高橋一生「2020」から望海風斗の待望のコンサートまで必見作続々 “ステージ派”ならおさえたい!年末~1月の舞台5本
こんにちは。「WOWOW社内で(たぶん)TOP10には入る“ステージ好き”」Fです。今回は年末~1月に放送される、WOWOWでしか見られない舞台5作品(※)を取り上げます。
すごく見たい舞台でも、チケットが取れなかったり上演会場が遠かったりして生で見られないことってありますよね。WOWOWはそういった作品も映像で全国の方にお届けする存在でありたい、そう強く思っています。
本コラムも、舞台好きな皆さんの鑑賞をさらに豊かにする一助になれれば幸いです(注:見どころに触れている箇所もあります!)。コメント欄もご利用いただけまーす♪
(※執筆時点でDVD等は確認できない、放送時期に字幕ありで見られるのはWOWOWだけである作品、など)
表紙の画像:望海風斗 20th Anniversary ドラマティックコンサート『Look at Me』撮影:岩田えり
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【Don't miss out! 年末~1月のWOWOW舞台5選】
①「2020」高橋一生×上田岳弘×白井晃 12月24日(土)後4:00 アーカイブ配信あり
小説「ニムロッド」で芥川賞を受賞した上田岳弘に、高橋一生が書き下ろしを提案し、白井晃が構成・演出した本作。情報解禁から千秋楽まで「見たい!」という声が絶えませんでしたね。
空っぽの劇場。” Genius lul-lul(GL)”と名乗る男が観客に語りかけます。彼は疫病が広がり東京オリンピックがなくなった年、つまり2020年から沈黙を貫いているのだそうです。
何度も生まれ直しているという彼は、過去と未来を行き来してクロマニヨン人や赤ちゃん工場の工場主、最後の人間…などになり、それぞれの生きた時代を駆け巡ります。回顧してたんたんと描写するようでありながら各時代の再現も含まれているので、舞台上の”創造力”も見る側の”想像力”もフル回転の空間が広がっていきます。GLの個性が形を変えていくように見えるのですが、完全な変形ではなく一つの軸がしっかりと通っています。そのため、難解だけれど混乱はせず、むしろぐんぐん引き込まれていきました。大きな劇場で見る大きなスケールの話なのに、不思議と舞台上の余白を全く感じません。高橋がどっしりとした重心の軸を保ちながらも、伸びやかな声と身体で創造の世界を立体的に広げているからだと思います。客席を劇世界に誘う力を持っていて、高橋の立つ舞台を見ている時、私はいつも没入感を覚えます。
GLが700年以上沈黙することになった理由は? 彼が積み上げていくブロックは何を示唆しているのか…? 年を越す前に見ておきたい2022年の話題作にご注目ください。今回特別に撮り下ろした高橋一生×上田岳弘×白井晃鼎談も併せて放送いたします。
▼「2020」高橋一生×上田岳弘×白井晃の詳細はこちら
②「友達」鈴木浩介×有村架純×林遣都 作:安部公房 演出:加藤拓也 12月26日(月)後7:00
2021年、非常に話題になった演劇ですね。この顔ぶれは凄い…とチケット入手に奮闘したのを思い出します。
戯曲は安部公房です。ひとり暮らしをする男のもとに見知らぬ9人家族がやって来ます。飄々と「人とつながることの素晴らしさ」などを唱えながらあっという間に住み着き占拠してしまう…、という見ているこちらも呆気に取られてしまうストーリー。
本作を初めて読んだのは高校生の時です。男の部屋や家族の浮かべる笑みに対して、”じっとり”としたイメージが湧きました。頭というより皮膚からそれが離れなかったのを覚えています。
ところが、本作を見てそのイメージは”からり”としたものに変わりました。父の山崎一、母のキムラ緑子、長男の林遣都のテンポの良い掛け合いも、岩男海史、大窪人衛が演じる兄弟のじゃれあいも自然体の明るい家族にしか見えず、侵入してきた不気味さを忘れてしまいます。
