【1月の激レア映画！】千葉真一や柴田恭兵主演作品など、日本映画ファン必見の邦画の名作続々！ ジャッキー・チェン全盛期の3作品ほか、廃盤・未ソフト化など貴重な映画を“レア度”とともにご紹介！
こんにちは。WOWOW加入者向けに配布しているプログラムガイドで「見逃し厳禁！録画のチャンス！今月の激レア映画」の作品選定を行なっている映画ライターの飯塚です。
1月もプログラムガイドで掲載している通称「激レア映画」企画をコラムにしてnoteでも掲載いたします。プログラムガイドで選定された作品がどれほど貴重な映画なのか、その選定理由とともに作品の魅力について語っていきたいと思います。
文＝飯塚克味
当時売り出し中の小松千春、染谷俊ら出演！
高校生の男女の甘酸っぱい恋愛模様を切なく描いた青春群像劇
①［廃版］『She's Rain』
レア度…★★★★☆
互いに好き合いながらもなかなかそれを言い出せない、友達以上恋人未満の高校生の男女が織り成す恋愛模様を、甘酸っぱいタッチで描写。平中悠一が17歳のときに執筆し、1984年度文藝賞の佳作を受賞した同名のデビュー小説を、これが映画主演デビュー作となった小松をはじめ、当時売り出し中のフレッシュな顔合わせで映画化。小松の相手役には、映画の公開に合わせて歌手デビューした染谷俊が抜擢され、劇中でも自作曲を披露。他に菊池麻衣子らが共演。震災前の阪急沿線や神戸の街の風景も貴重で見逃せない。
まずはソフトが［廃盤］になっている作品『She's Rain』（‘93）から。1993年に製作され、震災前の神戸を舞台にした男女6人の高校生が織りなす青春ドラマです。原作は執筆当時17歳の平中悠一。小松千春や新進のアーティストだった染谷俊らが出演しています。この映画、何より、神戸の震災前の姿を捉えたこともあって、根強いファンが存在しています。BDも公式サイトのみで発売されたようなので、入手している人も多くないはず。今回、阪本善尚撮影監督監修のもと、スーパー16mmネガから起こしたリマスター版が放送に採用されるようなので、ファンにとっては永久保存版になりそうです。
梶原一騎原作の同名劇画を千葉真一主演で映画化！
空手の達人が強敵に立ち向かう熱血アクションシリーズの第１作
➁［未ソフト化］『ボディガード牙』
レア度…★★★☆☆
「巨人の星」や「あしたのジョー」でおなじみ、スポ根漫画の第一人者・梶原原作の同名劇画（作画・中城健）を映画化。アメリカで空手修行を積み、ボディガード業を営むようになった主人公・牙直人を、千葉がハマリ役で熱演し、全編にわたって切れ味鋭いアクションを披露。日本のみならず、欧米でもヒットを飛ばし、続編が作られたほか、以後、千葉主演の同種の映画が次々に連作され、＜サニー千葉＞の名を世界に知らしめる出世作となった。大山倍達が空手指導を務め、特別出演するほか、渥美マリ、内田良平らが共演。
続いては［未ソフト化］の作品『ボディガード牙』（’73）です。2021年に惜しくもコロナで亡くなった千葉真一。若い人には新田真剣佑や眞栄田郷敦のお父さんと言った方がいいですかね。そんな彼が本格的に格闘技に取り組んだアクション映画シリーズの第1作です。原作は梶原一騎。「巨人の星」などが有名ですが、空手の実録物も得意で、「空手バカ一代」など名作を数多く生んでいます。空手道の達人・牙直人が次々と敵と戦っていく内容で、千葉真一ならではのリアルアクションがマッチして、全編魅力に満ちています。
千葉真一、ノラ・ミャオら各国のスターたちが豪華競演！
日本、韓国、香港、タイの4カ国が合作したアクション大作
③［未ソフト化］『東京－ソウル－バンコック 実録・麻薬地帯』
レア度…★★★☆☆
妹夫婦が新婚旅行中に事故死したと聞き、日本から韓国へ渡ったダンプカーの運転手・達也。やがてその裏に麻薬の密売を巡る意外な真相が隠されていることを知った彼は、さらに香港、タイへ向かうことに。日本、韓国、香港、タイと、アジア4カ国による夢の合作企画が実現。千葉と松方弘樹が熱い共演を繰り広げるほか、あのブルース・リーとの共演で知られる香港のノラ・ミャオをはじめ、各国のトップスターたちが豪華に競演し、全編手に汗握る見せ場が満載。各国ごとに別バージョンが作られて劇場公開された。
こちらも千葉真一主演の［未ソフト化］のアクション映画『東京－ソウル－バンコック 実録・麻薬地帯』（’73）です。日本、香港、タイ、韓国の4国による合作映画で、それぞれの国のトップスターも登場しています。ダンプカーの運転手が、韓国で新婚旅行中に亡くなった妹とその夫の遺骨を引き取りに行きますが、2人の死の真相を追ったところ、狙われてしまうというお話。話だけだとヒッチコック映画みたいですが、そこはサニー千葉（千葉真一の海外での愛称）。アクション満載の娯楽作に仕上がっています。
