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映画のはなし シネピック

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新しい映画と出会える。映画をより深く楽しめる。そんなコンテンツをお届けしていきます。担い手は、映画ライターSYOさんなど個性豊かな面々。それぞれの感性が作り出す映画愛は必見です!… もっと読む
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#ミニシアター

東京の街と映画館の記憶をたどる。映画とともに右往左往しながら、私は成長してきたんだろう。

文=中村佑子 @yukonakamura108  今、街の映画館はどんどん失われ、シネコンとなって同じような顔になり、それぞれの街で、それぞれの映画館が発していた表情はなくなっていくばかりだ。思い出して言葉にしてあげないと、大気中に消えてなくなってしまうような、映画館の風景。  私はここで、街と映画館の記憶を書いていきたいと思う。それも、1990年代の映画館の記憶だ。  私は1977年生まれ、23歳で2000年のミレニアムを迎えた世代。つまり13歳から23歳という、どんな

イラストレーター・信濃八太郎が行く 【単館映画館、あちらこちら】 〜「あまや座」(茨城・那珂市)〜

文・絵=信濃八太郎 閉店したスーパーマーケットの駐車場にある映画館  あなたが東京で暮らしているとして、どうして茨城県は水戸の先、1時間に1本しか列車(そう、電車ではなく、ディーゼルエンジンで動く気動車だ)がなく、Suicaも使えない無人駅、どう読むのかさえいまいちわからない「瓜連」まで映画を観に行く必要があるのだろう? ちなみに「うりづら」と読むこの駅を降りても誰も歩いていない。動くものといえば真っ青な夏の空を悠々と飛んでいくカラスくらいだ。太陽に照らされて、ひとりとぼ

イラストレーター・信濃八太郎が行く 【単館映画館、あちらこちら】 〜「長野相生座・ロキシー」(長野市)〜

文・絵=信濃八太郎 映画もカレーも“味わう場所”が大事  「映画なんてどこで観たって一緒」と友人に言われて驚いた。全然そんなことないのにと、どれだけ言葉を尽くしても、首を横に振るばかり。  たとえば、味はまったく同じカレーが出てくるとしても、近所の混雑したフードコートの一角で食べるのと、冬の旅先、外から気になったお店の扉をちょっと勇気を出して開けたら、大きなストーブの暖かさに心がほぐれ、窓の外を舞う雪でも眺めながらのんびり待っているところに出てくるのとじゃ、これは違うカ

イラストレーター・信濃八太郎が行く 【単館映画館、あちらこちら】 〜「ポレポレ東中野」(東京・東中野)〜

文・絵=信濃八太郎 “使いながら残していく”こと  「残せ残せといっても、ずっとそこにあってほしいというようなノスタルジーや、芸術的価値があるからという理由だけでその場所が残せるわけじゃない。残して、そしてそれを長く維持していくには当然莫大なお金がかかる。一度残すと決めたら放っておくわけにはいかない。どう残していくのか。子育てする親のような気持ちだね」  大学を卒業して勤めた自由学園明日館(東京都豊島区)で最初に吉岡努館長(当時)に言われた言葉を、こうやっていろんな映画

イラストレーター・信濃八太郎が行く 【単館映画館、あちらこちら】 〜「新潟・市民映画館 シネ・ウインド」(新潟市)〜

文・絵=信濃八太郎 「百年後の町のことを考えなせ」  館内の灯りが落とされた。さあ映画の世界に2時間身を任せるのみと、寒さでこわばった身体をゆるめてゆっくり目を開く。  2020年11月、新潟市の万代シテイという商業地区の一隅にある『新潟・市民映画館 シネ・ウインド』にやって来た。  明日の取材に備え、一日早く来て映画を観ておきたかった。信濃川にかかる萬代橋を渡り、川沿いを歩いているうちにすっかり冷えてしまった。東京から新幹線で2時間、川を渡る風にはもう冬の気配があった

イラストレーター・信濃八太郎が行く 【単館映画館、あちらこちら】 〜「フォーラム山形」(山形市)〜

文・絵=信濃八太郎 観たい映画を観るための「場所」作り  東日本大震災が起きてすぐ後、身の回りで、イラストレーションの力で世の中にどう貢献できるか、というような議論があった。社会の中で絵を描いて生きている以上、こういうときにこそみんなですべきことがあるのではないかと。  いろんなアイデアが挙がったものの、個人的には今の状況下で、そもそもイラストレーションが求められているのだろうかと思い悩んだ。自分では答えも出せず、飲みながら話せば「3.11以後を生きるアーティストが、自

斎藤工のどこまでも尽きない“映画愛”に直接触れて、原点に立ち返ることができた――映画ライターSYOによる「ミニシアターに愛をこめて」収録現場レポート

文=SYO @SyoCinema  映画を愛し、映画界を憂う斎藤工。俳優として、監督として、さらに移動式映画館「cinéma bird」やミニシアター応援プロジェクト「Mini Theater Park」の中心人物として、日夜身を粉にして活動し続ける彼と対談する機会をいただいた。工さんがホストを務めるWOWOWの特集企画「ミニシアターに愛をこめて」だ。  本特集は、工さんが全国のミニシアターにエールを送るもの。これまで永瀬正敏さん、井浦新さん、石田ゆり子さん、瀬々敬久監督

