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『スタンド・バイ・ミー』はポケモン?大人になっても失わないものについて【#エンタメ視聴体験記/ぼる塾・酒寄希望】
お笑い芸人・ぼる塾の酒寄希望さんが、WOWOWの多岐にわたるジャンルの中から、今見たい作品を見て“視聴体験”を綴る、読んで楽しい新感覚のコラム連載企画「#エンタメ視聴体験記 ~酒寄希望 meets WOWOW~」。
今回は、スティーヴン・キングの中編小説を原作に少年たちの交流と成長をみずみずしく描いた名作映画『スタンド・バイ・ミー』を見た体験を酒寄さんならではの視点で綴ります。
文=酒寄希望
ある日、わたしは映画『スタンド・バイ・ミー』を見ていました。もう何度も繰り返し見ている作品です。すると、見終わったあとで夫が話しかけてきました。
夫「今『スタンド・バイ・ミー』見てた? すっっっごくいい映画だよね!」
わたしは夫の意外な発言に驚きました。彼がアクションとコメディ以外の映画を見るイメージがなかったのです。
わたし「失礼ですけど、〇〇さん(夫の名)が『スタンド・バイ・ミー』を見ていることに驚きです」
夫「確かに見てなさそうだよね。でも、オレはポケモン好きだから。だって『スタンド・バイ・ミー』はポケモンだよ」
大人気ゲーム、ポケットモンスター。初代のポケットモンスターを起動し、主人公の自宅テレビを調べると、
おとこのこが 4人 せんろのうえを あるいてる……
こんな言葉が出てきます。これは『スタンド・バイ・ミー』のワンシーンなのです。
夫「あれが『スタンド・バイ・ミー』だと知ったとき、ポケモンをやる上で見ないといけないと思ったんだ。見たら感動した。理想の友情があった」
わたし「わかります。理想過ぎるほどの友情ですよね」
夫「そう、理想過ぎる。でもそこがいい。オレはメガネの少年が好きだな。無鉄砲で」
わたし「テディですね。わたしは4人のリーダーっぽいクリスが好きです」
夫「わかる! クリスはまさに理想の友達。憧れるよ。憧れで終わっちゃうけど」
わたしが『スタンド・バイ・ミー』を見たきっかけは、中学時代。自分の中で映画ブームがきて片っ端から見るようになったとき、母親から教えてもらいました。
わたし「お母さん!『スタンド・バイ・ミー』感動した! 中でもクリス! クリスが格好良い!」
母「クリスいいわよね。リヴァー・フェニックスっていう俳優さんよ」
わたし「リヴァー・フェニックスっていうんだ」
母「でも、リヴァー・フェニックスって若くして死んじゃったのよ。残念よね」
わたしはなんとも言えない気持ちになりました。その気持ちを含めて、この作品はわたしの中で特別です。
『スタンド・バイ・ミー』は、少年たちのひと夏の成長物語です。1959年、オレゴン州の田舎町に暮らす12歳の仲良し少年4人組。
主人公のゴーディは物語を作ることが好きな真面目な少年。春に兄を事故で亡くし、自慢の息子を失った両親から冷たく扱われています。
クリスは4人のリーダー的存在。ゴーディの親友です。家庭環境が悪く、町のみんなが将来は悪者になると信じています。そして、彼自身も。
メガネのテディは怖いもの知らず。お父さんから虐待を受けています。耳を焼かれた過去があり、彼の耳はただれています。
バーンはぽっちゃりした男の子。のろまで臆病でうっかり者で、みんなのいじられ役です。
ある夏の日、彼らは行方不明になった少年の遺体が森にあるという噂を聞きます。遺体を発見できれば英雄になれると思い、遺体探しの冒険に出発します。
4人の少年、それぞれに魅力があるのですが、わたしは何度見てもリヴァー・フェニックス演じるクリスを目で追ってしまいます。夫も言っていましたが、クリスはまさに理想の友達像です。
クリスは家庭環境が悪く、町のみんなが将来は悪者になると信じています。そして彼自身もそう思っています。しかし、彼は誰よりも友達想いです。列車が迫っているのにテディが「肝試しだ」と言って、全く線路から降りないときは力づくで引きずり下ろし、
クリス「死にたいのか!!」
と、本気で怒ります。そして、すぐにテディへ仲直りの握手を求めるなど、彼は友達に対し、どう行動するべきかをわかっています。12歳の少年とは思えないほど、彼は周りが見えているのです。
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特に印象的な場面があります。線路を歩きながらゴーディとクリスが2人で話す、大きな展開があるわけではないシーンです(この作品は冒険の中でいろんな体験をします)。クリスがゴーディに、「中学生になったら君ともお別れだ」と言い出し、ゴーディは突然のクリスの発言に怒ります。
クリス「小学校とは違う」
ゴーディは進学組、クリスとテディとバーンは就職組に進学する予定です。クリスはゴーディに、君には頭の良い友達ができると言います。
ゴーディ「そんな組に入らない。友達は大切だ」
クリス「自分を落とすな。オレたちといると頭がくさっちまうぞ。君は良い小説家になれる」
クリスはゴーディに文章の才能があると誰よりも早く気付いているのです。そして彼は一緒にいることだけが友情ではないとわかっています。
ゴーディ「ものを書くなんて時間の無駄だ」
クリス「パパの言葉か。君の父さんは何もわかってない。…君は子どもだ」
ゴーディ「ありがとうパパ」
