見出し画像

ミュージカルファン待望の「ジェイミー」から「ツダマンの世界」、中川大志が二役を熱演した話題作まで “ステージ派”なら押さえたい! 3月の必見舞台5本

こんにちは。WOWOW社員の福井です。今回は3月に放送される、WOWOWでしか見られない舞台5作品(※)を取り上げます。
すごく見たい舞台でも、チケットが取れなかったり上演会場が遠かったりして生で見られないことってありますよね。WOWOWはそういった作品も映像で全国の方にお届けする存在でありたいと思っています。
本コラムも、舞台好きな皆さんの鑑賞をさらに豊かにできれば幸いです。(注:見どころに触れている箇所もあります!)
コメント欄もご利用いただけまーす♪
(※執筆時点でDVD等は確認できない、放送時期に字幕ありで見られるのはWOWOWだけである作品、など)
表紙の画像:『歌妖曲~中川大志之丞変化~』写真:田中亜紀
★2月の必見舞台4作品はこちら!
WOWOWへのご加入はこちら

【Don't miss out! 3月のWOWOW舞台5選】

①熊川哲也 Kバレエ カンパニー「ロミオとジュリエットin Cinema」(2022) 3月4日(土)後5:00

2022年のKバレエ作品2本を同日放送・配信。
 『ロミオとジュリエット』では若く純粋な愛が、『カルメン』では狂おしくも美しい愛が描かれます。それぞれのすばらしい音楽と芸術監督の熊川哲也が意匠を凝らした演出で、2作品まったく違った鑑賞体験になると思います。いずれもトップクラスのダンサーの表現力によって、小説を読んでいる時のように登場人物の気持ちを感じることができます。

©Toru Hiraiwa

 『ロミオとジュリエット』で特に印象に残ったのは飯島望未のジュリエットでした。飯島は米国の名門ヒューストン・バレエ団でプリンシパルを務め、2021年の帰国後にKバレエ カンパニーに入団しました。踊りの隅から隅までジュリエットの気持ちが流れているようでした。ハイライトを挙げると止まらなくなりそうですが、見終わった後に思わず漏らしてしまったのは「そこにジュリエットが生きていた」という一言でした。ロミオとジュリエットが愛を確かめ合う有名な〈バルコニーのパ・ド・ドゥ〉では、床からトゥシューズが離れるツッという瞬間にも恋心がはじけているようでした。ロミオ役の山本雅也が魅せる跳躍力と、物語を通して描かれる心のうねりの表現もすばらしかったです。

熊川哲也 Kバレエ カンパニー「ロミオとジュリエットin Cinema」(2022)の詳細はこちら

② 熊川哲也 Kバレエ カンパニー「カルメンin Cinema」(2022) 3月4日(土)後7:15


©Makoto Nakamori

 Kバレエ カンパニーが『カルメン』を初演したのは2014年。それまでも熊川哲也による古典バレエの改訂版は高く評価されてきました。本作は、さらなるステップとしてオペラから題材を得て創作されたオリジナル作品で、Kバレエ カンパニーの歴史を語る上でも欠かせません。スペインを舞台に、工場の前や酒場といった人々の集まる場所で物語が展開されます。そのため群舞シーンが多く、ドラマが動く時の群衆の演技も丁寧に作られているなと思いました。カルメン役の日髙世菜は9月号で紹介した「熊川哲也 Kバレエ カンパニー『白鳥の湖』」でオデット/オディールを演じていました。その時には静けさの中で際立つ背中と腕の動きが印象的でしたが、今回は躍動感や足を大きく使った誘惑の表現が圧巻でした。演劇的バレエの傑作をぜひご覧ください。
熊川哲也 Kバレエ カンパニー「カルメンin Cinema」(2022)の詳細はこちら

③松尾スズキ「ツダマンの世界」 阿部サダヲ 間宮祥太朗 江口のりこ 村杉蝉之介 笠松はる 見上愛/皆川猿時 吉田羊 他 3月18日(土)後6:00 


 12月の先行配信もたくさんのご視聴ありがとうございました。
 松尾スズキの新作に豪華キャストが集まりました。昭和の小説家ツダマンこと津田万治に阿部サダヲ、その弟子で自己愛と名声欲の強い長谷川葉蔵役には間宮祥太朗。物語の語り部となる女中・オシダホキ役に江口のりこ、津田万治の妻・津田数役に吉田羊。各役の個性は役者陣の演技によって一段と奥深いものになっていました。せりふに散りばめられた愛や悲しみの表現でドラマに潤いをもたらすだけでなく、突如表面化される不気味さ、恐しさ、ユーモアが印象的です。それぞれのパーソナリティーの奥底に隠れていたものが、ぬうっと顔を出すような瞬間がありました。人間関係が少しずつゆがんでいく様子が絶妙です。
 最後まで「ツダマンの世界とは?」という問いが続きました。厳しい育ての母にいびられ反省文を書かされていた幼少期、戦争で夫を亡くした女性との結婚、戦争とそれでも模索し続けた”芸術の力”、自身の評価を気にして抱く焦燥感、弟子に対して抱く嫉妬…と、いろいろな出来事と表情が見えるからこそ一言で説明できるものではないなと。
 江口のりこと吉田羊、それぞれの空気感が印象的です。江口は、淡々と語っているようなのに重心がどっしりと安定していてじっくり耳を傾けてしまいました。吉田は、決めのせりふの迫力が圧巻で、周りの空気が震動しているようにさえ感じました。
 タイトルからは想像ができないほどの広がりのある脚本と演技。解釈は見る人によって多様なのではないかと思います。濃密な人間ドラマをお見逃しなく!

