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いつもと違うアカデミー賞は今回だけじゃない! 過去にもあったアカデミー賞授賞式のさまざまな“例外”

マガジン「映画のはなし シネピック」では、4月26日(月)にWOWOWで生中継する「第93回アカデミー賞授賞式」に合わせたコラムをお届けしていきます! 今回は、過去のアカデミー賞での知られざる“例外”をご紹介。これを読めばあなたもアカデミー賞授賞式通!

文=前田かおり

開催延期されたアカデミー授賞式と消えたオスカー盾

 新型コロナウイルス感染症の影響で当初予定されていた2月から約2カ月延期され、日本時間の4月26日(月)に開催されることになった「第93回アカデミー賞授賞式」。授賞式の延期は今回が初めてではなく、これまでに3度延期されている。

 第10回(1938年)が会場のある米・ロサンゼルスでの大雨と洪水により、第40回(1968年)が、マーティン・ルーサー・キング牧師暗殺事件が起きたため、そして1981年の第53回が、ロナルド・レーガン大統領の暗殺未遂事件を受けての延期だった。

 長い歴史を重ねてきたアカデミー賞だけに、延期はもちろん、ハプニングやアクシデントも数知れず。例えば第10回アカデミー賞の助演女優賞は『シカゴ』(’37)で主人公の母親役を演じたアリス・ブラディが受賞。だが、彼女が舞台公演中で授賞式を欠席したために、代理人と称する人物が壇上に上がりオスカー盾(当時は像ではなかった)を受け取った。しかし、この人物はまったくブラディとは関係なく、持ち去られたオスカー盾はいまだ行方知れずのままだ。

発表におけるアクシデント!

 前代未聞のアクシデントといわれるのは、まだ記憶にも新しい第89回(2017年)のアカデミー賞でのこと。それは授賞式のハイライト、作品賞の発表の際に起こった。プレゼンターは、『俺たちに明日はない』(’67)の製作50周年を記念して、主演のウォーレン・ベイティフェイ・ダナウェイ。封筒を開けたベイティが発表をためらっていると、ダナウェイが『ラ・ラ・ランド』(’16)と発表。だが、正しくは『ムーンライト』(’16)が受賞作品だったことから、その場は騒然となった。

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 発表でのアクシデントは過去にもあった。1940年の第12回でのこと。当時は受賞結果を翌日の朝刊に掲載するため、マスコミ各社は「授賞式が終わるまで公表しない」という協定を結んだ上で、事前に選考結果を知らされていた。だが、ロサンゼルス・タイムズ紙が当日の夕刊で『風と共に去りぬ』(’39)が作品賞を受賞したことをすっぱ抜き、授賞式会場で発表される前に結果が知らされてしまった。そのため、翌年から選考結果はプレゼンターが封筒を開封するまでは一切外部に伝えないという現在のスタイルになったのだ。

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世界中の注目が集まる中で起きた大騒動

 あり得ない事態といえば、1974年の第46回の授賞式で起こった全裸男性の乱入事件がいまだに語り草。プレゼンターを務めていた英国の名優デヴィッド・ニーヴンエリザベス・テイラーを紹介している時に、彼の背後を全裸の男性がピースサインをしながら横切り、会場は大騒ぎに! 生放送だったが、「あの男が唯一笑いを取れるのは、服を脱いで自分の欠点をさらすこと」とニーヴンがウイットに飛んだコメントで笑いを誘って場を収めた。 

 映画の祭典だけに、昔からスターもさまざまな騒ぎを起こしているが、映画史に残るようなスキャンダルもあった。1963年、第35回の授賞式。この年はホスト役のフランク・シナトラが駐車場の駐車票を忘れたことから車を止められず、危うく式に遅刻しそうになるというアクシデントもあった。

 だがこの年、それ以上に後年にも伝えられることとなったのが、主演女優賞でのことだ。受賞したのは『奇跡の人』(’62)のアン・バンクロフトだったが、彼女は舞台公演中のため欠席。“代理人”のジョーン・クロフォードがオスカー像を受け取った。実は、同賞には『何がジェーンに起ったか?』(’62) でベティ・デイヴィスがノミネートされていたのだが、同作で共演しながらノミネートされなかったクロフォードはデイヴィスの受賞への反対運動を展開。そんな彼女が、バンクロフトの代理人としてオスカー像を手にしたのだ。ちなみに、デイヴィスとクロフォードのすさまじい確執については、TVドラマ「フュード/確執 ベティvsジョーン」で描かれている。

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今年は何が起きる? リアルタイムで目撃しよう

 初めてオスカー像を手にして、うれしさや感激のあまり、信じられない行動をとったスターたちもいる。2003年の第75回、『戦場のピアニスト』(’02)で主演男優賞を史上最年少の29歳で受賞したエイドリアン・ブロディは喜びのあまり、プレゼンターの女優ハリー・ベリーをハグしてキス。それも恋人にするような情熱的なものだったことから、ベリーは苦笑いしながら口をぬぐっていた。

 そのハリー・ベリーは前年の第74回で『チョコレート』(’01)で主演女優賞を受賞した際に、5分にわたるスピーチをしたのだが、実はスピーチは規定で45秒以内とされている。アフリカ系アメリカ人の女性として初めての栄誉であり、名スピーチとして語り継がれている。

 かわいい“ミステーク”として記憶されているのは、2013年、第85回のアカデミー賞で『世界でひとつのプレイブック』(‘12)で22歳の若さで主演女優賞を受賞したジェニファー・ローレンスの階段大コケ事件。名前を呼ばれてステージに上がろうとした際に、ロングドレスの裾を踏み、晴れの舞台で転倒してしまったのだ。

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 気が動転している彼女のもとにすぐ駆け寄って、手を差し伸べたヒュー・ジャックマンの紳士ぶりも話題になったが、ローレンスはそのことにまったく気付かなかったらしい。ちなみに、ローレンスは翌年の授賞式でもレッドカーペットで転倒している。

 さて、開催延期だけでなく、劇場公開されていない配信作品も選考対象となるなど、いつもとは違う状況で開催される2021年の第93回アカデミー賞授賞式。賞の行方とともに、授賞式で一体何が起きるのか…リアルタイムで目撃しようではないか。

前田かおりさんプロフ

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クレジット:Getty Images