新体制でのツアーを開催中のw-inds.に聞く、昨年デビュー20周年を迎えてのこれまでと今、そしてこれから。
2021年にデビュー20周年を迎え、約3年ぶりとなる全国ツアー『w-inds.LIVE TOUR 2022“We are”』を開催中のw-inds.。2020年5月以降、2人組ユニットとしての活動継続を決意した彼らの、新体制による初ツアーでもあった。WOWOWでは、20年超に及ぶライブパフォーマンスの中からメンバーセレクトによる映像を2人のコメントも交えて紹介する「w-inds. Live Selection」を11月22日(火)に放送・配信、さらに東京国際フォーラムでのライブを12月28日(水)に独占放送・配信する。公演直後の某日、橘慶太、千葉涼平に現在の心境を語ってもらった。
――東京国際フォーラムでのライブを終えた瞬間、率直にどのようなお気持ちでしたか?
橘慶太:まずはホッとしましたね。プレッシャーに感じていた部分が大きかったので、安堵の気持ちが僕は強かったです。
千葉涼平:ずっと気を張っていたので、それが抜けて。終わった瞬間はとにかく「終わった~!」という、肩の荷が下りた感じでした。
――ツアー全体を振り返ったお話になるかもしれませんが、新体制のお披露目に対する不安は払拭されたのでしょうか?
橘:“新しいスタイル”という点で言うと、ツアー初日を迎えた時にもう「これは良いな」という手応えはあったんです。ファンの皆さんが喜んでくれているのは、東京公演の前からもちろん伝わってきていたんですけど、東京公演というのはやはり歴代w-inds.に関わってくれていたスタッフの方々も観に来られるわけですよね。そういったw-inds.の内側を知る人たち、一緒につくっていく人たちが「今の二人体制をどう思うか?」も気になっていました。「良い」と思ってもらうことが、僕たちがこれから活動を続ける上では肝心なので。そういう方たちにも「すごく良いね」という声をたくさんもらったので、表と裏から合格をもらえた感覚がありました。
千葉:初日を迎える前に、慶太くんがいない状態でゲネプロ(※本番同様に行なう通しリハーサル)をしたんですけど。その時に「あ、これに慶太くんが加わったら、すごく良さそうだな」という感じはありつつも、初日は自分がいっぱいいっぱいだったので、とにかくその日は「無事に終わった!」という気持ちで。でも、ゲネプロで想像した感覚以上にお客さんが楽しんでいる空気感が伝わってきたことで更に「良かったな」と感じました。
――国際フォーラムのライブは、最高のクオリティーの歌とダンス、そして曲の世界観に合った照明演出も大人っぽくて素敵でした。ライブ全体の演出は、どのようなコンセプトで組み立てられたのですか?
橘:w-inds.をずっと担当してくださっている演出家の方がいて、その方と話し合いながらつくっていきましたね。基本的には、セットリストとやりたい方向性と、自分が今回のステージで思い描いている画を、まずは大きくお伝えして。それを踏まえて演出家の方が「こういうのはどう?」というプランを出してくださり、そこからキャッチボールしながらつくりあげていく、というやり方です。今回は、20周年の集大成という部分と新しいw-inds.の一歩、“今までと、これから”を伝えられたらいいな、という想いがありました。『20XX “We are”』(新体制として初のオリジナルアルバム)というタイトルはその意味合いでつくっていて、2001年のデビューから未来までを意味している、というメッセージを込めていて。このツアーでもそういった部分を皆さんに伝えたいと思っていました。
――千葉さんはいかがでしたか?
千葉:慶太を中心に出てきたアイディアを、演出家さんを交えて話していく感じだったので、僕が何か大きな案をバッと出した、というのはあまりないんですけれども。「自分はそれをパフォーマンスにどう落とし込んでいこうかな?」と考えながらやっていく形でしたね。
――『20XX “We are”』と懐かしい曲たちとが混ざり合った、エモーショナルなセットリストでした。
橘:僕がセットリスト案を最初に出した時は、涼平くんからは「懐かしい曲いっぱいあるね~!」って、すごく陽気な感じでLINEの返信があって(笑)。「いいね! 昔の曲いっぱいやるね!」みたいな感じではあったよね?
千葉:うん。最近リリースした曲は、見せ方がもう決まっているじゃないですか? でも昔の曲は一からまた構成し直すので、僕自身も改めてやってみないとどうなるか分からないんですよね。楽曲が決まってから「こうしようかな? ああしようかな?」と考えながらつくっていくことになるので、それが「いい方向に転がってくれたらいいな」とは思っていました。
――本編ラストの「Long Road」、そしてアンコールではデビュー曲「Forever Memories」から最新曲「Beautiful Now」へ繋げるのがドラマティックでした。今歌うと昔の曲に対して新たな感情が芽生える、など、20周年ならではの変化や発見はありましたか?
