“ステージ派”なら押さえたい! 10月の必見舞台5作品!
こんにちは。7月にWOWOW公式noteの“中の人”デビューした「自称WOWOW社内指折りの“ステージ派”」Fです。
9月3日に、「ズバリ!いまWOWOWでしか見られない」(※)という9月放送のステージ5作品を紹介しました。大変幸いなことにご好評の声をいただき、このたび念願の「月刊化」をさせていただくことになりました!
こちらの記事では、来たる10月に放送される5作品を取り上げます。社内でも「10月のステージはリピート放送のものも含めて、豪華だよね」と言われるほど、“芸術の秋”にぴったりなラインナップになっています。ご注目ください! このコラムではコメント欄もご利用いただけます!
(※執筆時点でDVD等は確認できない、放送時期に字幕ありで見られるのはWOWOWだけである作品、など)
★9月の必見舞台5作品はこちら!
【Don't miss out! 10月のWOWOW舞台5選】
①三谷幸喜「大地」(Social Distancing Version) 10月13日(木)後0:30放送
2020年1月、新生・PARCO劇場が開幕しました。本作はそのオープニング・シリーズの1作でした。三谷幸喜の書き下ろしであること、大泉洋、山本耕史ら豪華な顔触れが並んだことから大きな話題を呼びました。
しかし、コロナ禍により劇場に行けない数カ月間が訪れます。約3カ月の沈黙を経てPARCO劇場が再開。本作が、舞台上の俳優の距離を保ちながらも、再び豊かな演劇表現を劇場で見せようと幕を開けたのでした。観劇した人から「やっぱり劇場に座った時の空気感が違った、奇跡みたいだった」と聞いた時、胸が熱くなったのを覚えています。
舞台はとある架空の国家、反政府主義のレッテルを貼られた俳優たちが施設に収容されています。 “演じる”行為を禁じられた彼らの日々を、笑いあり涙ありに描きます。
物語の後半に今でもしっかりと思い出せるせりふがあります。お芝居や劇場を愛するすべての人に聞いてほしい、コロナ禍を背景に刺さる言葉だと思います。演劇とは、エンターテインメントとは何かを三谷幸喜が切実に問い掛ける必見作です。
②「パンドラの鐘」成田凌×葵わかな 作・野田秀樹 演出・杉原邦生 成田凌 葵わかな 前田敦子 玉置玲央 大鶴佐助 柄本時生 片岡亀蔵 南果歩 白石加代子 10月15日(土)後6:00放送
1999年に野田秀樹が蜷川幸雄に書き下ろし、2つの劇場で同時期に上演された伝説の戯曲。蜷川幸雄の七回忌を迎える今年、NINAGAWA MEMORIALと題し23年ぶりに東京・Bunkamuraシアターコクーンで上演されました。
演出は杉原邦生。プロデュース公演カンパニー・KUNIOの主宰として、アングラ、古典、シェイクスピアとさまざまな作品に独自の解釈で息を吹き込んできました。上演時間が約8時間半にも及ぶ超大作「エンジェルス・イン・アメリカ」の上演や、これまで10作品以上に参加している「木ノ下歌舞伎」の公演など、話題作を数多く生み出してきました。
今回の上演でも、杉原邦生ならではのダイナミックな舞台美術や衣装、音楽による高揚感と、せりふ一つ一つを吟味する繊細なドラマシーンとが混ざり合っていて、今でも鮮明に思い出されるシーンばかりです。音楽はm-floの☆Taku Takahashiが担当しています!
