〈ぼる塾・酒寄希望〉イルカ親子の愛に“視聴開始1分で泣きそうに”【#エンタメ視聴体験記】
文=酒寄希望
皆さん、こんにちは。ぼる塾の酒寄希望です。
突然ですが、皆さんは動物のドキュメンタリー番組を自らの意思で見たことはありますか? 私は今まで見たことがありませんでした。世の中には面白い番組がたくさんあり、たどり着けないジャンルだったのです。正直、動物は生で見るのが一番感動すると思っていました。
しかし、私の夫は動物のドキュメンタリー番組が好きなのか、よく見ています。私がひとり遅めの昼ご飯に焼きそばを持ってテーブルに行くと、彼は自然界の動物の姿をTVで見ているのです。
私「何を見ているんですか?」
夫「この森を生きる鳥の一年…みたいな番組」
私「なぜ?」
夫「え? 面白そうだったから」
私「面白そうだったから…?」
失礼な私は「本当に面白いのか?」と心に思いながら、TVを見る夫の横で焼きそばを食べ始めます。
「早く食べ終えて、スーパーに買い物に行こう…」そう思った私はこんな感じで、スーパーに行く予定を立てながら焼きそばを食べ始めるのですが、気が付くと夫の隣で、森で生活する鳥の一年を真剣に見ているのです。結果、最後まで見てしまいました。
夫「面白かったね」
私「面白かったですね…て、もうこんな時間?! スーパーに行こうと思ったのに!」
毎回途中から見始めても面白くて最後まで見てしまうので、これはもう最初から自分で番組を選んで見てみようと思いました。それが今回の作品選びの始まりです。
“世界のイヌ科の動物たち、ホッキョクグマの素顔、ヌーの大移動を追う…そういえばヌーってなんで大移動するんだろう?”
私の中で“ヌー=大移動”のイメージでしたが、どうしてヌーが大移動をするのかを知りませんでした。
私「ぼる塾のみんなは何でヌーが大移動するのか知っているのかな?」
私は、メンバーのあんりちゃん、はるちゃん、田辺さんに「何でヌーが大移動するのか知っている?」とLINEでメッセージを送りました。すると、3人からすぐに返事がありました。
あんりちゃん「知らないです! 慣れの怖さを知っているからですかね? 同じ場所にずっといて危機感を失ったら頑張らなくなるから、子どもが増えるたびに新しい環境で戦っているとか」
田辺さん「ひとりだと心細いから?」
はるちゃん「まず、ヌーって何? 酒寄さんの友達?」
私はあんりちゃんと田辺さんには「実は私も知らないんだ」と返信し、“私の友人に大移動をする人がいる”と勘違いをしているはるちゃんにはヌーの画像を送り、「これがヌーだよ」と返信しました。
その後、あんりちゃんと田辺さんからは既読無視され、はるちゃんからは「ヌーって布を使っておびき寄せる種目のやつ?」とさらに返事が来たので、「それはヌーではなく闘牛だよ!」と教えてあげました。
このままヌーの大移動を追ってもよかったのですが、さらに調べていくと、とても気になる番組を発見しました。それが今回紹介する「BBC EARTH ナチュラルワールド~動物親子特集~ #1 母イルカの愛と勇気」です。ここで私の心をわしづかみにした番組の概要をそのまま引用させてもらいます。
私「なにこれ、面白そう!」
夫の言っていた「面白そうだった」という言葉が頭ではなく心で理解できた瞬間でした。
私「この番組に決めた! 早速見てみよう!」
この番組はパックたちイルカの家族がオーストラリアにある、シャーク・ベイを泳ぐ姿から始まります。泳ぐパックたちを背景に、シャーク・ベイに住むバンドウイルカの子育てがいかに命懸けかということを、ナレーションの滝川クリステルさんが教えてくれます。夏になると大量のイタチザメがやって来て、幼いイルカを手頃な餌として狙うのです。この説明を聞いて、開始1分ちょっとで私はもう泣きそうになりました。
※以下、作品内容のネタバレを含みます。未見の方はご注意ください。
パックの息子インディアは、ママのパックが大好きでぴったりと寄り添って泳いでいます。
私「インディアかわいいな。ママが大好きなんだな」
しかし、バンドウイルカの雄は4歳くらいになると家族の元を離れて、ほかの雄と放浪の旅に出なければならない定めがあるそうです。パックのもとにいるほかの家族はインディア以外みんな雌です。5歳半になってもまだ家族と一緒にいるインディアは非常に珍しいそうです。ここで私は恐ろしい事実を知ることになります。家族のもとを離れた多くの雄はその後、命を落としているという事実です。
私「なんで雄もずっと一緒にいちゃ駄目なの?」
私はついそう思ってしまいましたが、バンドウイルカにはバンドウイルカの事情があります。パックたち家族は優しく、4歳を過ぎてもインディアを追い出すことはありませんでしたが、今パックのおなかの中にいる子どもが生まれると、2頭同時に子どもの面倒は見られなくなってしまうので、インディアは追い出されてしまいます。
私「なんで? どうにかならないのかな?」
今のところずっと「なんで?」しか言わなくなっている私ですが、この後、バンドウイルカの命懸けの子育てを知ることになり、その「なんで?」は口にできなくなっていきます。
パックは出産時期が遅れ、大量のイタチザメに狙われた状態でお産をしなければなりません。研究チームがパックたち家族を見守っているときにも、家族は何度もサメに襲われそうになります。研究チームは長年このシャーク・ベイでパックたち家族を見守っていますが、パックたちがサメに襲われても手出しはできません。愛情を持っていても、手助けはできないのです。人間が自分の気持ちで目の前のイルカの未来を変えてはいけないのです。しかし、「サメが来たわ!」と声に出す研究チームの人の姿から、手出しできない無念さや、無事を祈る気持ちがひしひしと伝わってきます。
