待望の舞台「パラサイト」が登場! 年明けの話題作「イザボー」、そして三谷幸喜「オデッサ」!! ステージ派なら押さえたい! 充実の4月-5月の必見舞台!
【Don't miss out! 4-5月のWOWOW舞台・番組5選】
①舞台「パラサイト」台本・演出:鄭義信 出演:古田新太 宮沢氷魚 伊藤沙莉 江口のりこ 4月6日(土)午後9:00
世界の映画賞を席巻した、映画『パラサイト 半地下の家族』('19)の舞台版。作品情報が発表されるとたちまち大きな話題を呼んでいたのを覚えています。映画と同じような宣伝ビジュアルにもわくわくしました。
映画は韓国が舞台でしたが、演劇版ではそれを1990年代の関西に置き換えています。
一日中日が差さないトタン屋根の集落で細々と暮らす金田一家。映画でソン・ガンホさんが演じた父役に古田新太さん、息子役に宮沢氷魚さん、その妹役に伊藤沙莉さん、そして母役に江口のりこさん。この金田家の面々が彼らの家とは対照的な豪邸(永井家)に<寄生(パラサイト)>していくのが物語の軸となります。なんでもない会話から永井家を満喫してしまうシーンまで4人の息ぴったりな演技は見ていて本当に楽しかったです。
永井家を演じるのは、山内圭哉さん、真木よう子さん、恒松祐里さん、その家政婦役にキムラ緑子さん、そしてこの舞台版オリジナルの登場人物にみのすけさん、と本当に豪華なキャスティングですね。私が劇場で拝見したのは2023年6月のことなのですが、キムラ緑子さんの演じるシーンはじめ、今でもよく思い出す場面が満載です!
本脚本独自の視点で描かれる大阪の風景は、池田ともゆきさんの美術と私も大ファンであるムーチョ村松さんの映像によって舞台上にリアルに浮かび上がります。小さな家、裕福な家、高さの異なる場所から見える街の違いに注目してください。「本当に一つの舞台上でこれらが転換されているのか!」と驚かれるのではないでしょうか。
演劇好きの私としてはやはり、台本・演出を鄭義信さん(『焼肉ドラゴン』ほか)が務めることに胸が高鳴りました。数々の心揺さぶる作品を送り出してきました。傷を背負ってもたくましく生きる人々のドラマには、鄭作品ならではの熱と希望に満ちたラストが待っているなと思っています。
舞台ならではの演出・仕掛けはほかにもたくさん。前半はかなり笑いの要素が強く、リズム感があるのですが、あることがきっかけで突然物語が急展開します。その瞬間の作り方はまさに舞台だからこそできる演出だと思いました。(その箇所で私はぎりぎり周りのお客さんの迷惑にならないレベルで息をのんでしまいました)。
先が読めないもう一つの“半地下の家族”の物語。笑いとスリルをお楽しみください!
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②ミュージカル『イザボー』主演:望海風斗 作・演出:末満健一
4月20日(土)午後8:30
フランスの“最悪の王妃”と称された、イザボー・ド・バヴィエールの生きざまを描くミュージカルです。百年戦争の時代。フランスを破綻寸前にまで陥れたといわれる伝説の王妃役を望海風斗さんが演じることで注目を集めていた一作です。本作を語る上で強調したいのはやはり“オリジナルミュージカルである”ということです。
ワタナベエンターテインメントさんと、舞台『刀剣乱舞』などを手掛けてきた劇作家・末満健一さんがタッグを組み、日本発のオリジナルミュージカルを送り出すプロジェクト「MOJOプロジェクト -Musicals of Japan Origin project-」の第1弾となります。「オリジナル作品で百年戦争中のフランスを描くとは! 早く見たい、気になる!」とうずうずしたのを覚えています。
圧巻でした。イザボーがバイエルン大公の娘としてフランスにやって来た頃の純粋無垢な少女時代から“最悪の王妃”となっていった生きざまを描きます。夫であるシャルル6世が狂気に陥ってしまったのをきっかけに、混沌とした権力争いのフランスで愛と衝動のままに生き抜くことを決意するイザボー。見る側はイザボーの内面に触れていくことになるのですが、望海さんの圧巻の歌唱力と表現力によって心揺さぶられ、イザボーが“最悪の王妃”となった本当の理由を考えさせられました。
イザボーの実の息子シャルル7世役を甲斐翔真さんが演じ、母の愛が信じられず苦悩する姿にも大変説得力があって一層ドラマに引き込まれます。さらに上原理生さん、中河内雅貴さん、上川一哉さん、那須凜さん、石井一孝さんら豪華キャストが名を連ねています。
私は一度拝見しただけで楽曲のとりこになりました。ロック調でありながらフランスの激動を象徴するようなダイナミックなメロディー、歌詞、強いコーラス。観劇後も頭の中でいくつものフレーズが繰り返されていました。そして、アンサンブルのムーブメントとセットが楽曲中にシンクロしてスケールをもたらしています。この時代のフランスを象徴するあの少女の描き方も秀逸です。激しさや愛憎の色が強いのかなと想像される方も多いかもしれませんが、はかなく美しい瞬間もたくさんある舞台です。
今年1月から2月にかけて東京・大阪で上演され、連日大盛況となった話題作。望海風斗さんと甲斐翔真さんの貴重なインタビューもお届けします。ご注目ください!
