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特大ボリュームでステージをお届け。12月は舞台三昧(ざんまい)~待望の「阿修羅のごとく」、久しぶりの東京サンシャインボーイズほか“ステージ派”なら押さえたい! 12月の必見舞台5作品

 こんにちは。9月からWOWOW公式noteの“中の人”デビューした「WOWOW社内で(たぶん)TOP10には入る“ステージ好き”」Fです。
 今回は12月に放送される、WOWOWでしか見られない舞台5作品(※)を取り上げます。師走のWOWOWステージはとっても数が多く顔触れも豊か。年末は観劇三昧ざんまいですね! 今回は「はみ出し枠」と「12月のステージ早見表」、そしてチケット入手困難なあの舞台の配信告知も盛り込んでみました。
 舞台は、エンタメの中でもキャパが限られているので、生で見るのが叶わないことがありますよね。限られた地域だけでの上演や、チケットをゲットした人しか見ることのできないレアなものも。WOWOWはそういった作品も映像で日本全国の方にお届けする存在でありたいです…。本コラムも、舞台好きな皆さんの鑑賞をさらに豊かにする一助になれれば幸いです。(注:見どころに触れている箇所もあります!)
 さて、このコラムではコメント欄をご利用いただけます! ぜひ皆さんからもWOWOWステージのご感想など共有いただければ幸いです。
(※執筆時点でDVD等は確認できない、放送時期に字幕ありで見られるのはWOWOWだけである作品、など)
★11月の必見舞台5作品はこちら!
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【Don't miss out! 12月のWOWOW舞台5選】

①三谷幸喜「東京サンシャインボーイズ『returns』」12月4日(日)後1:30放送

撮影:二石友希

 1983年、三谷幸喜を中心に旗揚げされた東京サンシャインボーイズ。1994年に2024年の復活を宣言して30年間の充電期間に突入しました。ところが、復活公演を上演する予定だった東京・新宿のシアタートップスが、2009年3月末で閉館することに…!(演劇界にとって衝撃のニュースでしたね)そこで、幻ともいえる期間限定復活をして本作を上演したのです。
 東京サンシャインボーイズが充電期間に入ったのは私が生まれる前なのですが、おなじみのメンバーが舞台に出てきた時、思わずにやっとしてしまう懐かしさを覚えました。話しかけづらい人かな…? と思わせる西村まさ彦、笑顔と歩き方だけでその人の光と闇を感じさせる相島一之、 一言も発していないのにテキパキした人なのだと想像がつく宮地雅子など、出演者17人がほぼ出ずっぱりですが、せりふの掛け合いも気持ち良いほどリズミカルで「さすが劇団…本当に15年ぶり?」と思わずつぶやいてしまいます。
 小学校の同窓会に集まった40代の男女。彼らの亡き恩師が「近く襲来する宇宙船艦隊から地球を守れるのは君たちだけだ」というメッセージを残していたことを知り、それぞれの秘められた能力を見つけようと奮闘し始めます。基本的に笑いながら見ていましたが、次第に登場人物たちに共感し、信じがたい危機やまた会えるか分からない同級生たちを目の前に「私だったらどうするか」「あのキャラクターにはどうしてほしいか」など考え、揺れ動く自分がいました。
 東京サンシャインボーイズ復活予定の2024年がもうすぐそこに迫っています…! その前に本作を見ておきたいですね!
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②野村萬斎・子午線の祀り 第25回読売演劇大賞受賞作品 12月17日(土)前6:45放送

 木下順二が「平家物語」を題材に、“天”の視点から平知盛や源義経などの源平合戦に関わった登場人物たちを描いた不朽の名作。1979年の初演では古典芸能と現代演劇で活躍する俳優、スタッフが集結し、”日本演劇史を体現した唯一無二の作品”と高く評価されました。
 本作は、2017年に上演された野村萬斎の新演出版(第25回読売演劇大賞最優秀作品賞)の2021年版です。群読で伝える日本語の「語り」の美しさ、そして宇宙的な視点…これらが交わり合い、見終わった後、舞台から聞こえてきた音が残響となってこだまして、現実に戻るのに時間がかかるくらいです。
 知盛を演じる野村萬斎は、せりふや動作の後の<余韻>にも繊細な表現が宿っているのを感じました。義経役の成河は、伸びる声とダイナミックで俊敏な動きのバランスが絶妙で、とても大きな人に見えます。研ぎ澄まされた空気感の中心に松井るみの舞台美術があります。シンプルなのにどっしりとしていて、ディテールはないのに芝居と融合していて、そこがどんな場であるか伝えてくる存在でした。吉見一豊、村田雄浩、若村麻由美といった豪華な出演者陣が一語一語を丁寧に表現していて心を動かされます。
 今後しばらく放送予定はありません…! 日本語と舞台芸術の美しさを堪能してください。
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③向田邦子「阿修羅のごとく」小泉今日子×小林聡美×安藤玉恵×夏帆 脚色 倉持裕 演出 木野花 12月17日(土)後8:00放送