私「私がこれだけサメから無事に逃げてくれっていう気持ちで見ているんだから、研究チームの人たちにとってこの瞬間はもっとすごくつらいことなんだろうな…」
パックたちは家族の力でなんとかサメから逃げ切ります。バンドウイルカは家族を守るために集まり、行動し、その力で恐ろしいサメを撃退するのです。人間のようにコミュニケーションを取る姿も見られます。
私「すごい! パックたちすごいよ!」
ある日、研究チームがパックたち家族の姿を見に行くと、甘えん坊のインディアの姿だけありません。心配になって捜しに行くと、シャーク・ベイで評判の悪い雌親子と一緒に泳いでいるインディアが発見されます。
研究チーム「ニッキ(評判の悪い雌親子の母親の名)といるのはまずいわ」
ナレーションの滝川クリステルさんに「人生の選択を間違えてしまったインディア」とまで言われていたので、どれだけ意地の悪い親子とインディアは一緒にいるのだろうと思って見ていると、ニッキがインディアの捕った魚を取り上げて自分の物にしていました。
私「ニッキ許せん! インディア、その女はやめな!」
研究チームの人も「イルカとしてあるまじき行為。本来イルカはハンティングに対し、礼儀正しい生き物だ」と激怒しています。私はぼる塾の3人もこのシーンを見たらきっと怒り狂うと思いました。
インディアが意地の悪い親子と一緒にいる間に、母親のパックはようやく出産を迎えます。生まれた赤ちゃんは男の子で、名前は“サム”です。とても素敵で喜ばしいシーンですが、サムはサメのシーズンというタイミングの悪いときに生まれてきた子どもです。ここからパックの命懸けの子育てが始まります。
イルカの子どもが母親とはぐれることは死を意味します。パック自身、昔自分の子どもがサメの犠牲になった過去があります。イルカは仲間の声を聞いてコミュニケーションを取りますが、生まれたてのサムにはそれができません。なので、パックは出産後1週間何も食べず、常に息子を見失わないように気を付けています。
私「イルカの母親ってなんて偉大なんだ…」
息子のサムも生き残るために強くならなければいけません。生まれてすぐに息継ぎを覚え、本能でママのパックについていきます。サムは、生まれて3日後には迷子になってしまうといわれる深い海で生きていかなければいけません。“イルカって生まれてすぐにこんなに覚えなきゃいけないことがあるのか”と私は驚きました。
この番組は本当に見どころばかりで、生まれたてのサムがサメに襲われそうになったところをパックの娘が守ったり、サムが母親の声を聞き取れないのをいいことに、母親のふりをした若い雌イルカがサムをパックから奪い取ろうとしたりと、目が離せません。パックの家族たちとは別の家族の“波乗りママ”といわれる狩りの上手なイルカたちのハンティングの姿も必見です。
そんないろいろな出来事がある中、ある日、甘えん坊だったインディアがひょっこりパックたちの前に姿を現わします(意地の悪い親子と離れた後もインディアはいろいろありました)。
研究チームが見守る中、パックたち家族は温かくインディアを迎え入れます。サムも初めて会ったお兄ちゃんと一緒にうれしそうに泳ぎます。
私「ああ、良かった! インディアが家族のもとに戻った!」
しかし、この感動のシーンでもナレーションは「インディアと家族との永遠の別れは迫っている」と、やはりバンドウイルカの雄は家族と一緒にいられない宿命にあることを視聴者に教えてくれます。この幸せは永遠ではないのです。
私「インディアと家族が一緒にいられるこの幸せな瞬間を胸に刻んでおこう…」
番組の終盤、季節は変わり、冬になっています。冬になるとイタチザメは去ります。研究チームは元気に泳ぐパックたち家族の姿を見つけます。パックたち家族は危険な数カ月を乗り切ったのです。赤ちゃんだったサムも少し大きくなり、たくましくなっています。
私「ああ、良かった! サメから逃げ切ったんだ!」
私が喜んでいると、研究チームがあることを発見します。
研究チーム「パックがサメにかまれている!」
なんとパックの体にはサメにかまれた大きな傷があったのです。パックたち家族は安全にサメから逃げられたのではなく、修羅場を潜り抜けていたのです。息子のサムは無傷です。パックは自分の命を張ってサムのことを守っていたのです。
私「パック…! パック! パック! 生きていて本当に良かった…!」
私はこの番組から多くのことを学びました。イルカの家族の絆、研究チームの思い、パックの偉大さ…。そして言葉にできない大きな何か。
私はこの感動を伝えたくて、見終わってすぐに夫に話したのですが、説明途中で思い出し泣きしてしまい、全然言葉になりませんでした。
私「ううっパックが…すごくって…うううー…」
夫「泣くほど感動するすばらしい内容だったんだね」
力技で番組のすばらしさをお伝えすることになってしまいました(笑)。この文章を書きながらまた思い出し泣きをしているので、この連載が文章に書いてお送りするもので良かったです。
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クレジット(トップ画像)「BBC EARTH ナチュラルワールド~動物親子特集~ #1 母イルカの愛と勇気」:ⓒJames Blake 2010