オーストリアのお菓子〝ザッハトルテ〟が出会いをくれた、王室皇紀エリザベートの勇ましいミュージカル【#エンタメ視聴体験記/ぼる塾・酒寄希望】
作品との出会いはタイミングだと思います。
先日、劇団四季のミュージカル「美女と野獣」の公演を観に行きました。そこでわたしは衝撃を受けました。
わたし「これはもう演技じゃない…本人がいる。全員本人」
わたしはミュージカルに疎く、鑑賞前は
わたし「ミュージカルってなぜあえて歌うんだろう。会話では駄目なのだろうか」
そんな感情すら少し抱いていました。しかし、鑑賞後は、
わたし「歌に乗せると想いは強く届く!!」
感動し、歌うことの大切さを知りました。
そして、また別の日。
田辺さん「作家の千早茜さんがぼる塾にウィーンのお土産をくれたよ」
そう言って、ザッハトルテというオーストリアのチョコレートケーキをくれました。
わたし「何これおいし過ぎる!」
外側のチョコレートはシャリっとしており、初めての食感。生地は驚くほどしっとり、中にはジャムが入っています。ケーキに気品があり過ぎて、わたしまで高貴な人になった気分です。あまりのおいしさに調べると、
わたし「…王室御用達のデザートなのか。高貴な気分になるはずだわ。オーストリアの王室とわたしがザッハトルテで今つながるなんてすごいことだよ」
わたしはザッハトルテを通じて人生で初めてオーストリアの王室を想像しました。
今回選んだ「ミュージカル『エリザベート』コンサート in シェーンブルン宮殿」は、劇団四季のミュージカルとザッハトルテがほぼ同時にわたしに影響を与えなければ、恐らく人生で出会うことがなかった作品です。今気になる2つのコンテンツが偶然にも合体していたので選びました。
ミュージカル「エリザベート」は、若くしてハプスブルク家に嫁いだ美貌のオーストリア皇妃エリザベートの物語であり、初演から30周年を迎えたウィーン生まれの世界的ヒット作品です。
今回の作品は、世界文化遺産にも登録されているシェーンブルン宮殿での野外コンサート形式で行なわれています。知ったように書いていますが、わたしはシェーンブルン宮殿が世界遺産だということをこの作品の概要欄で知りました。
わたし「ハプスブルク家について習ったはずなのにハプスブルク家という単語しか記憶にないけど理解できるだろうか」
わたしは世界史を選択していましたが、その理由は「広く浅い方が暗記しやすい」という理由からでした。なぜ、こんなに恥ずかしいことをわざわざ告白しているかというと、この作品にわたしの魂は震えました。ですから、知識不足を心配して視聴しない人を少しでも減らしたいのです。
まず、ストーリーが想像していたものと違いました。
この作品はオーストリア皇妃エリザベートとオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフとトート(死)の奇妙な三角関係の物語です。彼女の近くには常にトート(死)という存在が寄り添っています。死とは、死ぬということです。イケメンが死を演じており、エリザベートを誘惑します。見ている分には、イケメンが誘惑しているだけなのですが、この誘いを受けてしまうとエリザベートは死にます。しかし、このトートがとても格好良いのです。彼女にとって死とはそれほど魅力的であると思うと、ラブシーンにも重みがあります。
エリザベートは天真らんまんな少女時代から、うっすらと死にたがっています。そして皇妃となってからもずっとずっと死にたがっています。しかし、彼女はトートに翻弄されながらも、生きることを選択し続けます。義理母の皇太后にいじめられても、夫である皇帝が守ってくれなくても、王室で孤立しても彼女は生き続けます。
エリザベートは死にたいけど死にたくないのです。なぜなら彼女はすべてが欲しいからです。彼女が求めるものは0かこの世のすべてなのです。
ひどい仕打ちに耐え続けた彼女ですが、自分の子どもと引き離されて変わります。皇帝に、「皇后か自分か選べ」と最終通告をし、自分の持つ美しさを武器にしてのし上がっていく決意をします。
