
【2月の激レア映画!】香取慎吾&岸谷五朗出演の未DVD化作品や、昭和の東宝名作映画、世界を驚愕させたゾンビ映画2作品ほか、廃盤・未ソフト化など貴重な映画を“レア度”とともにご紹介!
こんにちは。WOWOW加入者向けに配布しているプログラムガイドで「見逃し厳禁!録画のチャンス!今月の激レア映画」の作品選定を行なっている映画ライターの飯塚です。
2月もプログラムガイドで掲載している通称「激レア映画」企画をコラムにしてnoteでも掲載いたします。プログラムガイドで選定された作品がどれほど貴重な映画なのか、その選定理由とともに作品の魅力について語っていきたいと思います。
文=飯塚克味
華麗な音楽と映像美がよみがえる! 文芸映画の名匠が手掛けたラブロマンスの秀作
①[廃盤]『眺めのいい部屋』
レア度…★★★★☆

1907年、イギリス。良家の令嬢ルーシーは、未婚のいとこでお目付け役のシャーロットとイタリアを訪れ、そこで同じ英国人だが庶民の青年ジョージと出会う。運命を感じたジョージは、情熱の赴くままにルーシーにキスをするが、偶然それを目撃したシャーロットは、彼らの間にことが生じないうちにと、急遽旅を取り止め帰国してしまう。やがてルーシーは、貴族の青年セシルと婚約を交わしたものの、何か彼に物足りなさを覚え……。
まず最初はソフトが[廃盤]になっている作品『眺めのいい部屋』(‘86)から。ジェームズ・アイヴォリー監督が初めて日本で大ヒットを飛ばした文芸ロマンスです。何度もリバイバルされていますが、最初に公開されたのは1987年の夏、劇場は六本木の俳優座シネマテンでした。主演は若き日のヘレナ・ボナム=カーターと、昨年山岳事故で亡くなったジュリアン・サンズ。しきたりに囲まれた上流階級の女性が、自由な感覚の男性に惹かれていきます。実は公開時、自分は映画館で見逃してしまい、後からレーザーディスクで見たのですが、その映像美には本当に見惚れてしまいました。今回放送されるのは[デジタルリマスター]された美麗画質のマスターなので、現代基準で見ても、満足いただけるかと思います。
アカデミー賞ドラマ作曲賞に輝いた名曲も話題! ロングラン大ヒットを記録した奇跡の名作
➁[廃盤]『イル・ポスティーノ』
レア度…★★★☆☆

祖国チリを追われた偉大な詩人ネルーダは、ナポリ沖の小島に滞在するように。島でたったひとりの郵便配達人であり、老いた父親と暮らす純朴な男性マリオは、世界中からのファンレターをネルーダのもとへ届けるようになるが、ネルーダの温かい人柄に触れたり詩を学ぶうち、人間的に大きく成長していく。やがてマリオはそんなネルーダの励ましを受け、ひと目惚れした島いちばんの美女ベアトリーチェへ愛の言葉を送ろうとし……。
続いてもソフトが[廃盤]の名作『イル・ポスティーノ』(‘94)です。イタリアのナポリ沖にある小さな島で郵便配達をする島の男と、チリからやって来た高名な詩人が友人になっていく内容です。詩人のパブロ・ネルーダを演じるのが『ニュー・シネマ・パラダイス』(‘89)のフィリップ・ノワレなので、そちらのファンが流れてきている面もありますが、本作も長年愛されるにふさわしい出来です。少しずつ詩を理解し、やがては自身で詩を書くようになるマリオ役は、イタリアで有名だった喜劇俳優マッシモ・トロイージ。当時、心臓病を患っていた彼は、何と本作の撮影終了12時間後に息を引き取るという最期を迎えました。彼の名演もお見逃しなく。本編は[4Kデジタルリマスター版]になっています。
現代のハリウッドきっての美人女優、シャーリーズ・セロンが、実在の女性連続殺人犯を熱演した傑作
③[廃盤]『モンスター(2003)』
レア度…★★★★☆