監督は高嶺剛、小林薫、戸川純ら共演！
日本復帰直前の沖縄を舞台にした、アート性が高いファンタジー
④［未DVD化］『ウンタマギルー』
レア度…★★★★★
米国の統治下にあった沖縄のとある地方。製糖所で働く若者ギルーは近所で暮らす美しい女性マレーに好意を抱き、彼女と肉体関係を持つ。実はマレーは彼女を養女とする親方が理想郷の神から授かった豚の化身。そんな秘密を知ったギルーは親方から命を狙われ、さらに製糖所で起きた火災のぬれぎぬを着せられる。やがてギルーは逃げ込んだ森で精霊キジムナーに心霊手術を受けて超能力を得て、義賊ウンタマギルーに生まれ変わるが……。
次は［DVDにもなっていない貴重作］『ウンタマギルー』（’89）です。『パラダイスビュー』（’85）で高評価を得た高嶺剛監督が、同じ小林薫主演で、不思議な力を持った義賊を描くファンタジーになっています。最近は『バカ塗りの娘』（’23）などで、優しいお父さん役を演じることが多い小林薫ですが、昔はこんなとがった作品にも出ていました。上野耕路の音楽も沖縄ならではのムードを生み出していて、唯一無二の作品と言えるでしょう。
映画初主演の島田陽子が初々しくも切ない魅力を放つ、1970年代の東宝青春映画
⑤［未DVD化］『初めての愛』
レア度…★★★★☆
その後「日本沈没」や「八甲田山」などのヒット大作を放つ森谷監督が、それ以前に手掛けた小品の青春映画。当時のベストセラー小説を映画化した「赤頭巾ちゃん気をつけて」や「初めての旅」でも主演を務めた岡田（後に父親の後を継いで東映の社長・会長を歴任）が、年上の女性との関係に思い悩む鬱屈とした青年主人公を演じる一方、そんな彼の前に新たな恋人として登場するヒロインに、これが映画初主演となる島田が抜擢され、初々しい魅力を発揮。小椋佳の歌曲がドラマを彩るほか、加賀まりこ、草笛光子らが共演。
続いても［未DVD化作品］です。1972年に森谷司郎監督が作った青春映画『初めての愛』（’72）。主演は岡田裕介と島田陽子。年上のクラブのママ・夏子（加賀まりこ）に夢中になっている悠一（岡田）が友人の紹介で若い女性・光代（島田陽子）と出会います。悠一と光代の関係がうまくいくかと思いきや、恋愛を許さない光代の父親や、嫉妬から不安に苦しむ夏子が障害となり、思いがけない展開になっていきます。公開時は東宝創立40周年記念作の『恋の夏』と二本立てだったようなので、そちらも見てみたいですね。
オーストラリア映画界の鬼才ピーター・ウィアー監督の名前と才能を一躍世界に知らしめた秀作
⑥［4Kレストア版］『ピクニックatハンギング・ロック』
レア度…★★★☆☆
1900年2月14日のバレンタインデーに、その名もハンギング・ロック（＝首くくりの岩）なる岩山にピクニックに出かけた、オーストラリア東南部の名門女子学園の教師と生徒たちが、ミステリアスな失踪事件を起こす様子を、ウィアー監督がリリカルな映像美を駆使して神秘的なムードたっぷりに描写。その後ハリウッドに進出し、「刑事ジョン・ブック／目撃者」「トゥルーマン・ショー」などで活躍する彼の出世作となった。
続いては［4Kレストア］され、美しい映像で復活した名作『ピクニックatハンギング・ロック』（'75）です。『刑事ジョン・ブック／目撃者』（'85）や『トゥルーマン・ショー』（'98）などを作り上げた巨匠ピーター・ウィアー監督が、オーストラリア時代にその評価を決定づけた作品です。内容は1900年にオーストラリアであった少女たちの失踪事件を、美しい映像で綴ったアートタッチのホラー映画になります。日本では当時、大流行していたミニシアター、シネヴィヴァン六本木で公開されました。今回、放送されるのは初公開版（116分）を大きく刈り込んだ108分の［ディレクターズカット版］になります。
若き柴田恭兵、本木雅弘らの魅力が満載！
神戸を舞台にアマチュア探偵の活躍を描くハードボイルド作品
⑦［初HDテレシネ］『べっぴんの町』
レア度…★★★☆☆
少年院の元教官という異色の経歴を持ち、映画「サード」の原作者としても知られる作家・軒上の同名小説を、柴田の主演で映画化。失踪した少女の行方捜しに乗り出したアマチュア探偵が神戸の町を奔走するさまを、ハードボイルドタッチの中にも洒落たセンスを随所にちりばめながらファッショナブルに綴る。監督は、柴田主演の人気TVシリーズ「あぶない刑事」でも演出を手掛けた原隆仁。田中美佐子、本木雅弘、和久井映見、つみきみほらの若々しくてフレッシュな競演、そして震災前の神戸のさまざまな風景も見もの。