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4月は、「『友達』鈴木浩介×有村架純×林遣都 作:安部公房 演出:加藤拓也」(4月2日(火)午後9:00)や、「望海風斗 20th Anniversary ドラマティックコンサート『Look at Me』」(4月20日(土)午後6:15)など、リピート放送作品も充実しています!
③三谷幸喜「オデッサ」 5月放送・配信予定
今年の観劇初めはこの1本でした。三谷幸喜さんによる約3年半ぶりの書き下ろしの新作舞台。
出演の柿澤勇人さん、宮澤エマさん、迫田孝也さんに当てて書かれたそうです。3人とも「鎌倉殿の13人」をはじめ、舞台・映像での活躍が目覚ましく、今回はどんなキャラクターを見せるのか気になりますよね!
アメリカ・テキサス州のオデッサを舞台にした“男と女と通訳の会話バトル”。英語を話せない日本人旅行者の児島(迫田孝也さん)が、ある殺人事件の容疑者として拘束されます。日系アメリカ人のカチンスキー警部(宮澤エマさん)は、留学中の日本人青年・スティーブ日高(柿澤勇人さん)を通訳にして取り調べを始めますが、スティーブと児島はどちらも鹿児島出身ということで意気投合。さて、観客が爆笑の渦に巻き込まれていくのは、ある理由でスティーブが通訳する話の内容を意図的に変え始めるところから。会話がどんどん擦れ違っていき、通訳されている側も違和感を覚えてくる、この面白さは本作の真骨頂といえるでしょう。
さらに注目していただきたいのは舞台の背景に出る字幕の存在です。ただ日本語訳が表示されているのとは違って、スピーディーな日本語・英語のやり取りの間を縫って小気味よく言葉を出してくる感じで、字幕が加わって本当の意味でほかで見たことがない、本作だけが織り成す画とリズムが最高点に。スティーブが、発想と瞬発力で通訳内容を変えようと奮闘する姿は、コミカルなだけでなく、彼のパーソルな部分も見えてくるようでした。柿澤さんの演技は何度見ても表現の深さの発見があると思いました。
宮澤さんは、カチンスキー警部の真面目さとチャーミングさを、せりふとリアクションの軽快な切り替えで表現し、舞台に一層の明るさを加えていました。迫田さんは、迫田さんならではのえたいの知れない人物像の作り込みが秀逸で、良い意味で最後まで「この人何者なんだろう」と心がザワザワさせられました。
三谷さんが巧みに張り巡らせた「言葉」の罠。丁々発止の会話の先にどんな真実が待つのか? ご注目ください!
【WOWOW舞台全一覧】
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【終わりに】
年が明けてからこの私が(笑!)あまり劇場に行けておりません。行きたい気持ちは山々なのですが…。コロナ禍でもそうでしたが、舞台を見たいのに劇場に行けないときはどうするか。私の場合、まずはWOWOWで放送・配信されているステージを見ます!3月は「世界演劇の日!名作演劇アンコール月間」をやっています。次にミュージカルの楽曲を聞きます。最近のお気に入りは「Six The Musical」。あとは、舞台を作る方々の言葉や舞台制作の裏側に思いをはせるのもいいですね。インタビュー記事を読んだり、稽古場や初日レポートの類いを楽しんだり。あと、忘れてはいけないのはチラシ鑑賞ですね(鑑賞?(笑))。これから行きたい作品や宣伝ビジュアルに心を躍らせるのは大好きな時間です。
今月ももう一度見たい作品がある皆さまも、劇場に見に行けなかった作品がある皆さまも、WOWOWステージをお楽しみいただければ幸いです。
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