彼らの「孤独はよくない」という思想も、家族そのものもポジティブな存在に見えました。コロナ禍で人とのつながりが希薄になっている今だからこその感じ方もあると思います。加藤拓也と出演者15名のつくる世界観によって「友達」という作品に完全にはまってしまいます。そんな風にして家族の空気にのみこまれそうになっていると、部屋を占拠されている男(鈴木浩介)の戸惑う反応に引き戻されます。そのため、笑っているけど心はざわざわしているような時間が続いていました。
私は問いかけを含んだラストのように受け取りました。2時間弱の1本ですが、プラス何十分も何時間もラストシーンのことを考えるかもしれません。伊藤雅子の舞台美術も斬新で、今回の演出においてとても重要な役割を果たしていると思います(見てのお楽しみ)。年末の1本としてぜひご堪能ください。
③1月MET特集:華麗なるR・シュトラウスの世界 2023年1月1日(日・祝)《ばらの騎士》R・フレミング×E・ガランチャ 前9:10/《ナクソス島のアリアドネ》後1:30
元日にお届けするのはメトロポリタン・オペラ。ゴールデンコンビ、R・シュトラウス(作曲)&H・V・ホーフマンスタール(台本)による2作品です。
まずは『ばらの騎士』。2017年5月に上演されたロバート・カーセンによる新演出バージョンです。時代設定を「18世紀」から「20世紀初頭のウィーン」に移したことで、時代の移ろいを浮き彫りにしたと高く評価されました。国際的に活躍するメゾ・ソプラノのエリーナ・ガランチャがオクタヴィアンを演じます。
続いて今回が初放送となる『ナクソス島のアリアドネ』。18世紀のウィーン。新作オペラ「ナクソス島のアリアドネ」の上演を控えた作曲家のもとにパトロンからの”ムチャ振り”が…「オペラとコメディを同時上演せよ」(現実に起きたら面喰らってしまいますね)。オペラ陣の緊急事態感とコメディ陣の盛り上がりの温度差が舞台好きにはたまらない面白さを醸成しています。言葉の量が多く、テンポよく歌い繋がれていきます。
再び幕が開くと「ナクソス島のアリアドネ」の上演がはじまります。恋人に捨てられて嘆くアリアドネ、それを慰める喜劇役者、気まぐれな愛に身を任せるツェルビネッタ…とオペラとコメディの登場人物たちがともに舞台に立ち、物語を進めます。うって変わって神秘的で、衣装や舞台美術の深い色に吸い込まれるような感覚を覚えました。大胆な変化に、演出家がエライジャ・モシンスキーひとりであることに驚きます。モシンスキーは、昨年コロナウイルスに感染し亡くなりました。ロイヤル・オペラからミラノ・スカラ座やウィーン国立歌劇場と世界の著名な歌劇場で演出を手掛けてきました。もっと多くの作品を拝見したかったです。ご冥福をお祈りします。
アリアドネ役を演じるのは、新世代を代表する驚異のドラマティック・ソプラノ、リーゼ・ダーヴィドセン。透き通った高音が高いところから頭の上にすーっと下りてくるような感覚を覚えます。世界を魅了する豪華な顔触れとともに、極上の人間模様をご堪能ください。
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④地球ゴージャス「クラウディア」2022 2023年1月7日(土) #1 大野拓朗 廣瀬友祐 門山葉子 上山竜治 平間壮一 後4:30/#2 甲斐翔真 小栗基裕 田村芽実 中河内雅貴 新原泰佑 後7:00
岸谷五朗と寺脇康文による演劇ユニット・地球ゴージャス。本作「クラウディア」は、2004年に初演、2005年にはアンコール上演が行われ約12万人を動員した代表作の一つですね。桑田佳祐が書き下ろした「FRIENDS」ほか、サザンオールスターズの数々の楽曲で綴るジュークボックスミュージカルです。
