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玉置浩二の最新ツアーファイナルとなった東京ガーデンシアター公演。玉置の圧巻の歌声と総勢14人の演奏家たちが織り成す豊潤なサウンドに乗せて贈られた“大切なもの”とは。

「WOWOW MUSIC MAGAZINE」では、WOWOWで放送・配信するライブの模様やインタビュー記事などを紹介!今回は1⽉1日(水・祝)午後8時~WOWOWで放送・配信となる、11月14日(木)に東京ガーデンシアターで行なわれた「玉置浩二 Concert Tour 2024 Resume ~レジューム新たな始まり」ファイナル公演のライブレポートをお届け。

 近年、様々なスタイルで精力的にコンサート活動を続けている玉置浩二。交響楽団とのシンフォニックコンサート、夏から秋にかけて展開されるホールツアー、年末の全国クリスマスディナーショー。四季を通じて、至高の歌声を届ける彼の姿がある。コロナ禍を経てツアーを再開した2021年以降、歌うために生きる彼がステージに臨む姿勢は更に厳粛なものとなり、各地で大きな感動が生まれている。
 
 今年も、8月から11月にかけて開催された全27か所36公演のホールツアー。そのフィナーレを飾ったのは、東京ガーデンシアター。最終日となった11月14日、満場の客席から放たれる熱気は渦となって初冬の寒さを吹き飛ばしていた。
 
 定刻に合わせて場内が暗転すると、拍手が沸き起こる。舞台が整い、インストゥルメンタルナンバー「あこがれ」が始まりを告げる。聴き手の琴線に触れる旋律が丁寧に紡がれ、内なる郷愁へと誘(いざな)う。緊張と高揚がそっとほぐされた頃合いに、玉置浩二が慈しみにあふれた表情で上手から登場する。
 
 歌われたのは、1994年発表のアルバム『LOVE SONG BLUE』ラストナンバー「星になりたい」。総勢14人の演奏家たちが織り成すアンサンブルはどこまでも優しく、囁くような歌を包む。
 
 ハーモニカの音色が柔らかくあたたかな「キラキラ ニコニコ」は1993年発表アルバム『カリント工場の煙突の上に』収録曲。大切にしたためられた手紙を受け取るかのような、深い感慨が沸き上がる。万感がこみあげてくるのだろうか。玉置のフェイクがはやくも繰り出される。
 
 続く「出逢い」は、2002年に安全地帯名義でリリースしたシングル曲。この夜のために特別に編成された8人のストリングスが、ブリッジとコーダで味わいのある余韻を加えていく。バイオリン:藤堂昌彦、吉田宇宙、森本安弘、名倉主。ヴィオラ:金孝珍、亀井友莉。チェロ:稲本有彩、広田勇樹。豪華な顔触れによる厳かな諧調(かいちょう)が実に見事だ。
 
 「瞳の中の虹」ではリバーブが加えられた歌声が残響となって、聴衆の胸懐に染み込んでいく。パーカッションの中北裕子は様々な打楽器で絶妙なアクセントを加えていく。彼女のウインドチャイムは鳥のさえずりのようでもあり、人生の機微をなぞる風のようだ。玉置とトオミヨウが歌とキーボードで心を合わせた「明かりの灯るところへ」では、福音のような門田 "JAW" 晃介のサキソフォンが暗闇に光を照らす。
 
 “相棒”を意味する「aibo」は近年のステージではお馴染みとも言える1曲。静かな歌い出しに千ヶ崎学のベースが加わり、力強いリズムが刻まれる。間奏での秋山浩徳のギターと佐野聡のトロンボーンのユニゾンは、重なり合う感情の彩りを描いているようで震える程に素晴らしかった。コンサート前半のラストを飾った「ぼくらは...」は、1998年発表のアルバム『GRAND LOVE』収録曲。この曲は「ぼくは君と」ではなく、「ぼくらは君と」と歌われる。地球を、人類全体を俯瞰するような玉置の“大きな視点”が伝わる楽曲だ。歌い終えた彼は噛み締めるような表情で、上手袖からゆっくりと捌けていった。
 
 約20年の休憩時間をはさんで始まった後半。Interludeからの流れで、安全地帯の「なにもない海へ」が披露される。新たな航路に旅立つ決意表明の歌が、現在の彼の眼差しとオーバーラップする。続く「サーチライト」は2013年に発表された珠玉のバラード。玉置はひとりひとりの“君”に向かって手を伸べ、魂の限り歌い上げる。振り絞るようなスキャットから放たれたのは、あふれ出る想いだった。
 
 メンバー紹介で最強の布陣とひとりずつ絆を確かめ合った後、紡がれたのは「悲しみにさよなら」。「愛を世界の平和のために」と歌う姿を見て、彼が安全地帯というバンド名に託した原点に思いを馳せた。半世紀経っても変わることのない“初志”とオーディエンスとの“約束”がとても尊かった。
 
 圧巻は、玉置のシャウトで始まった「JUNK LAND」だった。研ぎ澄まされたコトバを速射砲のように放つ彼と、複雑な構成の楽曲を見事なアンサンブルで展開していくバンドの加速するダイナミズム。音楽家・玉置浩二の真髄とも言える名演だった。
 
 続く「田園」は言わずと知れた代表曲のひとつ。場内は総立ちとなり、生への賛歌に身を委ねていく。「愛はここにある。有明にある」という投げ掛けに、全員が大歓声で応える。ギターを刻みながら歌う玉置の嬉しそうな表情もまた印象的だった。会場のボルテージがピークに達した後、本編最後は「メロディー」。呟くような立ち上がりから、ロングトーンシャウトを経て、マイク無しで会場の隅々まで歌声を響かせる玉置。賞賛の拍手はいつまでも鳴り止まなかった。
 
 8,000人の熱い思いを全身で受け止めたアンコール。玉置は心を込めて「夏の終りのハーモニー」を歌う。時代を超えて眩い煌めきを放つアンセムを歌い上げた玉置は、バンドメンバーと共に大観衆のエールにいつまでも手を振っていた。純度の高い魂の交感。その光景は荘厳で美しかった。

 終演後、深く感じ入ったのは、ツアータイトルの「Resume」。日本語で「再開」という意味だ。玉置浩二はひとりひとりの聴き手と向き合い、メロディーを紡ぎ、言葉をしたため、歌にすべてを託そうとしている。彼の活動の軌跡と表裏一体をなすのは、圧倒的なストイシズムだ。自らを研ぎ澄ますその一方で、サウンドはますます豊潤さを増している。その中に、また新たな出発点に立つ玉置が伝えようとしている、“大切なもの”があるのだろう。帰路に向かう人々の澄み渡る笑顔が証していた。そこには、極上の音楽に乗せて贈られた“かけがえのない愛”が確かにあった。

▼番組情報
玉置浩二 Concert Tour 2024 Resume ~レジューム 新たな始まり

2025年1⽉1日(水・祝)午後8時~ 放送・配信
WOWOWライブで放送/WOWOWオンデマンドで配信
WOWOWオンデマンドでは1月2日(木)午前0:00~14日間アーカイブ配信

▼番組公式サイト

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