられていることだ。  本格派ミステリーとは謎解きや犯人探しを楽しむもので、典

捕鯨を行なう町と反捕鯨を訴える活動家、それぞれの大義。『トロム~フェロー諸島殺人事件~』

テキスト:麦倉正樹 編集:川浦慧 デンマーク王国の一部でありながら、固有の文化と歴史を持つフェロー諸島  ノルウェーとアイスランドの中間に位置する、隣接した18の群島からなるフェロー諸島。2022年の『モンテカルロ・テレビ祭』で、その最高賞にあたる「ゴールデンニンフ賞」を最優秀俳優賞、審査員特別賞の2部門で受賞したデンマークのドラマ『トロム~フェロー諸島殺人事件~』は、この地で撮影された初めてのオリジナルドラマシリーズであるという。デンマーク王国の一部であるけれど、あくま