1986年、フロリダ。ヒッチハイクをしながら売春する毎日に疲れ果てたアイリーンだが、ある少女と運命的に出会う。相手のセルビーは同性愛者で、家族や社会からつまはじきにされ、アイリーン同様、絶望と疎外感を募らせていた。2人は意気投合し、どこかで一緒に暮らそうと決心。やがてアイリーンは売春業を再開するようになるが、ある客に森の奥へ連れ込まれて暴力をふるわれた彼女は反撃した結果、相手を殺してしまい……。
3本目もソフトが[廃盤]でかなりのプレミア価格になっている作品『モンスター(2003)』(‘03)です。シャーリーズ・セロンがアカデミー賞主演女優賞を受賞した衝撃作なんですが、本当に彼女? と思うほど、別人のようなメイクになっています。彼女が演じるのは、アメリカ史上初の女性連続殺人鬼で、2002年に死刑執行されたアイリーン・ウォーノス。悲しくつらい生い立ちをしたアイリーンが、ひとりの女性と出会い、彼女との暮らしのために、事件を起こしてしまいます。見ていて、楽しいタイプの映画ではありませんが、もとになった人物がひょう依したかのようなシャーリーズ・セロンの演技は圧巻の一言。後に『ワンダーウーマン』(‘17)を撮るパティ・ジェンキンス監督の演出も、ドキュメンタリータッチで思わず引き込まれてしまいます。
初長編『オオカミの家』で一躍注目を浴びた異才監督コンビが手掛けた異色短編アニメ
④[未ソフト化]『骨(2021)』
レア度…★★★★★

「レオンとコシーニャは、2023年の建設工事中に見つかったこのアニメ映画の修復をサンティアゴ新美術館から委任されたことに感謝する。「骨」と題されたこの作品は1901年に制作され、作者は不明」というただし書きに続き、古めかしい白黒映画の上映が始まる。そこに映し出されるのは、ひとりの少女が人骨を使ってディエゴとハイメ(どちらもチリの歴史的有名人)の魂を呼び出そうとするなんとも不思議な儀式の様子だった。
ここからは[未ソフト化]の作品『骨(2021)』(‘21)です。一昨年、大ヒットした『オオカミの家』(‘18)と併映された、レオン&コシーニャ監督によるわずか15分の短編。話は、美術館建設に伴う調査で、1901年に制作された作者不明の世界初のストップモーション・アニメが発掘され、それは少女が人間の死体を使って謎の儀式を行っているものだった、という設定のちょっとややこしい作りの作品なのですが、これが見るとまあ圧巻なんです。それっぽい作りには、思わず本当に発掘されたのか?と信じてしまう人もいるのではないでしょうか? 権利の関係上、発売された『オオカミの家』のブルーレイには収録されず、手元に残したい人はWOWOWで録画するしかないという貴重作です! 『オオカミの家』と併せてぜひ、永久保存してください。
ベルリン国際映画祭で主演俳優賞、脚本賞の2冠に輝いたコメディドラマ
⑤[未ソフト化]『ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ』
レア度…★★★☆☆

アメリカ同時多発テロ事件の翌月の2001年10月。ドイツに暮らすトルコ移民クルナス一家の母親ラビエは、長男のムラートがパキスタンを旅行中、タリバンと間違われ、キューバのグアンタナモ米軍基地収容所に収監されてしまったと知らされ、ビックリ仰天。愛する息子を救うべく、弁護士ベルンハルトの助けを借りて必死の奔走を始めた彼女は、ついに時のアメリカ大統領G・W・ブッシュを相手取って訴訟を起こすこととなる。
こちらも[未ソフト化]の作品『ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ』(‘22)です。アメリカの同時多発テロの後に、本当にあった嘘のような話です。2001年、あの9.11の1か月後、パキスタンを旅行中のドイツに暮らすトルコ移民の青年がタリバンと勘違いされ、グアンタナモ基地に収容されてしまいます。息子が誤って収監されたことを聞いた母親は、電話帳で見つけた人権派弁護士に協力してもらい、ブッシュ大統領を訴えることにします。息子のためならとまったく物おじしない肝っ玉母さんの実話は拍手喝采間違いなしです。第72回ベルリン映画祭では主演俳優賞と脚本賞のW受賞を成し遂げています。
香取慎吾と岸谷五朗の共演で描くサスペンスコメディ、DVD化されていない貴重作は必見!
⑥[未DVD化]『香港大夜総会 タッチ&マギー』
レア度…★★★★★

