22年話題となった舞台が続々登場!「世界は笑う」から「ミュージカル『るろうに剣心 京都編』」まで “ステージ派”なら押さえたい!2月の必見舞台4本
【Don't miss out! 2月のWOWOW舞台4選】
①こまつ座第135回『日本人のへそ』作・井上ひさし 演出・栗山民也 井上芳雄×小池栄子×朝海ひかる×山西惇 2月3日(金)前1:30
1969年に初演された井上ひさしの劇作の原点である本作。「テアトル・エコー」と「こまつ座」で何度も上演されてきました。
第一幕。アメリカ帰りの教授が「吃音患者の治療にはせりふをしゃべるのが一番」と唱えます。集まった患者たちが、浅草のストリッパー ヘレン天津の半生を描いた劇中劇を始めます。ヘレン天津を演じるのは小池栄子。さらに井上芳雄、朝海ひかるら豪華俳優陣が彼女を取り巻く人々に扮しますが、一人何役も務めるためどんどん衣装を替えていくさまに驚きます。ヘレン天津が上京するシーンでは、車掌役を演じる山西惇が東北本線の駅名を上野まで読み上げるのですが、言い切った時に大きな拍手が起きていました。そんなふうに音楽・言葉遊び・韻がパレードのごとく登場し軽快に展開していきます。「どうしたらこんな言葉のつなぎ方を思い付くのだ…」と井上ひさしの圧倒的なセンスにうなってしまいます。ミュージカルが好きな方にも心からお勧めします。第二幕にはどんでん返しが待っていて「この後どうなるのだろう」という緊張感が客席を支配します。
井上ひさしの作品を見ると、人それぞれに向き合っている壁があって、それを抱えて生きる表情がいかに多様であるかを知ります。言葉と演技によって自分も知っている感情が刺激されて思い出すことがある気がします。「特に好きな井上作品を選んでください」と言われたら迷ってしまいますが(私は「父と暮せば」、「太鼓たたいて笛ふいて」かな…と)、本作も非常に見応えがあります。まだ井上ひさし作品や「こまつ座」の作品を見たことがないけれど見てみたいなという方、ぜひ本作でデビューしてくださいね!
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②「フリムンシスターズ」作・演出 松尾スズキ 長澤まさみ×秋山菜津子×阿部サダヲ 2月9日(木)後11:00
松尾スズキが書き下ろし2020年秋に上演したミュージカルです。
東京・西新宿。長澤まさみが演じる沖縄県出身の女性 ちひろがコンビニでのアルバイトで生計を立てながら無気力に暮らしています。ある日、彼女が昔から憧れていたかつての大女優みつ子(秋山菜津子)とその親友のヒデヨシ(阿部サダヲ)と出会い、壮大な物語が展開されていきます。
冒頭から圧倒されます。登場人物のさまざまな過去と、それと向き合う現在の姿が描かれます。ひとりで複数役演じている出演者もいるので、頭の中で相関図を描きながら見ると面白いかもしれません。カラフルな衣装やメイク、照明で西新宿の空気を醸成したかと思えば、沖縄の街角の風景が描かれたり。奇想天外な出来事が次から次へと繰り広げられて「どうつながっていくの?」と頭いっぱいモードになるのは、松尾スズキ作品ならではの醍醐味かもしれませんね。突如登場したモノや言葉がその後の展開をぐわんと予想しない方向にもっていくことが多いなぁと思います。次にどんなシーンが始まるのか、あるいは回収されるのか、分からない…だからこそ癖になるぞくぞく感があるのでは、と。時折挟まれるコーラスは、琉球音階を使っているようなどこか懐かしいメロディーと歌詞が特徴で、前のシーンの余韻と調和していました。
ラストシーンではすべてのキャラクターから一つのメッセージを受け取りました。こちらも人それぞれの解釈があるのではないかと気になりつつ、とても前向きになれるものでした。問題提起も含まれていたと思います。いくつかの言葉を今の社会状況と照らし合わせて他者との向き合い方について考えさせられました。
一度見るともう一度見たくなる方も多いのでは? ぜひご覧ください!
