〈ぼる塾・酒寄希望〉ぼる塾は“よしもとの『セックス・アンド・ザ・シティ』”【#エンタメ視聴体験記】
文=酒寄希望
皆さん、こんにちは。ぼる塾の酒寄希望です。今回から新連載を始めることになりました。初めましての方もいらっしゃると思うので、自己紹介をさせてください。皆さんは、ぼる塾という女芸人トリオを知っていますか?
“よく笑い、よく食べ、よく、「まあね~」と言う人がいるグループ”
そう言ったら、頭に浮かぶでしょうか? 私はそのぼる塾の4人目のメンバーです。
皆さん「トリオなのに4人?」
ぼる塾は元々あんりちゃんとはるちゃんのコンビ「しんぼる」と、田辺さんと私のコンビ「猫塾」という2組のコンビでしたが、合体して「ぼる塾」になりました。結成時、私は息子を出産したばかりだったので、育休中という形での参加になりました。しかし、結成して3人が一躍有名になり、世間では“トリオ”のイメージがついてしまいましたが、最近は私も仕事に復帰し、文章を書いたり、少しずつではありますが4人での活動も増えているので見守ってもらえたらうれしいです。
この連載は“WOWOWオンデマンドのコンテンツから好きな作品を見て感想を皆さんにお伝えする”というものです。自分の好きな作品であれば何でもいいということで、私が記念すべき第1回に選んだ作品は、映画『セックス・アンド・ザ・シティ』('08)と、第2作『セックス・アンド・ザ・シティ2』('10)です。
有名な作品ですが、皆さんは『セックス・アンド・ザ・シティ』を知っていますか? 「酒寄さんの存在は知らなかったけど、『セックス・アンド・ザ・シティ』は知ってる!」という方が多いのではないでしょうか。私自身も耳にしたことはありましたが、作品を見たことはありませんでした。
DVDのパッケージを見たとき、「多分、ニューヨークに住むかっこいい女性たちが繰り広げるオシャレな話だろう」と思ったため、「自分とは縁のない作品だろう」と見ていませんでした。ですが、ぼる塾のメンバー・田辺さんの一言で、『セックス・アンド・ザ・シティ』は私にとって一気に、気になる映画になりました。
田辺さん「ぼる塾は“よしもとの『セックス・アンド・ザ・シティ』”よ!」
あのかっこいい4人の女性たちとぼる塾は同じだと言うのです。
私「ということは、あの4人は“ニューヨークのぼる塾”ということ?」
田辺さん「そうなるね」
正直、人数しか共通点がないだろうと思っていましたが、見始めたら彼女たちとぼる塾は実は共通点があるかもしれないと興味が湧きました。ですが、TVドラマはシーズン6まであり、見始めるのに躊躇《ちゅうちょ》していたとき、メンバーのあんりちゃんがとても良いことを教えてくれました。
あんりちゃん「映画版を見たことはありますか? 面白かったですよ」
「そうか、映画版がある!」私はあんりちゃんにTVドラマを見ていなくても映画は楽しめるものなのかと聞きました。
あんりちゃん「TVドラマは見ていないんですけど、映画版は面白かったですよ。1と2を一気に見ちゃいました」
私「TVドラマを見ていなくても分かるなら見てみようかな」
あんりちゃん「おすすめですよ、すごく面白かったです!」
私「ちなみに『セックス・アンド・ザ・シティ』の4人とぼる塾って似てる?」
あんりちゃん「いや、全然似ていないですよ! 彼女たちは『ドラゴンボール』の話とかしないですし」
こうして私は『セックス・アンド・ザ・シティ』を見ることになったのです。
映画はTVドラマから4年後を描きます。本編の序盤でこれまでの4人の人生が簡潔に説明されるため、おおまかな内容を知った上で見始めることができます。
私「すごく過激で劇的な人生を送っている…私は果たしてついていけるのだろうか」
本作に登場するキャリー、サマンサ、ミランダ、シャーロットの4人はTVドラマシリーズから4年後、それぞれの暮らしが一変。子どもがいたり、仕事の関係で引っ越したメンバーがいたりと、昔のようには頻繁に会えなくなっていた彼女たちが再会し、久しぶりに一緒に向かうのはジュエリーのオークション会場…というところから映画版は始まります。ちなみに、ぼる塾とはまったく違います(笑)。
「やっぱりこの映画はきらきらと輝く彼女たちを見て、それに憧れる映画なのだろう」と思いましたが、それは私の勘違いでした。『セックス・アンド・ザ・シティ』には多くの食事シーンがあり、ご飯を食べながらとにかくおしゃべりを楽しみます。そのシーンを見て私はあることに気が付きました。彼女たちの話すときのテンションがぼる塾の4人とまったく同じだということに。
