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映画のはなし シネピック

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新しい映画と出会える。映画をより深く楽しめる。そんなコンテンツをお届けしていきます。担い手は、映画ライターSYOさんなど個性豊かな面々。それぞれの感性が作り出す映画愛は必見です!… もっと読む
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2022年8月の記事一覧

役を“終わらせない”俳優・伊藤万理華の真骨頂を堪能できる―『サマーフィルムにのって』

文=SYO @SyoCinema  2017年末に乃木坂46を卒業し、5年弱。近年、映画・ドラマ・舞台周りで「伊藤万理華」の名前を聞く機会が増えた。それはすなわち、彼女の俳優としての活躍の場が順調に拡大しているからに他ならない。  2020年には、「もし乃木坂46のオーディションに落ちていたら?」という設定のマルチバース的なLINE動画企画「私たちも伊藤万理華ですが。」で4役を演じ、2021年には「お耳に合いましたら。」で地上波連続ドラマ初主演。直近では、WOWOWオリジ

人生に折り返し地点なんてないんだよ。――ピスタチオ、スリムクラブ、友近らも出演した『老後の資金がありません!』を観てスピードワゴン・小沢さんが心撃ち抜かれたセリフとは?

取材・文=八木賢太郎 @yagi_ken ──前回が毎月連載のラストで“感動の最終回”という感じだったのですが、早くも戻ってきちゃいました。 小沢一敬(以下、小沢)「うん。最終回っぽくきれいにまとめて終わったはずなのに、なぜ早々に復活したかと言えば、この仕事がなくなると俺の老後の資金がありません! ってことだよ。老後の貯蓄のためにまだまだ働かなきゃいけないから、恥ずかしながら帰ってまいりました(笑)」 ──まさか、そんなわけはないんですが(笑)。今後も不定期連載にてよろ

クラウス・バルビーがののしった、性的マイノリティーの人々やロマの人々は、その後、どうなったのか――マルセル・マルソーの実話を、「知る」ための入り口に

文=安田菜津紀 @NatsukiYasuda  今回取り上げるのは、ナチスドイツにあらがった一人の若者の実話を基に描かれた『沈黙のレジスタンス~ユダヤ孤児を救った芸術家~』('20)。  SDGsの「目標10:人や国の不平等をなくそう」「目標16:平和と公正をすべての人に」を軸に、第2次世界大戦や今起きている戦争で、よりかき消されがちな声のことを考えます。 (SDGsが掲げる17の目標の中からピックアップ) 当時、ナチスドイツの迫害の対象になったのはユダヤ人だけではな

イラストレーター・信濃八太郎が行く 【単館映画館、あちらこちら】 〜「川崎市アートセンター アルテリオ映像館」(神奈川)〜

文・絵=信濃八太郎 プロフェッショナルとは  プロってなんだろう。  自分はプロだと何かしら胸を張って言えることはあるだろうか。皆さんはありますか。ぼくが思うプロとは、ずばり、自分のフォームを持っている人のこと。  これは「自分の絵」ってなんだろうと、四六時中そんなことばかり考えていた、悩み多き若い日に読んだ、色川武大さんの名著『うらおもて人生録』で出会った言葉で、当時大いに得心したものだ。  この本には、小説家になる前にプロのばくち打ちを目指していた色川さんの、過去