本作でも豪華キャストがそろっています。私は2階席で観劇しましたが、成田凌演じるミズヲのモノローグで息遣いや気迫がびんびんと伝わってきました。1999年バージョンではミズヲを演じた堤真一と勝村政信がこのシーンをどのように演じたのかもとても気になりました。後述する1999年版と併せて見ることで役作りの多様性を楽しみたいですね。
日本の歴史のタブーに真っ向から挑んだ衝撃作をお見逃しなく。
③「パンドラの鐘」(1999年) 10月19日(水)
NODA・MAP版「パンドラの鐘」 後8:30放送
蜷川幸雄演出「パンドラの鐘」 後10:40放送
野田秀樹が蜷川幸雄に書き下ろし、1999年に東京・世田谷パブリックシアターとBunkamuraシアターコクーンで同時期に上演された両バージョンをお届けします。
特に蜷川幸雄演出バージョンは、映像を見ることが大変困難だったので(演劇専攻の学生時代、汗をかいて探していました…)、放送が決定したときには驚きとうれしさで声が詰まりました。古くからの演劇ファンにとっては懐かしく、若い演劇ファンにとっては「“世紀末の”伝説をついに見られる!」という喜びがあると思います。そのため「WOWOWでなら2作品を一緒に見られる」と両方を紹介することにしました。
野田秀樹は、1998年に大英博物館で見たいくつかの展示品から本作の着想を得たそうです。また、そこにあった鐘が原子爆弾のフォルムと重なった、ということを英国の鬼才、サイモン・マクバーニーに話したところ、マクバーニーが執筆へと背中を押してくれたのだそうです。
両バージョンの豪華な顔触れにも注目です。
映像だからこそ見られる20年以上前の舞台。お見逃しなく!
④シネマ歌舞伎『三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち』 10月22日(土)後6:00放送
みなもと太郎の人気歴史ギャグ漫画「風雲児たち」を原作に、三谷幸喜が「三谷かぶき」として作・演出を手掛け、2019年6月に東京・歌舞伎座で上演されました。
鎖国の時代に異国に流れ着いた17人の漂流者たちが、日本への帰還を目指して苦闘する姿が描かれます。言葉が通じず、寒さに凍えながらも外国の町を巡り生き抜く姿に「実在の人物がモデルだなんて…!」と原作への興味も湧きます。それをみごとにドラマ化している俳優陣の役作り、素早い衣装替えや舞台の転換…と歌舞伎化ならではの面白さも満載です。
松本白鸚、松本幸四郎、市川染五郎の3代共演、そして市川猿之助、片岡愛之助、八嶋智人、坂東彌十郎ほか豪華な俳優陣の掛け合いも必見です。前述した「大地」(Social Distancing Version)と併せて、同じく三谷が手掛けるNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に出演している俳優陣が舞台でどんな役を演じているのかも見どころですね。
さらにこの「シネマ歌舞伎」では三谷自らが編集に携わっており、尾上松也のナレーションに合わせ、みなもと太郎の描きおろしイラストをアニメーション化するなど映像ならではの楽しさもたくさんあります!
⑤ブロードウェイミュージカル『ジャニス』 10月29日(土)後6:00
27歳でこの世を去った伝説の女性ロックシンガー、ジャニス・ジョプリンの人生を描く、ブロードウェイミュージカル『ジャニス』。8月後半に日本人キャストにより初上演されました。総合プロデューサーに亀田誠治、主演のジャニス役はBiSHのアイナ・ジ・エンド、アレサ・フランクリン役にUA…と音楽界のスターがそろった注目の座組。
ジャニス・ジョプリンは“元祖・音楽フェスティバルの女王にして伝説のロックスター”と呼ばれていますが、アイナ・ジ・エンドのパワフルな歌声と“オーディエンス”の一体感はまさに音楽ライブ的な熱気を生み出していました(東京国際フォーラム ホールAという広い会場で…!)。映像でご覧になる皆さまも、音楽のシャワーを浴びて体を揺らし手拍子をする客席の気分を味わっていただけたらと思います。
ジャニスが音楽的にも影響を受けたアレサ・フランクリン、エタ・ジェイムス、オデッタ、ニーナ・シモン、ベッシー・スミスらレジェンドたちの歌唱シーンも圧巻です。 絵画やミュージカル作品といった他の芸術とジャニスの関係性も興味深く描かれていて見どころ満載です。
終わりに…
映画でも気になる1本がありますね。『アメリカン・ユートピア』(’20)です(10月2日(日)後9:00 WOWOWシネマで放送)。元トーキング・ヘッズのデヴィッド・バーンによるユニークなブロードウェイショーが、鬼才スパイク・リー監督によって映画化されました。バーンら11人の出演者が21曲を演奏し歌い踊ります。第74回トニー賞では「特別賞」を受賞しました。
もう一度見たい作品がある皆さまも、劇場に見に行けなかった作品がある皆さまも、WOWOWステージをお楽しみいただければ幸いです。
※9/17追記 NODA・MAP版『パンドラの鐘』について一部未確認の情報を記載しており訂正いたしました。大変失礼いたしました。ご指摘ありがとうございました。
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