若手カメラマン柴田は、黒社会の実態をルポにするというノンフィクションライターの立神とともに香港へと飛んだ。だが2人は麻薬取引の現場で犯罪組織に見つかり、命からがら逃げ出すはめに。立神は追手の目を欺くため柴田を女装させ、場末のナイトクラブへと逃げ込んだ。2人はそこでタッチ&マギーなるマジシャンコンビとして働くことになるが、その矢先、店で働く女性シンガー、コーラがタッチこと立神に恋してしまい……。
次はDVDにもなっていない貴重作『香港大夜総会 タッチ&マギー』(‘97)です。本作は、中国への返還直前の香港にやって来た日本人が麻薬取引に巻き込まれるドタバタコメディ。主演は香取慎吾と岸谷五朗。監督は90年代に『居酒屋ゆうれい』(‘94)など、ライトコメディを数多く手掛けた渡邊孝好。脚本は『私をスキーに連れてって』(‘87)や『木村家の人びと』(‘88)で絶好調だった一色伸幸が担当しています。そして香港映画ファンにうれしいのが『君さえいれば/金枝玉葉』(‘94)のアニタ・ユンが出ていること。これだけでかなりポイントが上がる人もいるのでは? ぜひ、早めの録画予約をお願いします!
森谷司郎監督×小川知子の主演で描いた東宝青春映画、昭和の名作を放送で楽しもう!
⑦[未DVD化]『別れの詩』
レア度…★★★★☆

とある会社に勤める斉藤康子。エリート官僚・山口伸夫との結婚を秋に控え、幸せで満ち足りた日々を送る彼女だったが、ある日、大学時代の元恋人であった安部が自殺したことを知り、ショックを受ける。学生運動のリーダーだった安部は、あるときデモの最中に逃走し、そんな彼に「卑怯者!」という非難の言葉を投げつけて、康子は安部と別れたのだった。一方、伸夫にも、自殺してこの世を去った元恋人があることを知った康子は……。
次もビデオ化以来、今回が初めての[HDテレシネ版]となる昭和の名作『別れの詩』(‘71)です。原作は昭和39年に芥川賞を受賞した柴田翔の「されどわれらが日々―」。結婚を間近に控える2人の男女。商事会社のタイピスト斉藤康子と、エリート官僚の山口伸夫が、お互いの過去を振り返りながら、愛とは何かを考えさせる作品になっています。監督は巨匠、森谷司郎。自分のリアルタイムでは『日本沈没』(‘73)や『漂流』(‘81)、『海峡』(‘82)など、いわゆる大作を数多く手掛ける人だったのですが、初期の人間ドラマも味わい深いものばかりで、こうしてオンエアされるのはありがたい限りです。懐かしい当時の風景などとともに、お楽しみください。
“ゾンビ映画の父”ジョージ・A・ロメロ監督による、世界を驚愕させたゾンビ映画2作品
続きましてはリマスターされたゾンビ映画の名作2本です。[4Kリマスター]の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(‘68)と[HDリマスター]の『死霊のえじき』(‘85)。監督は巨匠ジョージ・A・ロメロで、彼の代表作でもある「ゾンビ」三部作になります。
画も音も鮮明に! かつてない迫力でよみがえった“ゾンビ三原則”を確立させた傑作
⑧[4Kリマスター版]『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』
レア度…★★★☆☆