イラストレーター・信濃八太郎が行く 【単館映画館、あちらこちら】 〜「シネ・ピピア」(兵庫・宝塚)〜

名画や良作を上映し続けている全国の映画館を、WOWOWシネマ「W座からの招待状」でおなじみのイラストレーター、信濃八太郎が訪問。それぞれの町と各映画館の関係や歴史を紹介する、映画ファンなら絶対に見逃せないオリジナル番組「W座を訪ねて~信濃八太郎が行く~」。noteでは、番組では伝え切れなかった想いを文と絵で綴る信濃による書き下ろしエッセイをお届けします。今回は兵庫・宝塚の「シネ・ピピア」を訪れた時の思い出を綴ります。 文・絵=信濃八太郎 旅の途中、原田治先生に想いをはせる

イラストレーター・信濃八太郎が行く 【単館映画館、あちらこちら】 〜「川崎市アートセンター アルテリオ映像館」(神奈川)〜

文・絵=信濃八太郎 プロフェッショナルとは  プロってなんだろう。  自分はプロだと何かしら胸を張って言えることはあるだろうか。皆さんはありますか。ぼくが思うプロとは、ずばり、自分のフォームを持っている人のこと。  これは「自分の絵」ってなんだろうと、四六時中そんなことばかり考えていた、悩み多き若い日に読んだ、色川武大さんの名著『うらおもて人生録』で出会った言葉で、当時大いに得心したものだ。  この本には、小説家になる前にプロのばくち打ちを目指していた色川さんの、過去

イラストレーター・信濃八太郎が行く 【単館映画館、あちらこちら】 〜「高田世界館」(新潟・上越)〜

名画や良作を上映し続けている全国の映画館を、WOWOWシネマ「W座からの招待状」でおなじみのイラストレーター、信濃八太郎が訪問。それぞれの町と各映画館の関係や歴史を紹介する、映画ファンなら絶対に見逃せないオリジナル番組「W座を訪ねて~信濃八太郎が行く~」。noteでは、番組では伝え切れなかった想いを文と絵で綴る信濃による書き下ろしエッセイをお届けします。今回は新潟・上越の日本最古級の映画館「高田世界館」を訪れた時の思い出を綴ります。 文・絵=信濃八太郎  今月から、“WO

イラストレーター・信濃八太郎が行く 【単館映画館、あちらこちら】 〜「萩ツインシネマ」(山口・萩)〜

名画や良作を上映し続けている全国の映画館を、WOWOWシネマ「W座からの招待状」でおなじみのイラストレーター、信濃八太郎が訪問。それぞれの町と各映画館の関係や歴史を紹介する、映画ファンなら絶対に見逃せないオリジナル番組「W座を訪ねて~信濃八太郎が行く~」。noteでは、番組では伝え切れなかった想いを文と絵で綴る信濃による書き下ろしエッセイをお届けします。今回は山口・萩の「萩ツインシネマ」を訪れた時の思い出を綴ります。 文・絵=信濃八太郎 番組と安西先生がつないだ縁  とて

イラストレーター・信濃八太郎が行く 【単館映画館、あちらこちら】 〜「Shimane Cinema ONOZAWA」(島根・益田)〜

名画や良作を上映し続けている全国の映画館を、WOWOWシネマ「W座からの招待状」でおなじみのイラストレーター、信濃八太郎が訪問。それぞれの町と各映画館の関係や歴史を紹介する、映画ファンなら絶対に見逃せないオリジナル番組「W座を訪ねて~信濃八太郎が行く~」。noteでは、番組では伝え切れなかった想いを文と絵で綴る信濃による書き下ろしエッセイをお届けします。今回は島根・益田の「Shimane Cinema ONOZAWA」を訪れた時の思い出を綴ります。 文・絵=信濃八太郎 島

イラストレーター・信濃八太郎が行く 【単館映画館、あちらこちら】 〜「シネコヤ」(神奈川・藤沢)〜

名画や良作を上映し続けている全国の映画館を、WOWOWシネマ「W座からの招待状」でおなじみのイラストレーター、信濃八太郎が訪問。それぞれの町と各映画館の関係や歴史を紹介する、映画ファンなら絶対に見逃せないオリジナル番組「W座を訪ねて~信濃八太郎が行く~」。noteでは、番組では伝え切れなかった想いを文と絵で綴る信濃による書き下ろしエッセイをお届けします。今回は神奈川・藤沢の「シネコヤ」を訪れた時の思い出を綴ります。 文・絵=信濃八太郎 「映画と本とパンの店」  今日訪ねる

イラストレーター・信濃八太郎が行く 【単館映画館、あちらこちら】 〜「kino cinéma立川髙島屋S.C.館」(東京・立川)〜

名画や良作を上映し続けている全国の映画館を、WOWOWシネマ「W座からの招待状」でおなじみのイラストレーター、信濃八太郎が訪問。それぞれの町と各映画館の関係や歴史を紹介する、映画ファンなら絶対に見逃せないオリジナル番組「W座を訪ねて~信濃八太郎が行く~」。noteでは、番組では伝え切れなかった想いを文と絵で綴る信濃による書き下ろしエッセイをお届けします。今回は東京・立川の「kino cinéma立川髙島屋S.C.館」を訪れた時の思い出を綴ります。 文・絵=信濃八太郎 中央