それからしばらくし、皇帝の前に再び現われたエリザベートは恐ろしいほど美しくなっており、(元々美しかったのですが、さらに驚くほど美しくなります)あまりの美しさに皇帝は後ずさります。エリザベートは歌います。
「勝ちたいならわたしにも勝たせて」
エリザベートが皇帝に対して歌うシーンのこのフレーズは墓場まで持って行こうと思うほどに好きです。歌う彼女があまりにも勇ましく美し過ぎて涙が出そうになりました。
ここからエリザベートは皇帝を後ろ盾にし、どんどん力を付けていきます。そして狂っていきます。
「私は戦いすべてを勝ち取ってきた。でも何もない。救いは奈落。本当の自由が得られるのは狂気。でもわたしは狂気に至る勇気がない」
ちなみにこの作品は、エリザベートを暗殺したルキー二という男性の、「彼女が望んだから殺した」という告白から始まります。エリザベートが死ぬことが最初から分かっていながら、結末は死という事実を超えてきました。
もちろん、この作品はフィクションであり、「本当の彼女のことは誰も知らない」と、作中でも歌われています。美し過ぎたエリザベートは周りの想像力をかき立てる女性として生き、亡くなった後もこうして多くの人の想像力をかき立て続ける女性なのです。きっと、想像された分だけ彼女は存在します。何人ものエリザベートがいるのです。そして、わたしの中にはもう、わたしだけのエリザベートが存在する気がします。エリザベートに触れると、きっとあなただけの彼女があなただけにほほえみます。
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▼11月30日(土)後8:00から放送・配信の「ミュージカル『モーツァルト!』ウィーン版」も併せてチェック! 詳しくはコチラ
おわりに・・・
『エリザベート1878』
エリザベートという存在に興味を持ち、こちらの映画も鑑賞しました。40歳の誕生日を迎えた彼女の1年間を描いた作品なのですが、この物語は彼女が自分自身を守るためのお話だと思いました。エリザベートは呼吸をしているだけで周りの人たちに影響を及ぼす女性です。とにかく周りの人を振り回します。しかし、一番彼女に振り回されたのは彼女自身なのかもしれません。周りから美しいというイメージで担ぎ上げられ、そこをもがき苦しむ彼女の姿は見ていて女性は感じるものがあると思います。視聴したときの自分の心情でまったく違う感想を持つ気がします。エリザベートはそういう女性なのかもしれません。
「エルズベス シーズン1」
犯人が最初から分かっているコロンボ形式の推理ドラマです。作品のサムネイルに映っていた女性がかわいらしかったので視聴を始めたのですが、とても面白いです! 主役のエルズべスは今まで私が見たことのないタイプの名探偵で一気にファンになりました! 彼女は不思議ちゃんとしか言いようのない女性なのですが、そのチャーミングな話し方で名推理をし、犯人を追い詰める姿がとても格好良いです。しかも本職は弁護士! おとぼけな彼女とのギャップがすご過ぎます! 彼女の独特のファッションやニューヨークの街並みなど、見どころが満載です。推理物ですが身構えずに見ることができるので、イッキ見すること間違いないです。
「小林聡美NIGHT SPECTACLES チャッピー小林と東京ツタンカーメンズ」
俳優の小林聡美さんが人生で初めて開催したコンサートの配信です。小林聡美さんの歌声はすばらし過ぎます!! 彼女が歌うディープな昭和歌謡の世界に魅了されました。わたしはギリギリの昭和生まれなので昭和の記憶はないのですが、昭和ってオシャレでかわいくて大人っぽい時代だったのだなと思いました。ゲストの阿部サダヲさんとのデュエットもすばらしく、カラオケに行って自分も歌いたくなりました。また、歌の合間のトークの時間も面白く、流石小林聡美さんです!! しかも、演出は小泉今日子さん! 豪華過ぎます! 世代の人も、そうでない人も昭和歌謡の世界にハマってしまうコンサートだと思います。
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