米東部のある地方をバーバラとその兄は父親の墓参りで訪れるが、現われた死体のような大男に襲われ、バーバラの兄は命を落とす。バーバラは急いで近くの民家に逃げ込み、初対面のアフリカ系青年ベンと合流する。TVやラジオによれば、一帯では生き返った死体が人間を襲っているという。民家にはその主ハリーとその妻、幼い娘、偶然近所にいて恋人ジュディと民家に来たトムがいた。一同は民家から脱出して避難所を目指そうとする。
『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(‘68)はロメロ監督のデビュー作。ピッツバーグで仲間らとCMを作っていたロメロ監督が、超低予算で作り上げたモノクロ映画です。死者がよみがえり、ゆっくり歩きながら人肉を追い求めるというオーソドックスなゾンビ・スタイルを確立し、全米ではドライブ・イン・シアターで大成功を収めました。ゾンビを語る上では必修科目のような1本といえるでしょう。この成功の後、何本かホラー映画を作った後、『サスペリア』(‘77)のダリオ・アルジェント監督と組み、ロメロ監督は『ゾンビ』(‘78)を完成させます。『ゾンビ』は世界中で空前の大ヒット。こちらの原題は『DAWN OF THE DEAD』。“ナイト”の次は“夜明け”だったのです。
ゾンビ三部作の完結編! よりハードな描写でゾンビ映画ファン必見の衝撃スプラッタ・ムービー
⑨[HDリマスター版]『死霊のえじき』
レア度…★★★☆☆

生き返った死体、ゾンビの群れによって文明が破壊された後のフロリダ州。地下洞窟にある施設では、ローズら軍人のグループと科学者サラら別のグループが共存していたが、上官が亡くなった後、ローズはサラらのグループを支配しようとする。サラやヘリパイロットのジョンらがそれに抵抗する中、ローガン博士はゾンビを飼いならそうと研究を続けていたが、実験用に捕まえたゾンビが施設の中で暴れたせいで施設内は大混乱に陥り……。
次にいよいよ三部作の最終章となる『死霊のえじき』(‘85)が公開されます。こちらの原題は『DAY OF THE DEAD』、つまり“死者の日”。すでにゾンビに支配された地球。わずかに生き残った人類がそれぞれの立場でサバイバルをしていきます。シリーズ中、最もスケールの大きな作品で、特殊メイクもトム・サヴィーニにしかできない、気合の入った完成度です。3作続けて観ると、女性が主人公、あるいは重要人物に配されていて、ロメロ監督の考えが理解しやすくなるかと思います。ぜひ、全作観ていただきたいと思います。
エディ・レッドメイン主演の新作ドラマ版も話題! F・フォーサイスの傑作小説が原作の1973年版映画
⑩[吹替補完版]『ジャッカルの日[吹替補完版]』
レア度…★★★★★

1963年、フランス。前年にアルジェリア独立を認めて以来、ドゴール大統領は保守過激派の組織“OAS”に命を狙われ続ける。そんな“OAS”は大統領を仕留めるべく、外部のプロを頼ることに。そして暗号名“ジャッカル”で呼ばれる殺し屋を50万ドルという高い報酬で雇うことにし、“ジャッカル”は計画の準備を進める。OASの不穏な動きに気付いたフランス当局はルベル警視を中心に、“ジャッカル”を懸命に捜し続ける。
最後に紹介するのは久々に[吹替補完版]が作られた暗殺映画の名作『ジャッカルの日[吹替補完版]』(‘73)です。軍事サスペンスを描かせたら、右に出る者がいなかったフレデリック・フォーサイスの原作を、『真昼の決闘』(‘52)で知られるフレッド・ジンネマン監督が、丁寧に演出した一級の作品です。フランスのドゴール大統領暗殺を依頼された謎の殺し屋ジャッカルの仕事を、劇伴なしで見せていきます。みごとなまでに感情移入させない作りは、今観てもかなり新鮮なはず。彼を止めようとするフランス警察との攻防もスリル満点です。吹替補完版のもとになったのは1998年にテレビ東京で放送されたバージョン。当時の地上波放送枠に収まらずにカットされ、吹替音源の存在しないシーンが約28分あり、今回、その部分を追加収録したと聞いています。テレビ東京版の声優が、約四半世紀を経て同じ役を再び演じているのも見どころ。ぜひ、エディ・レッドメイン主演の新作ドラマ版と併せて、チェックしてもらいたいですね。
次回、3月号激レア映画もレアな映画が盛りだくさんです。
どうぞお楽しみに!

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トップ画像(クレジット)/『香港大夜総会 タッチ&マギー』:©1997 日本テレビ・アミューズ・バップ・日本テレビ音楽