【4月の激レア映画!】松田優作主演『蘇える金狼』『野獣死すべし』『探偵物語』の4Kリマスター版ほか、廃盤・未ソフト化など貴重な映画を“レア度”とともにご紹介!
文=飯塚克味
【4月の激レア映画10作品】
①[廃盤]『教祖誕生』
★レア度…★★★☆☆
まず[廃盤]作品で紹介したいのが、ビートたけしの小説を映画化した1993年の風刺コメディ『教祖誕生』。新興宗教の布教活動に興味本位で加わることになった青年が主人公です。リアルタイムで観ていない人には、少し分かりづらいかもしれませんが、当時はかなりこうした出来事が社会問題化していました。そこにビートたけしが目を付けたという訳です。映画では新興宗教に対する皮肉やその組織的な裏の顔も描いていて、当時は危ない内容ながらも、よく映画化されたなと思ったものです。しかし事態はその後、深刻化し、1995年に地下鉄サリン事件が起きてしまいます。そのため、一時期、封印的な位置に置かれていた作品でもあります。社会的背景を知った上で、ご覧いただきたいと思います。
②[廃盤]『幸せの1ページ』
★レア度…★★★☆☆
次に紹介する[廃盤]作品は、当時『リトル・ミス・サンシャイン』('06)でアカデミー賞にノミネートされ大注目となった、アビゲイル・ブレスリンと、ジョディ・フォスター、ジェラルド・バトラーが共演した『幸せの1ページ』です。アドベンチャー物のベストセラー作家アレクサンドラが、孤島に住む海洋生物学者ジャックに興味を持ち、コンタクトを取ろうとするメールを送ります。そんな折、ジャックの船が難破してしまいます。偶然そのメールを見た彼の娘ニムは、アレクサンドラに助けを求めるというもの。ファミリー向けなので、安心して見られる点も強みです。
③[廃盤]『ミシェル・ヴァイヨン』
★レア度…★★★☆☆
次の作品は最新作『DOGMAN ドッグマン』('23)で再評価されているリュック・ベッソンが製作したレース映画で、[廃盤]となっている『ミシェル・ヴァイヨン』。原作はフランス発のコミックで、1957年に始まって、現時点で70巻、シーズン2が13巻まで続いている大ベストセラー小説(映画化の時点では64巻)。
監督作、プロデュース作が非常に多いリュック・ベッソンですが、その特徴は何といっても、分かりやすさ。エンタメ精神満載で、本作も頭を空っぽにして楽しむにはうってつけの1本になっています。映像面では2002年のル・マン24時間レースに2台のレーシングカーを出場させ、車載カメラで臨場感あふれる映像を撮影したことも話題になりました。ブレイク前のダイアン・クルーガーも出ているので、チェックすると楽しさ倍増かも。
④[廃盤]『ロスト・メモリーズ』
★レア度…★★★★☆
最後の[廃盤]タイトルはこちら。『シュリ』('99)で大革命を起こした韓国映画界が、2002年に放ったタイムスリップアクション『ロスト・メモリーズ』。
主演はチャン・ドンゴンと仲村トオル。架空の世界が舞台で、そこでは1909年の伊藤博文の暗殺が失敗し、原爆はベルリンに投下。そして日本による朝鮮半島の支配が続いていたという設定です。100年後の2009年、歴史に秘められた真相に2人の捜査官が挑みます。日本人ならつい尻込みしてしまいそうな内容ですが、そんなむちゃな話を力づくで成立させるのが韓国映画の今につながっているといえるでしょう。この映画、音響もすばらしいので、サウンドバーなどでお聴きの皆さまは、ぜひボリューム大きめでお楽しみください。
⑤[未ソフト化]『ファルコン・レイク』
★レア度…★★★★☆
続いてここからは、DVDにもなっていない[未ソフト化]の作品を紹介します。まずはこちらの『ファルコン・レイク』。
フランスからカナダ・ケベックの湖畔にやって来た少年が3歳年上の少女の誘惑を受ける青春映画で、この手の映画はいつの時代も変わらず、甘酸っぱく、みずみずしいものを感じさせてくれます。バカンス先で、もうすぐ14歳になる少年が、16歳のちょっと年上のお姉さんと同室で過ごすことになるって…出来過ぎな設定にも思えますが、これが割と自然に感じられるのが監督のうまいところです。監督はカナダ出身の女優シャルロット・ル・ボンで、脚本も務めています。長編初監督作品ですが、質感を重視するため16ミリフィルムで撮影したことも特筆すべきでしょう。フレームサイズもスタンダードになっています。
