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映画のはなし シネピック

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新しい映画と出会える。映画をより深く楽しめる。そんなコンテンツをお届けしていきます。担い手は、映画ライターSYOさんなど個性豊かな面々。それぞれの感性が作り出す映画愛は必見です!… もっと読む
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2020年11月の記事一覧

間違ってばかりの人間をいとおしく演じる、蒼井優が見せる深み #シネピック映画コラム

文=SYO @SyoCinema  日本映画界に欠かせない俳優・蒼井優。現在35歳の彼女、その芸歴は20年を超える。蒼井について考えるとき、「軽やか」という言葉が脳内に去来する。同世代で彼女ほど、自由に幅広く、役者業を楽しんでいる人は珍しいのではないか。インディペンデント系からメジャー大作まで出演し、気鋭の新人から大御所までキャリアを問わずにコラボレーション。コメディにサスペンス……なんでもござれで、声優も務めれば、役のためならヌードも辞さない。演技の安定感は言わずもがな。

スピードワゴン・小沢さんが「永遠の憧れ」と語る名優の最後の主演映画。心を撃ち抜かれたセリフとは?

取材・文=八木賢太郎 @yagi_ken ──今回は、小沢さんが大好きなロバート・レッドフォードの主演作です。 小沢一敬(以下、小沢)「俺は10代のときに映画を好きになって、その頃は時間があるからたくさんの映画を観たんだけど、そのきっかけの一つになったのが、ロバート・レッドフォードとポール・ニューマンの『明日に向って撃て! 』(’69)とか『スティング』(’73)だったんだよね。もちろん、リアルタイムではないんだけどさ。俺の中でレッドフォードは常に“かっこいい人”で、かっ

一つのルールに抵触した人間に対しては、何をしても許されるのだろうか――1本の映画が突きつけるもの

文=安田菜津紀 @NatsukiYasuda  今回取り上げるのは、アジアの無国籍都市「円都(イェン・タウン)」を舞台にした群像劇『スワロウテイル』('96)。  国から守られることのない人々の姿は、これまで取材で向き合ってきた、難民となった人々、在留資格を失い虐げられてきた人々の姿にも重なりました。その実感も踏まえ、「目標10:人や国の不平等をなくそう」を軸に、改めてこの作品と向き合いたいと思います。 (SDGsが掲げる17の目標の中からピックアップ) 公開から約2

不器用だからいとおしい 今泉力哉監督が描く恋愛映画の主人公たち

文=峯丸ともか  「恋愛映画って苦手だったんです。でも、今泉力哉監督作にはハマってしまいました」  そういう意見はSNS上にも多い。なぜなのだろう?  今泉力哉監督の映画では、運命の恋人なのに事故に遭い引き裂かれる、奇跡的にタイム・スリップして結ばれる……といったようなドラマティック過ぎる展開はない。描かれる主人公は、たいてい私たちの隣にいるような普通の人々だ。そして、みんなそろって不器用なのだ。  もしかしたら観客は、自分の物語をスクリーン上に探しているのかもしれな