クリス「代わってやりたいよ。オレがパパなら就職組に行くとは言わせない。君は才能がある。でもそれを誰かが育てなければ才能も消えてしまう。君の親がやらないなら、オレが守ってやる」
クリスの言葉は優しくて賢いです。『スタンド・バイ・ミー』は大人たちが平気で子どもを傷つける言葉を放ちます。クリスは友達という立場で、誰よりも仲間を守ります。しかし、彼は小さな町で、逃れられない悪のレッテルを貼られています。クリスは旅の途中、ゴーディに秘密を打ち明け、そして彼は言います。
クリス「誰も僕を知らない土地に行きたい」
12歳の少年の悲痛な言葉に胸が詰まります。しかし、ゴーディは本当のクリスを知っています。テディもバーンも知っています。彼には傍にいてほしいとき、傍にいてくれる友達がいます。
遺体を発見したとき、少年たちは何を思うのか。少年が成長することの、美しさだけではない重みを感じます。
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『スタンド・バイ・ミー』は、12歳という若さで人生を諦めてしまった少年たちが、再び歩き出すかけがえのない一瞬をわたしに見せてくれます。それと同時に、自分はもう大人になってしまったことに気付かされる作品です。
ラストにベン・E・キング「スタンド・バイ・ミー」が流れるとき、少女だった頃のわたしと、大人になった今のわたしでは、圧倒的に意味合いが違っていました。大人になったからわかる感動と、そして寂しさ。
わたし(もうあの頃には戻れない)
しかし、この作品は教えてくれます。もう戻ることはできなくても、決してあの頃を失うことはないということも。
『スタンド・バイ・ミー』を見終わった後日のことです。家族で家に帰る途中、5歳の息子が言いました。
息子「ママって女の子?」
彼はいつも突然へんな質問をしてきます。
わたし「うーん。ママは女の子じゃなくて女の人だよ」
息子「女の人?」
わたし「ママはね。もう女の子っていう時間は終わっちゃったんだ」
すると、夫が言いました。
夫「いや、ママは女の子だよ」
わたし「もう36歳ですよ」
夫「ずっと女の子だよ。ずーっと女の子」
そう言ってくれたのは、ポケモンが大好きな少年でした。
おわりに・・・
今回取り上げることはありませんでしたが、酒寄さんが気になったコンテンツを酒寄さんならではの視点でご紹介します。
「ゆとりですがなにか」
こちらは大人になってからできた友達との友情です。「ゆとり世代」と呼ばれてきた3人の青年がひょんなことから出会い、仕事やプライベートに悩みながら成長していく物語なのですが、わたしもゆとり世代に入るのでとても気持ちがわかります! 1987年生まれの彼らも1988年生まれのわたしも自分たちはゆとり世代だと思っていなかったところまで共感!
ゆとり世代とは、1987年から2004年生まれの世代ですって! もっと下かと思っていました! ゆとり世代は周りから厄介者扱いされがちですが、本人たちも苦労しているし、悩んでいる。そして一生懸命頑張っている!
脚本は宮藤官九郎。笑えて心に刺さります!
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『ポリス・ストーリー 香港国際警察』
ジャッキー・チェンはずっと気になっている俳優でしたが、彼の出演している作品は『ラッシュアワー』と『ベスト・キッド(2010) 』を見たくらいでした。
今回視聴した『ポリス・ストーリー 香港国際警察』はジャッキー・チェン自ら監督・脚本・主演・武術指導を兼ねたアクション映画です(コメディ映画でもある?)。素晴らしかったです! アクションシーンがすご過ぎます! CG無しでここまで人の力でできるなんて! 香港警察が麻薬組織を追うというシンプルなストーリーの中でいっぱい笑ってハラハラして感動しました! 「映画って最高!」と改めて思わせてくれる映画です。誰かとこの映画について語りたいです。
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「ジョン・レノン&ポール・マッカートニー ソングブック 1957-1965」
ビートルズの曲は好きでよく聴くのですが、本当に聴く専門で、恥ずかしながらバンド自体はよく知りませんでした。なんとなくの気持ちで見始めたのですが、衝撃を受けました! ぼんやりと頭にあった「ジョンとポールは天才」というイメージが「ジョンとポールはとんでもない天才」であると頭にたたき込まれました。
ビートルズの歴史、ジョンとポールの関係性や名曲の裏側など、ビートルズファンは勿論、彼らの曲を一度でも聴いたことがある人はその世界に引き込まれると思います。天才を天才という言葉で片付けてはいけないと思いました。4部作の第1弾を見たので続きも絶対に見ます!
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▼合わせて読みたい! お笑い芸人の中山功太さんによる「#エンタメ視聴体験記 ~中山功太 meets WOWOW~」のコラムはこちら
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トップ画像(クレジット)/『スタンド・バイ・ミー』:ⓒ 1986 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.