見出し画像

布袋寅泰の代名詞であり原点でもある『GUITARHYTHM』シリーズ最新作を携えて行われた昨年の全国ツアーから、国立代々木競技場第一体育館での最終公演の模様をレポート!

「WOWOW MUSIC MAGAZINE」では、WOWOWで放送・配信するライブの模様やインタビュー記事などを紹介!

今回は2月25日(日)午後9:30よりWOWOWで独占放送・配信する、布袋寅泰 GUITARHYTHM VII TOUR FINAL “Never Gonna Stop!”のライブレポートをお届け。

布袋寅泰の代名詞であり原点でもある『GUITARHYTHM』シリーズ最新作を携えて行われた昨年の全国ツアー。ツアーファイナルのステージで示された彼の矜持とはー

 2021年から2022年にかけて、デビュー40周年という節目に大規模な活動を展開した布袋寅泰。アニバーサリーイベントとツアー開催、アルバム『Still Dreamin’』リリースと同名タイトルのドキュメンタリー映画公開。東京2020パラリンピック開会式にもゲスト出演し、そのギター演奏が大きな話題を呼んだ。BOØWY、COMPLEX、ソロ活動を通じて刻んだ、偉大なる40年の足跡。HOTEIの圧倒的存在感が世界で再認識された2年だった。
 
 明けて、2023年。彼が選んだのは「攻める」ことだ。それは4年ぶりとなる『GUITARHYTHM』シリーズ最新作の制作。『GUITARHYTHM』とは、ギターとリズムを掛け合わせた布袋独自のコンセプト。ロックンロールの既成概念を破壊し新たな表現を構築してきた彼のライフワークであり、音楽ジャンルを超えたアートフォームだとも言えるだろう。
 
 挑戦的でアバンギャルドな最高傑作『GUITARHYTHM Ⅶ』を完成させた彼は、10月から全国ツアーを開始、各地で熱狂の渦を巻き起こした。そして、12月24日。GUITARHYTHMの聖地である国立代々木競技場 第一体育館でファイナルとなる特別追加公演が開催された。
 
 年季が入った顔触れからZ世代まで、彼の支持層の幅広さが伝わって来るオーディエンス。熱い声援が舞台に向けて注がれる中、定刻を過ぎ場内が暗転する。オープニングは最新作『Ⅶ』冒頭を飾った「AI Rising」。スクリーンでは、赤いカメラアイが点滅を繰り返す。AIをイメージしたアイコンと近未来SF映画のような荘厳なオーケストレーションが、観衆をリアルとフィクションの融合点へと誘(いざな)う。

  「Ⅶ」の文字と共に右腕を高く掲げた布袋の姿が浮かび上がると、激しいギターカッティングから「Highway Star」へ。ディープ・パープルの代表曲を全く新しい解釈のサウンドにあしらえる。銀のメタルスーツ姿でソロを極(き)める姿に、高揚が膨れ上がる。続く「Midnight Sun」は、仮想現実に飲み込まれつつある現実を暗喩したナンバー。ブギーをベースに“デジタルグラムロック”と呼ぶべきサウンドを鳴らす。「Isolation」では、コロナ禍を経て分断された社会を生きる人々の内面を描く。濃厚なギターフレーズが、言葉にならない叫びのようだ。

 「Domino」では、ループするリズムとキャッチ―なサウンドメイキング、そして不条理な詞の世界が、アンビバレントで中毒性の高い磁力を放つ。ハイライトは長いイントロから一転してスリリングな展開へと向かう「Andromeda (feat. アイナ・ジ・エンド)」だった。ライブで布袋と初共演となったアイナ・ジ・エンドが、ハスキーで感情豊かな歌声と彼女独特のダンスで、ハートが濡れるアンドロイド=AIの“終わり”を体現する。
 
 『Ⅶ』から5曲続けた後は、シリーズ前作『Ⅵ』から3曲を連ねる。“Flashback”のリフレインが暗示的な「Middle Of The End」、MAN WITH A MISSIONとのセッションも話題を呼んだ「Give It To The Universe」、「北斗の拳」とのコラボレーションも記憶に新しい「202X」。ツアーを通じて完熟したバンドアンサンブルが芳醇な音楽空間を創出し、明暗を織り交ぜた近未来を描く。

 過熱したボルテージを一旦鎮めるかのように、1991年に発表されたシリーズ二作目の二枚組『Ⅱ』から、ギターインスト曲「GUITAR LOVES YOU」、サキソフォーンソロがフィーチャーされた「SLOW MOTION」、壮大なオーバーチュア「METROPOLIS」が披露された。
 
 必殺のドラムソロパターンから始まった「さよならアンディ・ウォーホル」、パンキッシュなギターリフが脳髄を刺激する「UPSIDE-DOWN」、全員で大合唱した「DIVING WITH MY CAR」は、日本中の“ロックンロールワイルド”が熱狂した『Ⅲ』収録の楽曲。聴衆にとっては、それぞれに特別な思い出があり、そのたびに太くなった彼との絆がある。そんな感慨も覚える、圧巻のライブが続いた。
 
 左足を上げるポーズも愛おしい「GLORIOUS DAYS」から、サビを繰り返しコールアンドレスポンスした「MERRY-GO-ROUND」では、会場を木魂する歓声と絶叫が共鳴し、しばらく収まることは無かった。
 
 演奏は『Ⅶ』に戻り、ジェフ・ベックをはじめとする天に召されたミュージシャンたちへの追悼の意も込められた「Horizon」へ。ペシミスティックでダークな世界へ光を灯すべく、ギタープレイに祈りを込める。彼を支える骨太のバンドと生み出すハーモニーが、絶望を乗り越えるための希望を見事に奏でていた。
 
 本編最後は、ロンドンでリリックを考えたというアンセム「Eternal Symphony」。パンデミック、紛争、気候変動、匿名の誹謗中傷。ありとあらゆる哀しみが世界を闇に染めてしまいそうな時代。それでも“明日を信じて”と歌う布袋の純度の高いピュアネスが誇らしかった。
 
 熱狂的なHOTEIコールに導かれたアンコール。最新作のラストに収められた「Break The Chain」で、困難な時代を生きる者たちにエールを贈る。最後は燃え滾る情熱がフレーズに込められたシリーズタイトル曲「GUITARHYTHM」。ステージと客席が圧倒的な熱量をぶつけ合い高め合って、特別な夜は大団円を迎えた。

 この夜のコンサートは、『GUITARHYTHM』シリーズを最新作から初期に遡りながら、貫いてきた音楽的な挑戦と実験の変遷が示される会心のセットリストだった。何より嬉しかったのは、40年以上のキャリアを経た今なお「最新のHOTEI」が「最高のHOTEI」だということだ。
 
 「日々変化してこそロックンロール」とは彼の名言のひとつであるが、実験的な音作りに“POP”を散りばめ、普遍性を兼ね備えながらも常に新たな音楽表現に挑み続けるHOTEIの矜持を、番組を通じて体感して欲しい。

<撮影:山本倫子>

<番組情報>
布袋寅泰 GUITARHYTHM VII TOUR FINAL “Never Gonna Stop!”
2月25日(日)午後9:30放送・配信[WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
※放送終了後~2週間WOWOWオンデマンドでアーカイブ配信あり

収録日:2023年12月24日
収録場所:東京 国立代々木競技場 第一体育館

▼布袋寅泰 GUITARHYTHM VII TOUR FINAL “Never Gonna Stop!”の番組情報はこちら

▼WOWOW公式noteでは、皆さんの新しい発見や作品との出会いにつながる情報を発信しています。ぜひフォローしてみてください。

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!