「女性が4人集まってご飯を食べるとこうなるよね」と共感し、彼女たちの存在が一気に身近なものになりました。仲間の近況に盛り上がり、自分の近況もあけすけに語り、自慢したいときには「これは自慢だからうらやましがって!」と、ストレートに仲間に話します。
私「それぞれの環境は変わっても、友情は変わらないんだな」
4人は一見、仕事のこと、恋愛のこと、夫婦のこと、子どものこと、それぞれお互い話題が合わなさそうに見えますが、皆大好きな友達の出来事は真剣に聞き、喜んだり、怒ったりして盛り上がります。大好きな友達のことなら何でも知りたいし、どんな出来事も共有します。
また『セックス・アンド・ザ・シティ』は4人それぞれにさまざまな出来事が起こります。幸せの絶頂で大切な人に裏切られて、笑うことすらできなくなってしまったり、自分が欲しかったものをすべて手に入れるも「こんなに幸せなんだからきっとこれからものすごく嫌なことが起こる」と、幸せが怖くて泣いたり、自分のことが一番だったのに、恋人のために心身ともに自分を犠牲にしてしまったり。時には怒り過ぎて、自分が何をしたいのか分からなくなってしまったり…そんな場面が数多く登場します。
彼女たちはたとえ自分が不幸のどん底にいるときでも、仲間のピンチには駆け付け、励まし、力になります。また、仲間にとても幸せなことが起こると、自分が悲しい時でも喜び、全力で祝福します。彼女たちは友達の幸せに嫉妬したりせず、友達の幸せが自分の幸せを吸い取っているという錯覚に陥ることはありません。仲は良くとも、“自分の人生は自分の人生”“友達の人生は友達の人生”と、分別もしています。そんな彼女たちを見ている中で、私は特に好きなシーンがあります。
主人公のキャリーが大みそかの夜に寝ていると、友人のひとり・ミランダからの電話で起こされます。ミランダは現状に耐えられずキャリーについ電話をしてしまうのですが、「夜中にごめんね」とすぐに電話を切ります。キャリーはタクシーもなかなか捕まらない大みそかの夜に、なんとかミランダの家まで駆け付けて一緒に新年を迎えます。このシーンを見て、私は田辺さんに関するこんなエピソードを思い出しました。
私の息子が、生まれて初めてのディズニーランドにぼる塾の3人と一緒に行く予定だった日、天気が大荒れになり結局行くことができませんでした。しかし、田辺さんは悪天候でタクシーが捕まらない中、ダイヤの乱れている電車を駆使して、「ミッキーに会えないならせめて田辺を!」と、息子に会いに来てくれたのです。
あの日、田辺さんは息子のために駆け付けてくれたのですが、私がとても救われました。田辺さんは息子のミッキーであり、私のキャリーでした。
『セックス・アンド・ザ・シティ』の彼女たちが友達のために行動するとき、私はぼる塾のメンバーを思い出します。
あんりちゃんは自分が嫌な思いをしても「ほっとけばいいんです!」と気にしないのに、仲間の誰かが嫌な思いをすると、「許せん!」と言って、仲間に嫌な思いをさせた相手を想像し、その想像上の相手と相撲を取って投げ飛ばしてくれます。
はるちゃんは私が舞台で余計なジョークを言ってドンズベリをしても、絶対に逃げずに隣に立ち続けてくれます。フォローはしてくれませんが、私の隣で無言で一緒にすべり続けてくれるのです。これは本当に勇気がある人しかできないことだと思います。
「私たちは“よしもとの『セックス・アンド・ザ・シティ』”だ」
私は心からそう思いました。映画『セックス・アンド・ザ・シティ』を見終わると、「キャリーたちにまた会いたい」となり、2作目もすぐに見ました。2作目では4人の生活がさらに変化しますが、それでも4人は4人のままです。食事をともにし、楽しみながら、たくさんおしゃべりをします。彼女たちは変わり続けながら、変わらない友情を私に教えてくれました。
私は映画版を見終わって、田辺さんにすぐ連絡をしました。
私「映画版の『セックス・アンド・ザ・シティ』見たよ、面白いね! 田辺さんが言うように確かに私たちは“よしもとの『セックス・アンド・ザ・シティ』”だよ」
田辺さん「実は私、『セックス・アンド・ザ・シティ』見たことないのよ。面白い?」
まさかの見ていなかったとは(笑)! 田辺さんには「本当に面白いからぜひ見て!」と言いました。
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『セックス・アンド・ザ・シティ』:Sex and the City ⓒ 2008 IFP Westcoast Erste GmbH & Co. KG.TM New Line Productions, Inc. Package Design&Supplementary