野村萬斎×若手俳優陣「ハムレット」から岩井秀人の代表作「おとこたち」まで話題作が登場。“ステージ派”なら押さえたい! 7月の必見舞台・番組2本!
【Don't miss out!7月のWOWOW舞台・番組2選】
①野村萬斎演出「ハムレット」野村裕基×岡本圭人×藤間爽子 7月8日(土)後1:00
古典と現代劇の融合を目指してきた野村萬斎が、ライフワークとする「ハムレット」を構成・演出。自身の翻訳劇デビューがハムレット役だったことのみならず、国内外でさまざまなシェイクスピア作品に取り組んできました。
今回、ハムレット役を務めたのは、息子であり弟子でもある野村裕基です。萬斎自身は亡き父王の亡霊と、クローディアスを演じます。さらにレアーティーズと廷臣ローゼンクランツの2役に岡本圭人、オフィーリア役に藤間爽子を迎えるなどフレッシュな顔ぶれがそろいました。実力派の若村麻由美、村田雄浩らも出演し萬斎演出の21世紀のハムレットの重厚な世界観を作り上げています。
間違いなく注目ポイントの一つなのが、古典要素の取り入れ方。衣装や演技、音などに使われるのですが、デンマークを舞台にした「ハムレット」ならではの世界観と共鳴し、さらに深みを醸成しているなと思いました。特に、和のテイストの音楽はこの作品の輪郭のような存在であると感じました。
有名なモノローグをはじめ、狂気や愛を膨大なせりふで表現するハムレット役。裕基のたたずまいや発声の変化がとても緻密で、繊細な表現から役の苦しさや混乱が伝わり印象に残りました。岡本の2役の演じ分けもすばらしく、感情の変化や激しい動きの多いレアーティーズに対してコミカルな要素もあるローゼンクランツと両者のキャラクターを真摯に練り上げていったことがうかがえました。
笑いの要素もあって、楽しみながらも考察を繰り広げられる舞台だと思います。お見逃しなく。
▼野村萬斎演出「ハムレット」野村裕基×岡本圭人×藤間爽子×村田雄浩×若村麻由美 作 W.シェイクスピア 翻訳 河合祥一郎の詳細はこちら
② ミュージカル「おとこたち」 7月22日(土)後3:15
劇団ハイバイ主宰・岩井秀人の代表作「おとこたち」が、前野健太が手掛けた音楽とともにミュージカルとなり、今年PARCO劇場で上演されました。描かれるのは4人の“おとこたち”。
4人の人生の断片を見ていくような感じで、就職、仕事、恋愛、宗教、病気、不倫、老い、いろいろな要素が描かれます。切り取り方やそれらを語る人物たちの表情、ちょっとしたやりとりがリアルです。自分にも覚えがある気まずさやつらさを刺激される瞬間もありました。そのポイントは見る人によって違うと思います。それでも最後には笑ってしまうし感動もする…岩井作品ならではのミュージカルだと思います。“おとこたち”を演じる4人の息がぴったりで、たくさん笑いました。一方で四者四様の歌い方があって歌唱シーンでは個性が光ります。
彼らの人生にアクセントを与える女性役として大原櫻子、川上友里が加わり、それぞれに何役も演じます。大原が、言葉にしづらい感情を吐露する歌唱シーンがあるのですが、歌詞以上の、整理のついていない心が伝わったような感覚を覚え、私自身の気持ちも動かされました。
また、舞台美術の展開も見どころの1つかと思います。小さな工夫(例えばテーブルの置き方)でケアセンターやカラオケ店、家…とあらゆる場所に変化します。素材の使い方や色使いにも興味を持ちました。
そんな、岩井秀人の代表作にしてまったく新しいミュージカル。ご堪能ください。
終わりに…
最近プライベートで見た作品のなかで印象に残ったのは、NTLive「ライフ・オブ・パイ」、イキウメ「人魂を届けに」、劇団普通「風景」、NODA・MAP「兎、波を走る」、「パラサイト」、ピンク・リバティ「点滅する女」、「FACTORY GIRLS〜私が描く物語〜」などです。今年のトニー賞も素敵でしたね。久しぶりに海外旅行に行ってパフォーミングアーツをたくさん見たいです…。私の中で特に印象に残っているのは「エディンバラ・フェスティバル」です。
今月も、もう一度見たい作品がある皆さまも、劇場に見に行けなかった作品がある皆さまも、WOWOWステージをお楽しみいただければ幸いです。
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