 向田邦子の最高傑作の一つ「阿修羅のごとく」が木野花の演出で舞台化されました。今年最もチケットの入手が困難といわれた舞台の一つですね。年を越す前にぜひご覧いただきたいです!
 ある一家の4姉妹が「70歳になる父親に愛人がいるらしい」ということを知り、集まるところから物語が始まります。その4姉妹を小泉今日子、小林聡美、安藤玉恵、夏帆が演じます。それぞれの”姉妹に見せる顔”と”男性に見せる顔”の違いが絶妙です。さらに、岩井秀人が興信所の男と四女・咲子の恋人のボクサーを、山崎一が次女・巻子の夫と長女・綱子の恋人を演じて、ドラマの表情をさらに豊かにしています。
 一貫して感じたのは“熱”でした。客席が四方を囲む土俵のような舞台で、女同士の、あるいは女と男の“闘い”が繰り広げられます。そして大胆な間。この緩急が絶妙でした。間で、高まった熱がすぅーっと上がって広がり、枠組みの屋根に吸い込まれていくようで。杉山至の舞台美術が空間を唯一無二のものにしています。音楽も三味線からラテン風のギター曲まで熱をつくる大切な要素となっています。
 クライマックスには驚きが待っていますが、その後の余韻で「どうして”阿修羅のごとく”なのだろう?」と考える人も多いはず。私も「闘う4姉妹を指しているだけではないのでは」と考察を楽しんだひとりです。身近の人に対して抱く「こうあってほしい」とか「こうあるべき」といったものが無自覚に強くなっていると、関係が変化したときに執拗に動揺してしまうことがあります。そんな時に生まれる自分の中での闘いみたいなものが見えた気がしました。臨場感あふれる生々しい作品をお楽しみください!
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④ゲルニカ 12月18日(日)前7:00放送

 幕が下りた瞬間にぞわーっと鳥肌が立ち、だんだん自分の意識が戻ってきて「とんでもない傑作に出会ってしまった」となる舞台があります。ゲルニカはそれでした。
 ゲルニカの無差別爆撃の悲劇を描いたピカソの名画、『ゲルニカ』。演出の栗山民也は、同作と出合って以来20年以上、舞台化の構想を温めてきたそうです。
 ゲルニカの元領主の娘サラは、街の人々と触れ合う中で内戦が激化していることを知り、自由と平等の考えに目覚めます。海外特派員、兵士、そしてサラの母など、さまざまな人の視点から”悲劇までの日々”が描かれます。「どんなラスト演出なのだろう」とはやる気持ちと悲劇を見たくないという感情とが入り交じるのを感じました。空間に重なる国広和毅の音楽も、その感情をよりかき立てていきます。何かをたたくリズムが、攻撃音のようにも手拍子のようにも鼓動のようにも聞こえました。詩的なせりふも多い中、サラを演じる上白石萌歌の語りから、描かれているものがはっきりと目に浮かびます。視線や声色の変化には、同役との丁寧な対話を積み重ねた役作りがうかがえます。
 ゲルニカの地に生きた人々の信念は現代にも通ずるものです。個人的には、鑑賞の前後でゲルニカ爆撃の歴史を復習したことで、本作が持つ人間ドラマの説得力、ピカソの名画から受け継いでいる空気感をより強く感じ感動もひとしおでした。衝撃のラスト。鳴りやまないカーテンコール。第28回読売演劇大賞で優秀作品賞を受賞した力作です。
ぜひお見逃しなく。
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⑤NODA・MAP「フェイクスピア」 12月24日(土)後1:30放送

撮影:篠山紀信

 問い、葛藤そして衝撃の後の突き抜けたようなラストシーン…立ち上がって手が痛くなるほど拍手をしました。
 SNSから現代社会まで“フェイク”があふれる世界と、劇作家シェイクスピアを掛け合わせた、2021年上演のNODA・MAP第24回公演です。第29回読売演劇大賞の大賞・最優秀作品賞受賞作品です。
 一度見たら絶対に忘れられないタイトルと宣伝ビジュアルに「見逃したくない」という気持ちがぐわっと高まったのを覚えています。
 野田秀樹が「コトバ」と正面から向き合った本作。
 シェイクスピアや野田秀樹が紡ぐ演劇のせりふ、フィクション、イタコによる口寄せ、現代社会で飛び交うフェイクそしてノンフィクション…これらが描かれるいくつかの場所を時空を超えて旅するような時間が流れます。冒頭から笑いの多い客席でしたが、せりふに対する考察が進むにつれてそれが少なくなっていくのを感じました。最後の30分ほどは視点がぎゅっと一点に集中します。ちなみに、私にとってはある童話の登場がとても大きな意味を持ちました。
 高橋一生の動きには柔軟性、リズム感とともに役の存在をしっかりとさせる重心があると感じます。同じく12月に放送・配信する「『2020』高橋一生×上田岳弘×白井晃」でも、そこが強く印象に残りました。同じせりふ・言葉でも場面を追うごとに解釈が変化していくことがありますが、それに気付き、はっとさせられる演技もたくさんあり、見終わった後も頭の中でリフレインしています。
 2021年の話題の1作、圧巻のラストシーンをお見逃しなく…!
▼NODA・MAP「フェイクスピア」の詳細はこちら