松尾スズキ「ツダマンの世界」 阿部サダヲ 間宮祥太朗 江口のりこ 村杉蝉之介 笠松はる 見上愛/皆川猿時 吉田羊 他の詳細はこちら

④ミュージカル「ジェイミー」 3月21日(火・祝) 
森崎ウィン Ver.  後6:00、髙橋颯 Ver.  後9:00


 原題は”EVERYBODY'S TALKING ABOUT JAMIE”。2017年にイギリスのサウス・ヨークシャーにあるシェフィールド劇場にて開幕するやいなや異例の大ヒットを記録。すぐにロンドン・ウエストエンドで開幕し、上演が続きました。勢いは止まらず、2021年には映画化、今年はUK & Ireland Tourも予定されています。2011年、イギリス BBCで放送されたドキュメンタリー ”Jamie: Drag Queen at 16”をベースに作られています。 
 主人公はドラァグクイーンになるという夢を持っている16歳のジェイミー・ニュー。高校のプロムに”自分らしい服装”で行くことを宣言します。戸惑いを隠せず不器用になる周囲の友人、父親との確執、差別など、さまざまな困難が立ちはだかります。それでも自分らしく生きることを貫こうとします。         
 私は2018年にロンドンで初めて観劇しました。ポップな音楽とダンスで彩られているけれど、その真ん中で小さな声や人間が打ち勝てない弱さが繊細に描かれていました。どうやって観客とイメージを共有するか、いかに味わったことのない感動をもたらすかといった舞台演出のアイデアは無限であることを再認識した舞台でもあります。 
 大きい声、強い声にかき消されてしまう小さな声に対する気持ちが、登場人物も、見る側も変化する舞台だと思います。また、愛せる楽曲の数々も特長です。私の場合、劇場を出た瞬間からまた♪Everybody's Talking About Jamieが頭の中で流れていました。 
 そして、今回お届けする日本初演版も豪華な顔ぶれです。主人公 ジェイミー役は森崎ウィンと髙橋颯(WATWING)のWキャスト。ジェイミーの母親 マーガレット役に安蘭けい、ヒロインのプリティ役に田村芽実と山口乃々華、ディーン・パクストン役に佐藤流司、矢部昌暉(DISH//)、そして保坂知寿、今井清隆、石川禅ら絶対に見逃せない組み合わせが並びます。 
 2バージョンの詳細は以下からご覧ください。ミュージカルを愛する皆様に新たな出会いを提供します!
※ディーン役の矢部昌暉(DISH//)は収録日にキャスト変更のため当番組での出演はありません。

ミュージカル「ジェイミー」の詳細はこちら

⑤『歌妖曲~中川大志之丞変化~』 3月25(土)後6:00


 タイトルを見て「どんなステージなのだろう?」と想像を巡らせた方も多いのではないでしょうか? コメディからシリアスまで幅広く手掛ける倉持裕が作・演出を務め、中川大志に書き下ろした本作。醜い男が闇医者の施術により絶世の美男子に変身し、昭和の歌謡界で、家族や世間に対する復讐劇を繰り広げます。シェイクスピアの「リチャード三世」をモチーフにしています。出演者には、松井玲奈、福本雄樹、浅利陽介、中村 中、山内圭哉、池田成志ら舞台で活躍する実力派が勢ぞろい。
 中川は二役を演じています。大手芸能事務所を経営する鳴尾一族の末っ子に生まれるも、その醜い容姿から存在を闇に葬られていた鳴尾定。彼は、闇医者の手で美男子となり桜木輝彦として歌謡界を席巻します。定と桜木のどちらを演じているかで、劇世界もガラッと変わります。定は、恨みとひがみといったダークなものを抱えています。ただ、家族へのゆがんだ愛情も滲み出る瞬間があり痛ましい…彼の企てる復讐を完全に悪とは言えないのでは、と問う方も多いのではないでしょうか。一方の桜木が魅せる昭和歌謡のシーンは、ポップな色合いのセットと衣裳、それに中川が研究と稽古を重ねた歌とダンスで光を放ちます。
 ラストシーンには圧巻の演技が待っています。舞台でしかできない表現、エンターテインメント性が詰まった一作。これまであまり舞台を見たことがない方にもお薦めです!

『歌妖曲~中川大志之丞変化~』の詳細はこちら

WOWOWステージの放送全番組リストはこちら

終わりに…

 最近プライベートで見た作品のなかで印象に残ったのは、ブロードウェイ・ミュージカル「ドリームガールズ」、木ノ下歌舞伎「桜姫東文章」、ピーピング・トム「マザー」、「ケンジトシ」などです。ところで、3月27日はユネスコが設立した国際演劇協会(ITI)が設定した“World Theatre Day”です。“世界の国々が舞台芸術を通して平和を願う日”として、各国の演劇人がメッセージを発信したり関連のイベントが開催されたりしていますね。
 3月の豪華なラインナップをまとめて紹介するチラシなどを展開予定です。劇場などで偶然目にした方がいらしたらぜひご覧くださいね。WOWOWは、放送ではもちろん、配信でも楽しめます。WOWOWオンデマンドの詳細・お申し込みのステップはこちらから。
 今月も、もう一度見たい作品がある皆様も、劇場に見に行けなかった作品がある皆様も、WOWOWステージをお楽しみいただければ幸いです。

▼WOWOW公式noteでは、皆さんの新しい発見や作品との出会いにつながる情報を発信しています。ぜひフォローしてみてください

この記事が参加している募集

私のイチオシ

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!