いつだって誰かのうれしいことをうれしいって思える人間でいたい――西島秀俊と内野聖陽W主演の『劇場版「きのう何食べた?」』を観てスピードワゴン・小沢一敬が心撃ち抜かれたセリフとは?
(※初回放送 12/16(土)後8:00、以降リピート放送あり)
取材・文=八木賢太郎 @yagi_ken
──今回は、人気漫画を原作にしたTVドラマの続編として映画化された作品ですが。小沢さんは、原作やTVドラマをご覧になったことは?
小沢一敬(以下、小沢)「いや、どっちも知らなくて。だから、まったく何も知らない状態でこの映画を観させてもらったんだけど、ちょっと驚いたのは、何の予備知識もなく観たのに、最初のシーンの会話だけで物語の設定が全て理解できたのよ」
──最初に、シロさん(西島秀俊)がケンジ(内野聖陽)を京都旅行へ誘うシーンですね。
小沢「あれ、すっごい良くできてるなって思ったよ。予備知識のない俺でも、すんなり物語の世界に入り込めたから。あと、コロナ禍の頃から、俺も料理を始めたんだけどさ、この作品は料理の場面も一つの見どころみたいで、いろんなレシピが出てくるじゃん。それがどれもおいしそうだから、自分でも作ってみたくなったよね。ドラマでも毎回、料理が出てくるの?」
──出てきますね。
小沢「漫画でも?」
──漫画の方が毎回、詳しいレシピが出てきます。
小沢「あ、『クッキングパパ』システムね(笑)」
──そもそも、『クッキングパパ』と同じ、漫画雑誌のモーニングで連載されています。
小沢「えっ? モーニングって、今はレシピ本になっちゃったの?(笑)」
──いやいや、ちゃんと恋愛ものもありますし、サッカーもやってるし、宇宙にも行ってますよ。
小沢「あ、『宇宙兄弟』やってるもんね」
──島耕作さんも元気でやってます。
小沢「そうか。とにかく、そういう料理の場面も含めて、この作品って、映画館で観る作品ではあるんだけど、あんまり『映画を観るぞ!』って構えなくても観られるライトな作品だよね。だから、これはおべんちゃらで言うわけじゃなくて、マジで家のリビングで、WOWOWで観るのにちょうどいいよ」
──(笑)でも、確かにそうかもしれませんね。
小沢「もちろん映画館で観たら、また違った面白さがあるんだろうけど、かといって、大スクリーンじゃないと迫力が伝わらない、という映画でもないからね。何にも予定がない休日の午後とかに、家でぼんやりしながら観るのにちょうどいいなって。だってさ、これは悪い意味で捉えないでほしいんだけど、観逃しちゃいけない場面がほぼない映画だもんね(笑)」
──そうですね。ちょっと目を離すと話が分からなくなる、とかではない。
小沢「それでいて、たまに耳に飛び込んでくるささいなセリフが、意外と真理に触れかけていて、『あ〜、そうだよな。世の中ってそういうもんだよな』って思わせてくれる。我々が普段、誰かと話してても似たようなことがあるじゃん。友達とか先輩と昼飯を食ってるときなんかに、何げなくしゃべった会話が真理に触れかけてること。そういうのを意識して作ってるとしたら、すごいよね」
──だからこそ、多くのファンに愛されてるっていう部分もあると思いますよ。
小沢「そうかもしれないね。あと一つ思ったことは、俺ね、たまに自分の周りの人たちを芸能人に置き換えて想像することがあるのよ。誰と誰が顔が似てるかって。例えば、相方の(井戸田)潤は、めちゃくちゃいい方向に想像すると、山田孝之君で」
──そう言われれば、顔の系統は近いかもしれません。
小沢「なんとなく分かるでしょ? で、それで言うと、徳井(義実)君は西島秀俊さんなのよ。徳井君と西島さん、俺はマジで似てると思う。で、これは男性カップルのシェアハウスの物語だけど、俺と徳井君もコロナ禍で解消するまでシェアハウスをしてたから、映画を観ながら、ちょっと気づいたことがあって。『えっ? ひょっとして俺たちも、外から見たら、こう見えてたの?』って(笑)」
──もちろん、小沢さんたちが恋愛関係じゃないことは分かってますけど、ファンの人たちはお2人の仲の良さを、この作品のシロさんとケンジを見るのと同じように、ほっこりした気分で見つめてるとは思いますよ。
小沢「でもさ、物語の中で彼らなりの悩みみたいな部分も多く語られてるけど、こういう作品が漫画とかドラマとか映画とかで作られることによって、彼らと同じような悩みを抱えてる人たちの心が少し軽くなったりしたらいいなって思うよね。この作品が愛されることで、あの2人の恋愛の形も当たり前のことなんだって、みんなが思ってくれるようになるだろうし」
──そうなってくれたら、一番いいですね。
小沢「あと、この作品は、自分が好きな人と一緒に年を取っていく素晴らしさを描いているでしょ。昔、先輩の土田(晃之)さんが、『結婚のいいところは、大好きな人の年取った顔を見られるところだ』って言ってて。俺はこの言葉がすごい好きなんだけど、この映画を観ながらそれを思い出したよ。世間では『おじさんたちは、年を取っても若い女の子が好きだ』って勝手に思われてるけど、本当に好きな人だったら年を重ねていく顔も見たいはずなのよ。そういう意味で、こういう年を取ったカップルの物語を作ってくれるのはうれしいよね」
──小沢さん自身のこれから先、老後のイメージなんてあるんですか?