橘:曲の感じ方は、自分の置かれている環境で変わるので、それは常にありますね。今回で言うと特に「Long Road」の歌詞はそうかもしれない。当時はあの歌詞の本当の良さが分からなかったんですよ。「<地図も 時計も 逆さに見てた>ってどういう意味? なんで逆さに見てんの?」みたいな(笑)。<失くすものさえ何もないから>も「分かんないな」という感覚があったんです。逆に、今が一番「Long Road」の歌詞にすごく共感できて、この曲を最後にしたのは、今の自分の気持ちとすごく嚙み合ったタイミングだったから、というのはありますね。5年後に聴いたらまた違う聴こえ方をするでしょうし、そういう発見はいつも感じていますね。
――まるでw-inds.の現在地を象徴するような歌詞に聴こえました。
橘:本当ですよね。僕も「いい歌詞だなぁ」と改めて思って、感動していました。当時、近田春夫さんが「Long Road」を好きだと言ってくださって、「君たちには今、この曲の良さが分からないだろう。年を重ねたら分かるようになってくるから」とずっと言われていて、その時は僕たちポカーンとしていたんですけど。ようやく分かりましたよね。
千葉:ある時から、「あれ? こんないい曲だったっけ?」みたいな感じでね。不思議ですよね。楽曲のほうは変わってないのに、僕たちの受け取り方が変わって、感じ方が変わったことで聴こえ方が変わってくる。昔の曲にはどれも感じますね。元々「いい曲だな」と思っていた曲でも、「あれ? こんな一面あったのか」というのにふと気付くというか。ライブ中に感じることもありますし。「もしかして、こういう意味合いも込めてつくってたのかな?」と思うと、作家さんはすごいなって。特に葉山(拓亮)さんの楽曲からは、当時10代の高校生だった僕たちの若い気持ちに寄り添いつつも、歳を重ねた時にはこういう感覚になる、というのをきっと考えてつくってくださったのかな?と思うと、上手だなと。さすがですよね。
橘:デビュー曲が「Forever Memories」(作詞作曲/葉山拓亮)で本当に良かったし、出来過ぎてますよね。
千葉:本当にそうだよね。
――MCでは、ファンの方たちとの信頼関係を感じ取ることができました。長年にわたって応援し続けている方が多い印象を受けますが、w-inds.がファンの皆さんの人生の一部になっている、という感覚はありますか?
橘:それはありますね。皆さんが僕たちの曲に「支えられました」とか、いろいろ嬉しい言葉を言ってくれるんですけど逆も然りで、ファンの皆さんが僕たちの人生の一部なんですよね。皆の人生の力に自分たちが少しでもなっているとしたら、結果的に支えてもらっているのは自分たちのほうだな、と。そういう感情は年々増してきましたよね。共に成長してきたなと感じますし、僕より年下なんですけどお母さんみたいな目線の人もけっこういるんですよ。
千葉:あはは!
――保護者目線のような感じでしょうか?
橘:そう、「あなた早く寝なさいよ。明日も早いんでしょ?」と心配してくださる方も多くて(笑)。皆さんw-inds.を我が子のように愛してくれて、本当に大切に思ってくれているんだなというのは年齢を重ねるごとに、w-inds.の歴が長くなれば長くなるほど感じるようになりました。
千葉:最近、すごく長く応援してくれているファンの人と、軽くお話しする機会があって。
――お知り合いの方なんでしょうか?
千葉:顔見知りではある、という感じですね。長く応援してくれているから知ってる、というか。
橘:(客席にいた)記憶がある、「覚えてる」ってことだよね?
千葉:そうそう。「そういえば、高校生の時から来てくれてるよね?」という話になったんですけど、もう22年前のことなんですよ。当時は学生服で来ていて、ずっとブレることなくw-inds.を応援してくれていて。それってすごいなと思ったんです。この22年の間、僕はずっと変化してきていて。ステージに立っている時もそうだし、そうじゃない時の姿も見てくれていて、「涼平くんも落ち着きましたね。あの時、厳しかったですよね?」とか言ってくれて……そうやって僕は「ファンの人に見守られてるんだなぁ」と思ったんです。
橘:もう、お母さんだよね(笑)。
千葉:そうだよね。その方に限らず、ずっと応援してくれている方がたくさんいるんだなと思うと、本当にありがたいなと。音楽を届けることでしか僕たちは恩返しできないので、こうして活動を続けていくだけなんですけども。
――コロナ禍の影響で、有観客ライブの開催は約3年ぶりでした。オンラインライブへの挑戦もありましたが、直接対面できない期間、そういったファンの皆さんと繋がっている実感はどのように保っていましたか?
