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映画のはなし シネピック

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新しい映画と出会える。映画をより深く楽しめる。そんなコンテンツをお届けしていきます。担い手は、映画ライターSYOさんなど個性豊かな面々。それぞれの感性が作り出す映画愛は必見です!… もっと読む
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綾瀬はるかに宿る、観る者を惹き付ける“エンタメ性”を1本のアクション作品から紐解く

 国民的女優、綾瀬はるか。  彼女には、どの作品で出会うかで、こちらのイメージが変わるところがある。映画『ハッピーフライト』(’08)、『おっぱいバレー』(’09)、ドラマ「ホタルノヒカリ」(’07)、「義母と娘のブルース」(’18)などだったらコメディエンヌだろうし、「八重の桜」(’13)、「JIN-仁-」(’09)、『レジェンド&バタフライ』(’23)ほか時代劇でのイメージもあるだろう。また、「世界の中心で、愛をさけぶ」(’04)、「白夜行」(’06)、「わたしを離さない

【3月の激レア映画!】廃盤・未ソフト化・4K修復版…なかなか出会えない貴重な映画を“レア度”とともにご紹介!

文=飯塚克味 【3月の激レア映画10作品】 まずは惜しくも[廃盤]となっている作品からいきましょう。 ①『アポカリプト』 レア度…★★★☆☆  まずは現在、ソフトが廃盤になっている『アポカリプト』からご紹介します。「マッドマックス」や「リーサル・ウェポン」シリーズで有名なメル・ギブソンが監督した第4作です。第3作の『パッション』(’04)はイエス・キリストが磔にされる様子をリアルに描き、全米で空前の大ヒットを記録。興行収入は世界中で6億1200万ドル以上を売り上げまし

俳優・長澤まさみの、理想と現実のギャップに苦悩する“淀み”を抱える役を引き寄せる特質を紐解く

文=SYO @SyoCinema  2024年も坂口健太郎、横浜流星らと共演した『パレード』(2月29日(月)Netflix配信)、佐藤健、森七菜と共演した『四月になれば彼女は』(3月22日(金)公開)、三谷幸喜監督作『スオミの話をしよう』(9月13日(月)公開)と、ビッグな出演作が控えている俳優・長澤まさみ。彼女が松山ケンイチとW主演を務めた社会派サスペンス『ロストケア』が、3月2日(日)にWOWOW初放送を迎える。  第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した葉真

【2月の激レア映画!】廃盤・未ソフト化・4K修復版…なかなか出会えない貴重な映画を“レア度”とともにご紹介!

 文=飯塚克味 【2月の激レア映画10作品】①『四月怪談』 レア度…★★★★☆  最初は大島弓子原作の『四月怪談』。  本作を監督した小中和哉監督は、新作『Single8』(’23)に描かれるような自主映画で脚光を浴びた監督です。ですが、何をおいても本作の魅力は主演の中嶋朋子に尽きるでしょう。ドラマ「北の国から」の螢役で有名な彼女ですが、思いがけず死んでしまい幽霊になった女子高生をキュートに演じています。ちょうどこの頃、子役から脱皮を図っていた時期で、『あさってDANC

鈴木亮平と宮沢氷魚の疑いようのない“運命”を『エゴイスト』の中に見る

文=SYO @SyoCinema  「ニコイチ」という言葉がある。  二つで一つ、ワンセットという意味だが、心に残る映画には多くの場合「この2人しか考えられなかった」というキャスティングと芝居の妙が掛け合わさった「ニコイチ」が存在する。  それがラブストーリーならなおさらだろう。クサい言葉を使ってしまい少々恥ずかしいが……恋愛ごとには少なからず“運命”というものが作用していて、運命の意味は「目に見えない力で決定づけられている」であり、そう信じる自己暗示も相まって心酔・夢見

【1月の激レア映画!】廃盤・未ソフト化・4K修復版…なかなか出会えない貴重な映画を“レア度”とともにご紹介!

 文=飯塚克味 【1月の激レア映画10作品】①『寝ずの番』(’06) レア度…★★★☆☆  まず、映画ソフトが廃盤になっている作品から行きましょう。名優・津川雅彦が監督に挑んだ『寝ずの番』(’06)。彼は日本映画黎明期の巨匠、牧野省三の孫にあたる人物なのですが、当時、監督デビューにあたって、マキノ雅彦と名前を改めています。以前、発売されたDVDは既に廃盤なんです…。HD画質の放送は、保存用には打ってつけです! ②「ミレニアム[完全版]」三部作(『ミレニアム ドラゴン・

“ネガティブ”なキャラクターを“ポジティブ”に反転させる、岡田将生の「人間力」を紐解く

文=SYO @SyoCinema  デリカシーがない、ひねくれ者、神経質、口が悪い……。実生活ではあまり付き合いたくない他者が、この上なく魅力的に見えてくるのが、映画の魔法。脚本や演出によるところも大きいが、やはり“人”――つまり俳優の力が最重要に感じる。「嫌われ者役」という属性を背負ったマイナスのスタートながら、人間的な面白みや深みに変換し、あろうことか観客に愛されてしまう。そうした特長を遺憾なく発揮させているのが、岡田将生だ。  美しく、爽やかで、人気者。最近開設した

いつだって誰かのうれしいことをうれしいって思える人間でいたい――西島秀俊と内野聖陽W主演の『劇場版「きのう何食べた?」』を観てスピードワゴン・小沢一敬が心撃ち抜かれたセリフとは?