小沢「まあ、ぼんやりと考えてる理想はあるよ。例えば、友達みんなで大きな家を借りて、老人ホームじゃないけど、それぞれの家族も含めて大勢で一緒に住めたら楽しいだろうな、とか。でも、そんなのきっと実現しないから」
──やっぱり、そこもシェアハウスの思想なんですね。パートナーと一緒に年を取る、とかじゃなくて。
小沢「そうだね。俺は15歳の頃から先輩と一緒に暮らしてるから。家に帰ってきたときに、そこに友達とか仲間がいるのが理想で。それがパートナーだと、なんか気が重いのよ。気楽に帰れないというか。それは俺が悪いんだけど、パートナーには機嫌が悪かったり落ち込んでたりする姿を見せたくないって思っちゃう。でも、友達だったらそれを見せてもいいって思えるから」
──なんだか、本当に一生結婚しなさそうですね、小沢さん。
小沢「そうねぇ。俺も、18歳ぐらい年下の人と結婚したい……(笑)」
──さっきと言ってることが全然違うので、この辺で、今回の作品の中から小沢さんが一番シビれた名セリフを選んでいただきましょう。
<※ここから先はネタバレを含みますのでご注意ください>
小沢「そうね。とにかく、何げなく真理に触れかけてるようないいセリフがたくさんあったけど、俺が一番共感したというか、すごくいいなって思ったのは、『好きって、そんなに重要ですか?』」
──松村北斗さん演じる田渕が、ケンジに「(別れた恋人のことを)好きじゃなかったの?」と聞かれた時に言うセリフですね。
小沢「自分の周りにいる友達のこととかって、いちいち好きかどうかなんて考えてないじゃん。きっと、パートナーに対する愛情っていうのも、そういうことなのかもなって。好きとか嫌いとかっていうことを超越したときに、本当の意味で特別な存在になれるというか。『あの子のことをホントに好きなの?』みたいな会話になるのは、結局、恋の始まりのときの話なんだよね。もちろん、長年連れ添った夫婦だってお互いのことは好きなんだけど、好きだってことが当たり前だから、実は重要なことではないというか」
──好きかどうかにとらわれてるうちは、まだまだだと。
小沢「そうなんじゃないかと思うよね。それから、わりと大事なセリフだなって思ったのが、『誰かのうれしいことっていうのは、やっぱりうれしいじゃない』」
──これは、ご近所の佳代子さん(田中美佐子)に孫ができた話をみんなが喜んでいるのを理解できない航(磯村勇斗)に対し、ケンジが言うセリフですね。
小沢「意外とこの言葉って、みんなも感覚としては理解してるし、本当はこう思って生きていかなきゃいけないはずなのに、でも実際は、誰かのうれしいことに対して文句を言う人が多過ぎるでしょ。年の差婚をしたカップルの話とかにしてもさ。嫉妬なのか何なのか、別にたたく必要ないし、ただ祝福してあげればいいだけなのにね」
──このセリフは、すごく小沢さんっぽいセリフだなぁって思いましたよ。
小沢「あ、ホント? 確かに、俺はこうありたいと思ってるよ。いつだって誰かのうれしいことをうれしいって思える人間でいたいから」
──人間、なかなかそれができないことも多いんですけどね。
小沢「そういえば、シロさんが『俺にとって一番大切な人と、正月を過ごしたいよ』って言うセリフがあったけどさ、俺、振り返ってみたら、もう10年以上も続けて、徳井君と一緒に正月を過ごしてるんだよね(笑)」
──結局、そこに行き着く!? なんか、本当に小沢さんと徳井さんがシロさんとケンジに見えてきちゃいそうですけど。
小沢「まあ、俺は一度も徳井君の布団に入っていったことはないんだけど、俺が寝てるところに、泥酔した徳井君が『オザ〜』って言いながら入ろうとしてきたことはあったから、完全に否定もできない(笑)」
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クレジット: (C)2021 劇場版「きのう何食べた?」製作委員会 (C)よしながふみ/講談社