地球ゴージャスならではの特徴を挙げるとキリがないですが、まずはダイナミックな世界観。ファンタジー要素も感情移入してしまうドラマ性もあって、物語が進むにつれて舞台も客席も熱量が上がっていきます。この作品では、「愛を禁じられた世界」での民族による戦いと、そこで生まれる恋を描きながら、岸谷五朗「反戦三部作」の一作として強いメッセージを届けています。
次に、エネルギッシュな群舞、客席の最後列まで響くコーラスそして激しいアクションといったエンターテインメント要素。今回もミュージカルやダンス界で今まさに注目を集める若手俳優が揃いました。
また、ステージセットや衣装も印象的です。過去の公演では山本寛斎が衣装デザインを担当したことで話題を呼んできましたが、今回はそのクリエーションを引き継ぐ山本寛斎事務所が担当。一度見ると忘れられず、細部までじっくりと見たくなってしまう衣装の数々が舞台を彩ります。
Wキャストの両バージョンをお届けします。18年ぶりの再演、お見逃しなく。
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⑤望海風斗 20th Anniversary ドラマティックコンサート『Look at Me』 2023年1月15日(日)後2:30
元宝塚歌劇団のトップスター望海風斗の20周年を記念したコンサートです。宝塚退団後も話題のミュージカルに多数出演していますね。私が見た『INTO THE WOODS』では魔女の役を、『ガイズ&ドールズ』ではミス・アデレイドを演じていました。いずれも圧倒的な表現力と歌唱力で強烈な印象を残していました。
本作は望海がトップクリエイター陣と組んでミュージカルとコンサートを融合させた意欲作です。構成は「サ道」「タモリ倶楽部」などを手掛ける竹村武司、演出・上演台本は東京2020パラリンピック開会式の演出を務めたウォーリー木下、音楽監督はあの武部聡志。
ミュージカルの名曲、日本の名曲、そしてオリジナル曲などさまざまな歌とダンスが繰り広げられます。そのセットリストには、とても深く強い想いが詰まっていると感じました。はじめは望海その人を語るものなのかと考えましたが、次第に、それに加えて誰にとっても寄り添いやすい「時間」や「時代」といった大きなテーマも意識しているのでは? と思いました。
宝塚時代を思わせる演技も女性らしさを前面に出した歌い上げもあって、表現の幅広さが光ります。ステージングの小さな工夫にも感心します。パネルの映像がささやかな感動を与えていたり、舞台が物語の現場にも抽象的な空間(歌詞の世界に沿ったような)にもなっていたり。
宝塚時代から応援している方も、これからもっと望海風斗の舞台を見ていきたいなという方も、皆さんご覧になっていただきたいです。日本のミュージカル界をさらにさらにパワーアップさせる存在であると強く思います。歌詞に表情をつけながら、高音ものびやかな圧倒的歌唱力を堪能してください!
▼望海風斗 20th Anniversary ドラマティックコンサート『Look at Me』の詳細はこちら
終わりに…
最近プライベートで見た作品のなかで印象に残ったのは、KAAT×城山羊の会「温暖化の秋 -hot autumn-」、二兎社「歌わせたい男たち」、「ショウ・マスト・ゴー・オン」、ブロードウェイミュージカル「シカゴ」、「東京キャラバン the 2nd」などです。私は劇場でもらうチラシ束が好きです。開演の数分前、今後観たい作品と出会っていく時間…例えば城山羊の会のチラシはおなじみのイラストが特徴なので、見つけると「はっ♪」となります。最近は来年公演のチラシが多く年末感に浸っております。皆さんは、作品情報をどのようにキャッチアップしていますか?
今月も、もう一度見たい作品がある皆様も、劇場に見に行けなかった作品がある皆様も、WOWOWステージをお楽しみいただければ幸いです。
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