【見逃せない!今注目のあの舞台も配信?!~特別告知】

以下の公演のライブ配信が決定いたしました。
松尾スズキ新作書き下ろしは昭和の小説家ツダマンをめぐる狂気のメロドラマ。阿部サダヲ、間宮祥太朗、吉田羊ら豪華競演の話題作ですね!あわせてご注目ください。

松尾スズキ「ツダマンの世界」 阿部サダヲ 間宮祥太朗 江口のりこ 村杉蝉之介 笠松はる 見上愛/皆川猿時 吉田羊 他

<12月7日(水)後6:00> WOWOWオンデマンドにてライブ配信
WOWOWオンデマンドはこちらから⇒https://wod.wowow.co.jp/


【はみ出し枠】(放送順)

12月のステージは大ボリュームで豪華なので、欲張って「はみ出し枠」も用意してしまいました!

ボリショイ・バレエ団「白鳥の湖」主演スヴェトラーナ・ザハーロワ 12月5日(月)前5:45放送

Photo © Damir Yusupov / BelAir Media

 12月になると「くるみ割り人形」が見たくなり、それを皮切りに私のバレエ鑑賞熱も高まりがちです(笑)そこで、今後しばらく放送予定がない本作を紹介させてください!
 主演はバレエ界の至宝 ウクライナ出身のスヴェトラーナ・ザハーロワ。ワガノワ・バレエ・アカデミーの卒業クラスへ飛び級で編入、17歳でマリインスキー・バレエに入団するなど若い頃からバレエ界の注目を集めてきました。チャリティーや若手・子供の育成支援なども幅広く行ってきたそうです。喜怒哀楽の表現力、指の先まで行き届いた繊細な動きは一度見ると忘れられません。
 ロットバルトのアルテミー・ベリャコフの躍動感あふれる演技も何度でも見たくなります。
 本作は1969年の巨匠グリゴローヴィチ演出版初演時、ソ連当局の圧力のため実現できなかったエンディングを、30年以上の歳月を経て実現させたバージョンです。


2022年版 漫才 爆笑問題のツーショット 12月10日(土)後8:30放送

 毎年恒例、その年に起きた政治、芸能、スポーツなど幅広いジャンルの出来事を、60分超えのノンストップ漫才で総括。WOWOWでの独占放送となります。さすがのリズム感と時事ネタの網羅性、今年を一気に駆け抜ける疾走感! お楽しみください。

【WOWOW舞台全一覧】

12月のステージ一覧を作ってみました!

※番組内容は変更になる可能性がございます。放送・配信日時はWOWOWオンライン等にてご確認ください。放送順の一覧は以下からご覧いただけます!
WOWOWステージの放送全番組リストはこちら

終わりに…
 
最近プライベートで見た作品の中で印象に残ったのは、ルーマニア国立ラドゥ・スタンカ劇場「スカーレット・プリンセス」、新国立劇場「レオポルトシュタット」、ムニ「ことばにない」、モンテカルロ・バレエ団「じゃじゃ馬馴らし」などです。「レオポルトシュタット」はユダヤ人一家の物語で、関連する歴史の情報に触れてから観劇しました。皆さんは観劇前に予習をされますか? 戯曲を読む、歴史をリサーチする、関連する映画を見る…いろいろと聞いたことがあります。お薦めの方法があればぜひ教えてくださいね!
 今月も、もう一度見たい作品がある皆さまも、劇場に見に行けなかった作品がある皆さまも、WOWOWステージをお楽しみいただければ幸いです。

<参考文献>
・世田谷パブリックシアター, 2021, “『子午線の祀り』”, 世田谷パブリックシアター, (2022年11月14日取得, https://setagaya-pt.jp/performances/202103shigosen.html
・PARCO, 2020, “ゲルニカ”, PARCO STAGE, (2022年11月14日取得, https://stage.parco.jp/program/guernica/
・光藍社, 2020, “バレエ大国ウクライナ~世界で活躍するウクライナ出身のダンサーたち~”, KORANSHA, (2022年11月14日取得, https://www.koransha.com/contents/198/

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