(※初回放送 12/16(土)後8:00、以降リピート放送あり) 取材・文=八木賢太郎 @yagi_ken ──今回は、人気漫画を原作にしたTVドラマの続編として映画化された作品ですが。小沢さんは、原作やTVドラマをご覧になったことは? 小沢一敬(以下、小沢)「いや、どっちも知らなくて。だから、まったく何も知らない状態でこの映画を観させてもらったんだけど、ちょっと驚いたのは、何の予備知識もなく観たのに、最初のシーンの会話だけで物語の設定が全て理解できたのよ」 ──最初

岸井ゆきのの“頼もしさ”—独自性の高いキャラクターに命を吹き込む彼女を紐解く

文=SYO @SyoCinema  表現者にとって、“代表作”に出合えるかどうかは活動上の生命線ともいえる。ブレイクするきっかけにもなるだろうし、転機や原点にもなり、時には越えなければならない壁にもなるだろう。何にせよ、代表作は必殺技みたいなもので、あるのとないのとではその後の人生が大きく異なる。往々にして代表作は自分だけでなく他者も含めた得票数で決まるため、ある種の総意ともいえるだろう。  俳優・岸井ゆきのにおいては、やはり『ケイコ 目を澄ませて』がそれにあたるはずだ。

【投票受付中!】教えてください、あなたのベスト3「W座映画賞」開催!

 はじめまして! 「W座からの招待状」5代目プロデューサー・Tです。  今年「W座からの招待状」では、「W座映画賞」を開催することになりました。noteでは、番組と映画賞の内容をお伝えできたらと思います。 ▼【W座からの招待状】「W座映画賞」ランキング投票大募集! まずは「W座からの招待状」のご紹介から…!  この番組は、WOWOWが3チャンネル開局をするタイミング(2011年10月)に誕生し、WOWOWが自信をもってオススメする珠玉の作品を放送している日曜午後9時の映画

難役が坂口健太郎の“進化”を促す。彼から放出される“言葉を超えた何か”を紐解く

文=SYO @SyoCinema  執筆業を行なっていると、時折監督や俳優サイドから「指名」をいただくことがある。そうした瞬間は、飛び上がるほどうれしいものだ。誰かに自分の感性を肯定され、必要とされる喜び――。  俳優であればオファーが届く状態がそれに当たるだろうが、もう一つ上の「当て書き」という誉れが存在する。「当て書き」とは、演じる俳優を想定して役を書くこと。「あなたのためにこの役を用意しました」というラブコールなのだ。  今回紹介する映画『サイド バイ サイド 隣に

前世を記憶する子どもたちのセリフにゾッとする――大泉洋、有村架純、目黒蓮、柴咲コウらが共演した『月の満ち欠け』を観てスピードワゴン・小沢一敬が心撃ち抜かれたセリフとは?

(※初回放送 10/7(土)後8:00、以降リピート放送あり) 取材・文=八木賢太郎 @yagi_ken ──たまたまなんですが、今回は前回の連載と同じ廣木隆一監督の作品となりました。 小沢一敬(以下、小沢)「前回ここでしゃべった『母性』('22)も廣木隆一監督だっけ? 今回の『月の満ち欠け』は、思ってたよりも不思議な話だったね。なんて言うか、『世にも奇妙な物語』('90~)みたいにも感じるというか。原作は直木賞作品なんでしょ?」 ──2017年に第157回直木賞を受

【完成報告】「斎藤工×板谷由夏 映画工房」新キービジュアル制作プロジェクト

【御礼】 こんにちは! 「映画工房」番組プロデューサーの樋浦悠真と申します。  このたび、「映画工房 新キービジュアル制作プロジェクト」にて最優秀賞を受賞されたヤマシタケンスケさんとともに、打ち合わせやフォトセッションを行ない…  ついに新キービジュアルが完成いたしました!  改めて、本プロジェクトにご参加いただき、短い制作期間の中、イラストや実写にとどまらず、絵画や模型、版画などさまざまなアイデアを形にしてくださった皆さまに、御礼申し上げます。  こちらの記事では、

表現者・稲垣吾郎の“生活感のなさ、純度の高い清廉さ、あるいは神々しさ”を、『窓辺にて』から紐解く。

文=SYO @SyoCinema  映画・ドラマ・演劇――“芝居”において、演じ手と観客の間ではある約束が交わされる。「演じ手を役だと信じ込む共犯関係」だ。その物語の中では俳優本人はかき消え、役として認識しようとするものだ。われわれ観客はそれを当たり前のように行なっているが、改めて考えてみると奇妙な話ではある。そこにいるのは、紛れもないその人(俳優)なのだから――。  観客も、俳優も、制作サイドも「イメージ」というものにある程度は振り回される。好青年の印象がある俳優に狂気