笑の大学、そしてトニー賞がやってくる!ノミネーション作品もご紹介。“ステージ派”なら押さえたい!6月の必見舞台・番組2本!
【Don't miss out!6月のWOWOW舞台・番組2選】
①生中継!第76回トニー賞授賞式 6月12日(月)前8:00 (同時通訳)
6月17日(土)後9:00(字幕版)
いよいよ「第76回トニー賞授賞式」がやってきます!”ステージ派”の皆さんが心待ちにしている祭典の日。昨年に引き続きホストはアリアナ・デボーズが務めます。
さて、今回はノミネーション作品を見ていきたいと思います。
【ミュージカル作品賞】
「&ジュリエット」
もし「ロミオとジュリエット」の最後にジュリエットがロミオを追って死を選ばなかったら…?という設定から始まる、意欲的かつポップなコメディ作品。"Roar"、"Larger Than Life"など90年代以降のヒットソングで彩られた煌びやかなステージングに魅せられます。
「キンバリー・アキンボ」
各誌で高く評価されています。「ラビット・ホール」などで知られるデヴィッド・リンゼイ=アベアーによる戯曲です。難病を患った16歳の主人公を演じるのはトニー賞ミュージカル主演女優賞を受賞したこともあるベテラン女優、 ヴィクトリア・クラーク(今回もノミネートされています)。
「ニューヨーク・ニューヨーク」
1946年、戦後の活気を取り戻したニューヨークを舞台に夢を抱く芸術家たちを描きます。作詞&作曲は「キャバレー」や「シカゴ」を手掛けたジョン・カンダー&フレッド・エブのコンビ。今回はさらに新しい楽曲も加わり、その歌詞をリン=マニュエル・ミランダが担当。ミュージカル音楽好きにはたまらない1本ですね。
「シャックト」
コメディ作品です。舞台はトウモロコシの生産で有名な架空の地域コーンコブ群。突然の不作が襲います。そんなピンチを救うべく主人公の少女は立ち上がりフロリダ州のタンパへと旅に出ます。作詞&作曲はグラミー賞受賞歴のあるブランディ・クラーク & シェーン・マカナリー。脚本は「トッツィー」のロバート・ホーン。気になります…!
「お熱いのがお好き」
今回の最多ノミネーション作品。ご存じマリリン・モンロー主演の同名映画を元にしています。作詞を手掛けたのは「ヘアスプレー」のスコット・ウィットマン& マーク・シャイマン、演出と振付は「ブック・オブ・モルモン」等で知られるケイシー・ニコロウ。あのスリリングさ、楽しさ、お洒落な空気感がどんな風に舞台で表現されたのか。パフォーマンスが楽しみです!
【演劇作品賞】
「エイント・ノー・モー」
「もし米国政府がレイシズムを解決するために、アフリカ系アメリカ人にアフリカ行きの片道切符を提供したら?」というテーマから掘り下げるコメディ。風刺的で、アヴァンギャルドな意欲作。
「ビトゥイーン・リヴァーサイド・アンド・クレイジー」
2014年にオフ・ブロードウェイで初演。ついにオン・ブロードウェイでの上演となった注目作です。レントコントロールの適用されたNYのアパートを舞台に、住居を守ろうと奮闘する父子を描きます。2015年にピューリッツァー賞を受賞。
「コスト・オブ・リヴィング」
2016年の初演の後、2018年にピューリッツァー賞を受賞。登場するのは2組の障害者と健常者のペア。それぞれの人生が交錯する様を描きます。3人が俳優賞にノミネートされていて演技の評価の高さも窺えますね。
「ファット・ハム」
2022年、オフ・ブロードウェイでチケット完売の人気を博しピューリッツァー賞を受賞。「ハムレット」をもとに、父の亡霊から殺人の復讐を果たすよう求められた青年を描きます。
「レオポルトシュタット」
「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」で知られる英国の劇作家、トム・ストッパードの最新作。2020年のオリヴィエ賞作品賞受賞作品です。20世紀前半のオーストリアに生きたあるユダヤ人一族の一大叙事詩で、ストッパードの自伝的要素も含まれています。日本初演版およびNTLive版を拝見しましたが、数時間の間に多くの命と人生が色濃く浮かび上がるすばらしい戯曲でした。
多くは観劇していないので受賞予想はできません…(涙)。他部門でも気になる作品がたくさんあるので、ぜひ授賞式の模様を一緒に楽しみましょう。
②三谷幸喜「笑の大学」 6月24日(土)後7:00
本作品の情報解禁ニュースを見た私は、”今すぐ世界に向かって拡声器で共有したい…!”と思いました。世界の演劇ファンが認めた名作であり、人生で一度は生で見たいと願った1本だったからです。初演は1996年。同年度の読売演劇大賞「最優秀作品賞」を受賞した後、ロシア、韓国、中国、フランスで翻訳上演されてきました。しかし、1998年の再演以来、国内での上演はなかったため、私はDVDでしか見たことがありませんでした。
向坂と椿のやりとりは、喜劇芝居の台詞を巡って議論するため言葉の面白さがあるのですが、次第にもっと多くの要素が浮かび上がってきます。舞台上でぶつかり合う2つの信念。心から笑ったことがない向坂と笑いのすばらしさを謳う椿、それぞれのそれまでの人生が背後に見えてくるような説得力があります。
ところが、反発し合うように見える互いの熱量は舞台上で交わり合い次第に影響し合っていきます。その描き方に”あざとさ”もある上に、後半、“人の心が動く瞬間”にバチっと行き着いて、笑いながら涙してしまいます。人間の心が重なり合うことの美しさ、そこにエンターテインメントの役割もあることを確信させてもらえるような戯曲です。
舞台は、人間のエネルギーを生で見ることができる醍醐味があると思うのですが、本作はその極みでした。逆向きの2つのエネルギーがいつしか同じ方向へと向いていく、その熱を浴びることができます(映像でもきっと味わえます!)。内野聖陽、瀬戸康史。この2人だからこそ生まれるリズム感も間も絶妙で、個人的にはジャズを聴いているときのようにドキドキしました。特に内野演じる向坂から滲み出る人間味はとてもとても愛おしいです。
そんな非の打ちどころがない必見の1作。私の文章も長くなってしまいましたね。お見逃しなく。
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終わりに…
最近プライベートで見た作品のなかで印象に残ったのは、爍綽と「デンジャラス・ドア」、ゆうめい「ハートランド」、SPAC「天守物語」、「舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド」、劇団唐組「透明人間」、ルサンチカ「殺意(ストリップショウ)」、劇団た組「綿子はもつれる」、インバル・ピント「リビングルーム」などです。静岡で開催された「ふじのくに野外芸術フェスタ2023」&「ストレンジシード静岡2023」にも行ってきました~。ストリートや野外でのパフォーマンス、見るたびに新たな出会いがあって大好きです。皆さんも普段見ないタイプの舞台芸術との出会いを楽しんでみては?6月のWOWOWラインナップはジャンル豊富かつ名作ぞろいです。
今月も、もう一度見たい作品がある皆様も、劇場に見に行けなかった作品がある皆様も、WOWOWステージをお楽しみいただければ幸いです。
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