次は［初HDテレシネ］での登場となった柴田恭兵主演の作品『べっぴんの町』（’89）です。2024年に『帰ってきた あぶない刑事』でも変わらぬダンディさを見せてくれた彼が、神戸を舞台に素人探偵を演じます。かつて少年院の教官で、今は探偵をやっている男のもとに、宝石商の娘を捜す依頼が入ります。原隆仁監督は『夜逃げ屋本舗』（’92）シリーズが有名ですが、初期のテレビシリーズの『あぶない刑事』も監督していて、柴田恭兵の見せ方も十分心得ていたと思われます。画質が良くなっているはずなので、DVDを持っている人も要チェックですよ。
香港のアクションスター、ジャッキー・チェン黄金時代の3作品が登場！
最後は幾度となくリマスターされてきたジャッキー・チェン全盛期の3本です。最近ではあまり言われなくなっていますが、ジャッキー映画はかつて、お正月映画、春休み映画など、映画界が活気づく季節に決まって公開された定番の作品でした。
ジャッキーの名作が美麗な4K映像でよみがえる！
数々の伝説的アクションを披露した代表作の1本
⑧［4Kリマスター版］『ポリス・ストーリー 香港国際警察』
レア度…★★★☆☆
ジャッキーみずから最も愛着があると語る、《ポリス・ストーリー》シリーズの記念すべき第1作。1996年の「ファイナル・プロジェクト」まで計4本のシリーズに育っていく。複数の車がバラック小屋の集落を突っ切りながら、急坂を猛スピードで駆け降りる壮絶なカーチェイスや、デパートの吹き抜けの電飾ポールに、ジャッキーが生身で飛びついて華々しく火花を散らしながら一気に滑り降りるラストの活劇など、ジャッキー以外に出来ないアクションを満載。まさにこれ、全編クライマックスというべき大傑作だ。
まず［4Kリマスター版］で鮮やかに復活した『ポリス・ストーリー 香港国際警察』（’85）。公開は1985年の12月、お正月映画でした。大掛かりなスタントや、身体を張ったアクションは今見ても変わらない迫力です。従来のざらついた画質ではなく、新作のようにリマスターされているので、新たな発見もあるかもしれませんよ。
ジャッキーが全力で主演・監督などを担当！
伝説の時計台落下など、名シーンがめじろ押しの傑作
⑨［ニューHDリマスター版］『プロジェクトA』
レア度…★★★☆☆
それまでわが国では“B級”“キワモノ”のイメージが強かった香港映画を、一転してA級の娯楽映画として定着させた功績は計り知れない。20世紀初頭の香港を舞台に、互いに対立する水上警察と陸上警察が、そろって海賊軍団の討伐へ。自転車を使った中盤の活劇もすばらしく、ジャッキーとサモ・ハンやユン・ピョウの名トリオぶりも伝説的。日本での配収約17億円は公開年の年間第3位の大記録で、ジャッキー主演作としても現在までベストの成績だ。3年後には続編「プロジェクトA2 史上最大の標的」も作られた。
続いて日本では1984年2月に公開された大作『プロジェクトA』（’83）。ジャッキー・チェンと、サモ・ハン・キンポー、ユン・ピョウのゴールデントリオが揃った豪華な一本です。海軍警備隊のジャッキーが、海賊と戦う内容ですが、とにかく香港映画の枠を超えたスケールの大きな映像の連続で、飽きるところがありません。あまりにも有名なポールからジャッキーが落下する場面も必見です。
香港アクション界の三銃士ジャッキー＆サモ・ハン＆ユン・ピョウが再集結した名作
⑩［ニューHDリマスター版］『スパルタンX』
レア度…★★★☆☆
「プロジェクトA」はジャッキー中心だったが、本作ではやはり俳優としてもフィルムメーカーとしても活躍するサモ・ハン（当時はサモ・ハン・キンポーだったが後の渡米時に改名）が監督。ジャッキーら3人は幼いころ、同じ演劇学校《中国戯劇学院》に通い、7人グループ《七小福》で友情を深め合った仲。そんな彼らがスペイン現地ロケが見どころの本作では、遺産相続のトラブルに巻き込まれる親友トリオを楽しそうに好演。特に終盤、ジャッキーとB・ユキーデによる格闘場面はジャッキー史上有名な迫真の名場面だ。
3本目はやはりゴールデントリオが揃った『スパルタンX』（’84）。日本公開は1984年12月。お正月映画でした。監督はジャッキーの兄貴分サモ・ハンが務めています。見どころは何と言っても、ジャッキーと本物の格闘家ベニー・ユキーデとの対決。芝居を超えた肉体のぶつかり合いは、もう観ているこちらも大興奮でした。［ニューHDリマスター版］のクリアな画質でお楽しみください。
次回、2月号激レア映画もレアな映画が盛りだくさんです。
どうぞお楽しみに！
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トップ画像（クレジット）／『ポリス・ストーリー 香港国際警察』:Ⓒ 2010 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.
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