橘:ライブで実感するのとは違いますけど、昔よりはSNSだったり、ファンクラブの配信だったりを通じて、そこに届くコメントによってコミュニケーションを取ることはできるので、そこで感じてはいました。だからゼロではなかったんですけど、やっぱりライブをやってみたら直接会ってコミュニケーションを取るのは「全然違うな」とは感じましたね。
千葉:そのためにファンクラブの配信も始めたしね。「何かできないかな?」っていう。
橘:3年もライブをしなかったら普通怒ると思うんですけど、皆さんずっと待っていてくれました。最近よく言われるんですよ、「w-inds.のファンは皆いい人だね。お行儀いいね」って。ライブをしなくても文句一つ言わず、ずっと待っていてくれて。心ではたぶん言っていたかなと思うんですけど、SNSでは発信せず。
千葉:(笑)。
橘:さっきも言ったように、お母さんみたいな存在の人が多いので。「やれるようになったらやりなさい」みたいな感じで見守ってくれているな、というのは感じていましたね。
――「応援し続けたい」と感じさせるのは、変化を恐れずチャレンジし続けてきたw-inds.の歴史、ファンの皆さんを大事にしてきた姿勢があってこそではないでしょうか?
橘:応援してくれている皆が変人なんだと思います(笑)。こんなグループをずっと応援してくれるんだな、ありがたいな、という気持ちになりますけどね。だって、変化を恐れないというのは、過去を捨てる……というわけではないにしても、少しは否定しながら新しいものにチャレンジするということなので。それすらも見守ってくれるのは、本当にファンの皆さんの人柄あってこそ。だから「自分たちがチャレンジする姿に憧れを持ってくれている」とはあまり思っていないんです。逆に言うと、そういうたくさんの人たちが応援してくれているからこそ、僕は皆のことを信用してチャレンジできる、という発想のほうがしっくり来ますね。
千葉:うん、そうですね。
橘:だから本当に、ファンの皆さんの人柄が素敵なんだと思います。
――これまでのw-inds.の歴史の中で、「さすがにこれはファンの人たちに呆れられるんじゃないか?」と思った一番のチャレンジは何だと思われますか?
橘:え~!? 何だろう……でも、10周年ぐらいの頃が結構イケイケだったよね?
千葉:10周年ライブはヤバかったね!
橘:「自分たちのやりたいことだけをやろう」というスタイルだったので、その時がたぶん一番尖っていたと思います。
千葉:アニバーサリーライブだったら普通は懐かしいシングル曲が多目じゃないですか? でも「俺たちはそんなことしねぇぜ」みたいな。
橘:「カッコいいことやろうぜ!」という気持ちが強くて、昔の曲なんてやらなくて。「今のスタイルでいいだろ」みたいな感じでやっていましたよね(笑)。
千葉:攻めてましたねぇ。
橘:その攻めがあって、5年後に「ちょっと申し訳ないことしたなぁ」となって全曲シングルライブを開催したんですけど(笑)。
――国際フォーラムのライブは新旧織り交ぜた、温かくも尖ったライブ内容だったと思います。WOWOWでご覧になる方々に向けて、特に注目してほしいポイントをお聞かせください。
橘:新しい体制になって涼平くんが歌うパートが増えたのは、w-inds.としてプラスのポイントだと思います。ヴォーカルが二人いるという感覚で、それはw-inds.の新しい強みになったと思うし、そこは一つの注目ポイントになるんじゃないかな?と思います。
千葉:パフォーマンスの形がガラッと変わった、というのは自分でも感じました。「こうじゃなきゃいけない」という縛りがなくなったのか、いろいろチャレンジした新たな形を見せられたんじゃないのかな?と思いますね。
――では最後に、w-inds.の今後の展望をお話しいただけますか?
橘:その前に……僕は涼平くんのことを挙げたのに、涼平くんが一個も僕のことを挙げてないのが寂しいです(笑)。
千葉:えっと、ライブのオンエアで注目してほしいポイントは、慶太くんの変幻自在な歌声ですよね。めっちゃ高い声も出るし、ラップもそうですし。
橘:棒読みじゃん(笑)。
千葉:(笑)。2人体制になって更に慶太のキャラクター性が出てきた、というのも面白くて。
橘:たしかに、前はラップすることも無かったもんね。
千葉:うん。楽曲のパートによって、それが出るのが新しいなと思って。
橘:たしかに。ありがとうございます、お気遣いいただいてすみませんでした!
千葉:いやいや、それは言いたかったので(笑)。
――では改めて、今後のw-inds.の展望をお聞かせください。
橘:どうなるんだろうな? 自分たちでもまだ分かっていないですね。でも最近は「これをやったら面白いね」と思ったら、それをちゃんとできている気がします。
千葉:「これは新しいね」とか、「これをやったらウケるね」とか。
橘:「今のw-inds.がこれをやったら、皆ビックリするよね」とか、そういう試みを最近は繰り返しているよね。でも、それは今までのw-inds.の歴史がある上での話なので。一気に振り切るのではなくて、この20年を感じながら、次に踏み出していく一歩一歩を考えている感じはします。
――w-inds.らしさの幅が広がった、という部分もあるのでしょうか?
橘:それはめちゃくちゃあると思いますね。
千葉:うん、たしかに。
橘:でも、まだ広げようとしている自分たちがいます。どこまで広がるか、楽しみな部分ではありますね。
――本日はありがとうございました!
橘&千葉:ありがとうございました!
取材・文=大前多恵 / 写真=福岡諒祠(GEKKO)
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