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日本のヴォーカル・グループのパイオニア、ゴスペラーズ。メジャーデビュー30周年を目前に控えた彼らが昨年行った最新全国ツアーの中から、東京国際フォーラム ホールAでの公演をレポート!

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今回は2月11日(日・祝)午後10:00よりWOWOWで独占放送・配信する、ゴスペラーズ坂ツアー2023 “HERE & NOW”のライブレポートをお届け。

 1994年12月21日、シングル「Promise」でメジャーデビューしたゴスペラーズ。30周年アニバーサリー前夜となる昨年は、ゆかりのあるアーティストたちの提供楽曲を収録したEP『HERE & NOW』をリリース。独自の“目利き”による新しい世代とのコラボレーションで、新境地を切り拓いた。
 
 9月からは同名タイトルのツアーを開始。新型コロナウイルス感染症ガイドラインが廃止され、客席での声出しも解禁された。全国31都市をまわり、計33公演。彼らは各地で圧巻の歌声を披露した。

 北風が本格的な冬の到来を告げた12月8日。彼らにとってホームグラウンドとも言える東京国際フォーラム ホールAで、本ツアーでは2度目となる同所での公演が開催された。満場の5千人の期待の渦が大きな熱気となって、開演前から外の寒さを吹き飛ばすほどのテンションだった。
 
 定刻が過ぎ、バンドの演奏からコンサートがスタート。奏でられる骨太なリズムに乗って、メンバー5人が颯爽と舞台に登場する。1曲目はYUUKI SANOが提供したラテン調の「Mi Amorcito」。白いジャケットとパンツ、黒と白を基調としたデザインの異なるインナーを着た彼らは、ステージ狭しとそれぞれに跳ね回る。
 
 絶妙に歌と動きを押し引きしつつ続けられたのは、誰ものハートを撃ち抜く「ポーカーフェイス」。妖艶な歌にサックスソロが彩りを加えていく。花言葉でありカクテルの名前でもある「ミモザ」では、黒沢 薫の突き抜けるハイトーンヴォイスにキーボードのフレーズも重なり、冒頭から会場を陶酔させる。

 最初のMCで久方ぶりにオーディエンスとのコール&レスポンスを分かち合い、再び『HERE & NOW』から「アフタースランバー」へ。北山陽一の純度の高いクリアヴォイスと安岡 優のビブラートするメロウなヴォーカル。現役高校生ボカロPである晴いちばん作詞作曲編曲のナンバーが、その魅力を存分に引き出す。

 新たな夏の定番曲「Summer Breeze」は、Penthouseの浪岡真太郎と大島真帆がグループのひと味違う魅力を引き出した楽曲。間奏のギターソロとサビでの酒井雄二のリフレインが、聴衆を夏へと誘(いざな)う。

 現在のサウンドを満喫した後は、時を巻き戻して歴史を紐解いていく。ブレイクのきっかけとなったラブソング「永遠(とわ)に」では、5人の歌声を支えるバンドの演奏と共に極上の音楽空間が創出される。そして、アカペラで披露された「ひとり」では、村上てつやのソウルフルなリードヴォーカルとファルセットに4人のコーラスが寄り添う。“熱唱”を超えた“絶唱”に、ただただ酔いしれるばかりだ。

 しばしの休憩を挟み、「Grand Beatbox Battle 2023」クルー部門でグランドチャンピオンに輝いたばかりのSARUKANIとスリリングに「XvoiceZ feat.SARUKANI」をセッションする。SARUKANIのBEATBOXを紹介した後、2020年に実施した「アカペラ楽曲の一般公募」から新たに選出した「Asterism」を歌う。書道家としても活動する市川舞子が星をメンバーひとりひとりに、そして色も性質も異なる星が形作る星座をゴスペラーズというグループに重ねた瑞々しいメロディの佳曲だ。
 
 イントロから観衆と大合唱で分かち合った「Vol.」からは、灼熱の後半戦へ。グルーヴィーな「MOVIE☆STAR」では卓越した技量を持つバンドのソロプレイもフィーチャーし、国際フォーラムが熱狂のディスコ空間と化す。続く「愛の歌」ではステージと客席がお互いのあふれるエモーションを交感する。誰もが満面の笑顔で手を振り続ける、その姿が印象的だった。「多幸感」という言葉は、この瞬間のためにあると感じた。コロナ禍が明けて、久しぶりに体感した“LaLaLa 聞かせて”の大合唱には、心が震え涙腺が緩むのを止めることが出来なかった。

 たくさんの感謝の気持ちを言葉に託し、歌で届けた「約束の季節」。「約束」という言葉の尊さと愛しさ。言葉だけでは伝えることが出来ない大切な何かを心に届けてくれる。それが彼らの歌だ。
 
 切なさを抱き締めるようなラブソング「コーリング」を経て、最後に歌われたのは「星屑の街」。5人の歌声はいつでも、天から街を照らす星のように日常の暮らしを優しく見守ってくれる。熱いスタンディングオベーションを見つめながら、そんな感慨に浸っていた。
 
 アニバーサリー前夜に開催された今回のツアーでは、若手アーティストとのコラボレーションによる新しい姿と、これまでに刻んで来た軌跡とが見事に繋がっていた。「今、此処にあるゴスペラーズ」を提示し、現在・過去そして未来を感じさせてくれる見事なセットリストだった。

 最新EP収録曲にも活動初期に発表されたナンバーにも、一本通じる確かなものがある。それは、時代を共に生きる者たちへの“エール”だ。それこそが、彼らの音楽の変わらない本質なのだろう。
 
 2024年12月20日・21日に日本武道館、2025年1月13日は大阪城ホールにて「ゴスペラーズ 30周年記念祭」を開催することも発表された。常に次の未来へと向かうその姿勢に、励まされる人も多いことだろう。その至極の歌と共に、日々を前に進んでいこう。彼らの“ゴスペル”は踏み出すその一歩を祝福し、見えない勇気を与えてくれる。帰路に向かう人々の澄み渡る笑顔が、全てを物語っているように思えてならなかった。

<番組情報>
ゴスペラーズ坂ツアー2023 “HERE & NOW”
2月11日(日・祝)午後10:00[WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
※放送終了翌日~2週間WOWOWオンデマンドでアーカイブ配信あり

収録日:2023年12月8日
収録場所:東京 東京国際フォーラム ホールA

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