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③「世界は笑う」 作・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ 2月11日(土・祝)後6:15
2022年、私もチケット争奪戦に何度も挑戦した一本がきます。
ケラリーノ・サンドロヴィッチが作・演出を手がけた新作。
まずは豪華出演者をご確認ください!
瀬戸康史、千葉雄大、勝地涼、伊藤沙莉、大倉孝二、緒川たまき、山内圭哉、マギー、伊勢志摩、廣川三憲、神谷圭介、犬山イヌコ、温水洋一、山西惇、ラサール石井、銀粉蝶、松雪泰子
昭和30年代初頭の東京・新宿を舞台に、喜劇人と彼らを取り巻く人々の物語が展開します。
もちろん、喜劇人たちが飛ばしあう冗談は面白いです。それでも、一言をきっかけに表情が曇る、シンとしてしまう…心の底にある、時代の移ろいや戦争とともに失ったものの影を感じます。誰かだけがそういうものを背負っているのではなく、この時代日本のどんな町にも時折流れていた空気なのではないかなと思いました。
今回もKERAワールドが客席まで広がります。舞台上の色合い、ここぞという時に響く音楽、個性豊かなキャラクター、少し懐かしくなるような言葉…個人的には古本屋さんにいる時に似た感覚を覚えます。そうしていると、舞台の後ろから闇がうわーっと客席をのみ込みにくる、みたいな。
物語の中には各キャラクターの小さなストーリーがたくさん詰まっていると感じました。観劇中にいとおしいと思うやり取りもあれば、観劇後しばらくしてから思い出す掛け合いもあるのではないかと思います。上演時間は4時間弱ですが、気が付けば一幕目が終わっているほど入り込んでしまうお芝居です。お楽しみください。
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④ミュージカル「るろうに剣心 京都編」 2月18日(土)後6:15
あの「るろうに剣心」が、日本で唯一客席が回転する劇場・IHIステージアラウンド東京でミュージカル化されました。演出は小池修一郎、キャストに小池徹平、黒羽麻璃央、加藤和樹…と、とっても豪華な座組です。
やはり「どんな風に舞台化されたのだろう?」と気になりますよね。一言で「ここをこうしていた」と説明するのは難しいほど、舞台版ならではの世界観が生まれていたと思います。村、京都の町、比叡山とさまざまな場所が登場しますが、それを表現する映像とセットが客席の回転によってなめらかに変わって物語が進行します。映像と舞台のどちらの良さをも兼ね備えたようなシームレスだけれどダイナミックな転換…。「ステアラ」ならではの観劇体験ここにあり!という感じです。
さらに、宝塚やミュージカル作品で壮大な世界を描いてきた小池修一郎の演出によって、アクションシーンも一つ一つ違った雰囲気を醸し出していました。群舞を前面に出すシーンもあれば、映像と身体のコラボレーションで魅せるところも。小池徹平、加藤和樹を筆頭に動きの鋭敏さにドキッとします。スパッと動くのに大きく移動して、顔面にもぐっと力が入って、生命力がみなぎっているのが分かります。
「るろ剣」をよく知っている方も、“はじめての「るろ剣」”という方も100%楽しめると思います。疾走感を体感してください!
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終わりに…
最近プライベートで見た作品の中で印象に残ったのは、東京にこにこちゃん「ゲラゲラのゲラによろしく」、「宝飾時計」、ナショナル・シアター・ライブ「レオポルトシュタット」(素晴らしい観劇初めとなりました)などです。ロンドンのロイヤル・ナショナル・シアターは留学中に何度も訪れた劇場です。観劇はもちろんですが、建物自体がとても好きでした。大きなロビーにはお芝居がやっている時もいない時もたくさんの人がいます。カフェや戯曲を多数売っているBook Shopがあるので、読書、創作、お喋りなどをする良い時間を劇場で過ごせるのです。(※私が行ったのはコロナ禍より前です)皆さんにもお気に入りの劇場はありますか?ぜひコメントなどで教えてくださいね!
今月も、もう一度見たい作品がある皆さまも、劇場に見に行けなかった作品がある皆さまも、WOWOWステージをお楽しみいただければ幸いです。
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