ファッション大好きだけどダサい僕をとりこにしたデザイナーたちの華麗なる“デスゲーム”【#エンタメ視聴体験記/中山功太】
文=中山功太
僕にはファッションセンスがない。
おそらく芸人でもトップクラスのダサさだと思う。
僕の事を知って下さっている読者に「いやいや、そんな事ないですよ」と言って欲しいから書いてる訳ではなく、正式にダサい。色や柄の組み合わせもわからないし、流行にも疎い。
面倒臭いからという理由だけで、10年前からパンツの裾直しもやめた。
ではファッションに興味がないのかと言われるとそうではなく、服も靴もめちゃくちゃ好きだ。
多分、オシャレな人と同じぐらいか、それ以上に好きだ。
ネットで調べて見る事はもちろん、直接好きなブランドのショップに足を運んで、手を後ろに組んで見て回る時もある。
僕はまるで絵画を目で愛でる様に服を楽しむ。
その時の顔は真剣そのもので、片方の口角だけを上げたベジータ顔でアイテムを全角度から見たり、眉間にシワを寄せて値札をたぐり寄せて価格に驚愕したり、斬新なデザインのグッズを見つけては初孫を見守る様な笑みをこぼしたりしている。
矛盾しているのだが、それをしている時に僕が着ている服は無論ダサい。
バイヤー気取りの行動を取っているくせに、見ている服は高くて買えない。
ありがたい事に、ダサさに気付いてか、店員さんは声をかけて来ない。
ゆっくりと好きな物を見る事ができる。
ダサくてよかった。
ダサくてよかった。
ファッション深夜高速。
ドライフラワーカンパニーズ。
はぁ?
薄っすら気付いていたのだが確信した。
僕は服や靴そのものは好きだが、自分が着る事に興味がないのだ。
自分をマネキンとして捉えた時に、着せる価値がないと考えている。
当たり前の話だ。
なぜなら僕は、どこに出しても恥ずかしいチビデブハゲだからだ。
だから服が大好きな僕は、大好きな服は着ずに、これからも全身ファストファッションで街を練り歩く。
そしてきっとまた、全身ファストファッションで、大好きな服を見に足を運ぶのだろう。
さて、今回試聴した「プロジェクト・ランウェイ20」は洋服を作るデザイナーが主役の、ファッション・リアリティ・ショーだ。
アメリカのケーブルテレビ局の番組で、タイトルからもわかる通り、今回でシーズン20を迎える人気番組だ。
これが、今まで知らなかった事が悔やまれる程に面白い。
逆に言えばシーズン1〜19を初見で観られる自分はラッキーなのかも知れない。
様々な人種のデザイナーたちが一堂に介し、ファッションショーでモデルが着用する衣装を作り、競い合う。
毎回審査員が一人ずつ脱落者を出し、たった一人の優勝を決める。
優勝者には賞金25万ドルと多数の特典が与えられる。
番組開始早々に面白いという事を確信した。
これは人が死なないデスゲームだ。
ドキドキするし、ハラハラするし、笑えるし、感動する。
本当に全部が詰まっている。
この番組を観ていると、傑作少年漫画を読んだ時と同じ高揚感が得られる。
なんなら本当に漫画化して欲しい。
今回のシーズン20は過去に出場して特に好評だったデザイナー14人が再集結する。
1〜19を観ていないので当然誰も知らなかったが逐一、本人のインタビューやライバルの証言などで人となりや過去の戦歴などを説明してくれる。
1〜19を観た人なら「あの人が満を持して!」と楽しめるだろうし、20から観た人は、知らない同窓会を覗き見している様な楽しみ方ができる。
今回集まった14人は人種、性別、セクシャリティなどバラバラで本当に個性が強い。
デザイナーたちは限られた時間でテーマに沿ったデザインを考え、生地を選び、自ら縫製する。
布が高くて買えない、当日モデルが来ない、などの様々なアクシデントに見舞われながら、出場者たちは大会に懸ける想いや自らの過去などを吐露していく。
番組の作りが上手すぎて、審査当日までに出場者の誰かに感情移入してしまう。
我が事の様に応援し「この人だけには落ちて欲しくない」という気持ちが芽生える。
そして、その人が脱落した時のショックは半端ではない。
審査員たちは脱落者にも優しい言葉をかけ、ライバルたちも功をたたえるが、余裕で気まずい。
それが毎回続いて残り一人の優勝者を決めるのだから、いかに過酷で見応えがあるか、ご想像いただけると思う。
ガチ勝負の緊張感はキチンとあるのだが、番組に終始漂っているのは和気あいあいとしたムードだ。
これは、出場者の大半を占める西洋人の、パブリックイメージとしての大らかさが存分に出ているからだろう。
本番当日まではジョークを飛ばしたり、ヒールぶったり、適度に馴れ合ったりしてくれるから観ていて気持ちが良い。
さらにこの番組を傑作にしている大きな要因は、日本語吹き替えである事だと思う。
字幕ならもっとシリアスに感じたり、映画の様に鑑賞してしまったりしたかも知れない。
海外のコメディの吹き替えの様な、声優さんのあっけらかんとした声の演技が、バラエティ番組として観やすくしてくれている。
「#2 サイテーな服にサヨ〜ナラ」
「#3 オモチャで奇抜に攻めちゃって!」
など、タイトルも逆に最高としか言いようがない。
ちなみに、デザイナーたちが作る洋服は、素人から見ても本当に美しく、格好良い。
完成した服をモデルが着て登場する際の感動を、是非その目で感じて欲しい。
ダサい僕の話に戻るが、2024年1月から、長い芸人人生で初めて舞台衣装を着る様になった。
これは明らかな意識の変化だ。
僕の舞台衣装はめちゃくちゃカッコいい。
セットアップをそのまま着ているのだから間違いない。
サイテーな服にサヨ〜ナラして奇抜に攻めちゃってる僕を観に、舞台へ足をお運びいただきたい。
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おわりに・・・
「世界の絶景」
年のせいか、自然や景色が好きになってきたと感じていた矢先に見つけた、うってつけのコンテンツ。
はじめから順番に観たいと思い、「#1 モンブラン」を観させていただいた。アルプス山脈の最高峰にある山、モンブランは雪に覆われており、そこから顔を出す太陽とのコラボはまさに絶景。
現地の歴史を字幕で読んで感心しながらも、いざ行ったら寒いだろうし、雪で靴濡れるの嫌だし、そもそも海外遠いしと感じた僕にはやはりうってつけだった。
「第十七回『博多・天神落語まつり』」
日本最大の落語フェスティバルという事で是非観たいと思った。柳家喬太郎師匠が出ている「其の参」を拝見した。
現代の上方落語も江戸落語もまだまだ不勉強で詳しくはないが、30代の頃に落語家さんにオススメされた柳家喬太郎師匠はよく聴いたし、ハマった。
上方落語と江戸落語は全く違ってどちらも大好きだが、共通しているのが、話術の勉強にはならないという事。
僕からすると一流の落語家さんの上手さは別次元で、勉強しようとする気すら失せてしまうからだ。
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『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
若い頃に映画館で観た作品だが、10数年ぶりに観させていただいた。
やっぱり設定一発勝負ではなく、展開や特殊メイクなども含めて凄い映画だと再確認した。
周りの評価も年々上がってきている気がする。
芸人視点からみるとボケやツッコミに使いやすい映画でもあるが「いや、ベンジャミン・バトンか!」と言って脇汗ヘソまでしたたる程スベった事がある。
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クレジット(トップ画像):「プロジェクト・ランウェイ20」:ⓒ 2022 Bravo Media, LLC