⑥[未ソフト化]『理想郷』
★レア度…★★★★☆
次の[未ソフト化]のタイトルは東京国際映画祭でグランプリを含む3部門を受賞した心理スリラー『理想郷』。
スペインの田舎町で暮らすようになったフランス人夫婦が、地元の人々と衝突し、悲劇に見舞われます。この映画、最初は人間関係も何もよく分からないまま始まり、次第に彼らの内情が明らかになっていくのですが、ずーっと緊張感が持続して、ゾクゾクするような怖さを味わわせてくれるんです。都会の人々が憧れるスローな田舎暮らしと、その田舎で不便な中、苦労しながら暮らしている人々とのあつれきが見事に表出していきます。日本でも、都会から田舎へ移住したが近所付き合いがうまくいかなかったというような失敗談をよくニュースで目にしますが、本当にありそうなところがこの映画の見事な着眼点でしょう。タイトルの『理想郷』も、よくぞ付けたというセンスの良さです。
⑦[4Kリマスター版]『蘇える金狼(1979)』⑧『野獣死すべし(1980)』⑨『探偵物語(1983)』
★レア度…★★★★★
次は[4Kリマスター版]で復活した松田優作主演の3作品。
『蘇える金狼(1979)』と『野獣死すべし(1980)』のハードボイルド2作品は、松田優作の人気が映画でも不動のものであることを証明しました。監督はどちらも村川透。『最も危険な遊戯』('78)など、数々の映画やドラマなどでコンビを組んできただけに、松田優作の魅力を存分に引き出しています。角川映画の戦略の一つでもあった音楽も印象的でした。
一方で1983年公開の『探偵物語(1983)』は一転して、ライトなロマンティックコメディ。トレードマークだった長髪を切ってイメージを一新した松田優作が、当時人気絶頂だった薬師丸ひろ子を相手にドジな探偵を演じています。大きな身長差があったことで、キスシーンもファン必見です。
さらに、松田優作の死去から1年後の1990年に彼をしのんで、原田芳雄、水谷豊、桃井かおりら豪華多彩な仲間たちが開催した一夜限りの幻のライブの模様を収録した「CLUB DEJA-VU ONE NIGHT SHOW 松田優作・メモリアル・ライブ」と、松田優作と深い関わりのあった友人たちが、長年の歳月を経て改めて彼の魅力と素顔を崔洋一監督に語り明かした貴重なドキュメンタリー「優作について私が知っている二、三の事柄」もWOWOWで初放送!
松田優作の生誕75周年を記念した特集「生誕75周年:永遠のカリスマ 松田優作」で放送、WOWOWオンデマンドで配信されます。(※放送同時配信)
監督は2作品とも2022年に他界した崔洋一です。助監督時代から松田優作が亡くなるまで13年間、交流があっただけに密度の濃い出来となっています。WOWOW初放送となる2作品も併せて特集と一緒に観ていただきたいですね。
⑩[4Kリマスター版]『ルージュ(1987)』
★レア度…★★★☆☆
最後の作品はアニタ・ムイとレスリー・チャンという、どちらも夭逝してしまった2大スターが共演したファンタジック・ラブストーリー『ルージュ(1987)』。
1930年代の香港で心中してしまった芸妓ユーファと良家の御曹司チャン。50年後、ユーファは幽霊となってよみがえり、あの世で出会えなかったチャンを捜し始めます。何とも切なく悲しい話で、主演2人の魅力が際立っています。日本では東京国際ファンタスティック映画祭’88で上映され、私はその時に鑑賞しました。[4Kリマスター版]で放送される今回はフィルムの傷などが除去され、色彩もオリジナルと変わらない美麗なマスターになっています。公開当時と変わらず感動できるクオリティーなので、ぜひ、保存用に録画必須です!
次回、5月号激レア映画もレアな映画が盛りだくさんです。
どうぞお楽しみに!
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